「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(186) 地方観光を支える「観光タクシー」の新たな可能性 地域の魅力を発掘するPJ
2026年7月20日(月) 配信

「うちの地域には有名な観光地がないから、観光客は来ない」。地方へ行くと、そのような声を耳にすることがあります。しかし、本当にそうなのでしょうか。確かに全国的に知られた観光地があれば集客に有利です。
しかし、それは「あるに越したことはない」という話です。有名な観光地がないから人が来ないのではありません。多くの場合、その地域の魅力が知られていないだけなのです。人は知らない場所を旅の目的地には選びません。逆に言えば、魅力が伝われば、そこは十分に訪れる価値のある場所になるのです。その可能性を大きく広げるのが「観光タクシー」です。
私はこれまで観光タクシーに取り組む多くのタクシー会社のホームページを調査してきました。そのなかで気づいたことがあります。掲載内容の多くは、〇時間〇円という料金案内か、有名観光地を巡る定番コースのどちらかに偏っているということです。とくに全国的な知名度の高い観光地を持つ地域では「どこを巡るか」が商品になっています。
一方で、強力な観光資源がないと考えられている地域では、「何時間利用できるか」というサービス説明に終始しているケースが少なくありません。しかし、そこに大きな可能性が隠されています。
本当に魅力がないのでしょうか。もしかすると、地元の人たちが見慣れすぎて価値に気づいていないだけかもしれません。例えば、米どころの地域であれば、秋になると見渡す限り黄金色に輝く稲穂の風景が広がります。地元の人にとっては当たり前の景色です。しかし都会から訪れた人にとっては、その風景だけで感動することがあります。
雪国では、冬になると人の背丈を超える雪の壁に囲まれた歩道が現れます。大根が一面に干される畑の風景。海辺の小さな漁港。昔ながらの商店街。地域独自のマンホールのデザイン。地元の人が何気なく通り過ぎている景色の中に、訪れた人が思わず足を止め、写真を撮りたくなる魅力が眠っているのです。
問題は、その価値に誰も気づいていないことです。そして、気づいていても商品化されていないことです。さらに言えば、外に向けて発信されていないことです。
そこで大きな役割を果たすのが観光タクシーです。観光タクシーの本質は、地域の魅力を発見し、伝え、体験してもらうための仕組みです。その価値を語り、伝え、体験として届けることです。
観光タクシーには、その役割を担う大きな可能性があります。地域の風景を観光資源に変え、人と人をつなぎ、地域の未来をつくる。観光タクシーとは、まさに「地域の魅力を発掘するプロジェクト」なのです。

