「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(180) リピーターを離さない「おもてなし」 迎える想いと手間を掛ける
2026年1月18日(日) 配信

東京の青山にあるレストランカシータをご存知の方も多いと思います。講演やおもてなし研修をご依頼いただくたびに「おもてなしの殿堂」としてカシータの素晴らしい感動事例を話しています。私の著書でもその多くの事例を書いています。
初めて伺ってから20年以上になります。いつ行っても心が震えるような感動のあるレストランです。私にとってもモチベーションを上げるためになくてはならない愛すべきお店です。
コロナになり東京出張が減ったことも一つの要因ですが、しばらく伺うことができていませんでした。そんなあるときに、オーナーから突然連絡が入りました。「ゆっくりと話がしたい。東京に来るときにお越しになってください」と。
とても嬉しく思いました。直ぐに予定を確認して「この日であれば」という日を伝えて本当に久しぶりに伺うことになりました。コロナ禍にスタッフが減ったことや、新しいスタッフになっているということも行かれた方から聞いていました。
果たしてあの「感動サービス」は今も実行されているのだろうか? 私が何度も涙を流したあの感動のレストランは今もあるのだろうか? 正直、そんな想いを持っていたことも事実です。
人はもう「おもてなし」など望んでいない。期待もしていない。そんな声を聞くことが最近多くなり悔しくて悲しい気持ちにもなっていました。サービス業が効率化を求めることを否定するつもりはありません。しかし「人」が提供するサービスの価値こそがサービス業の本質であると考えます。そんな想いを胸に久しぶりのカシータに向かいました。
反対車線でタクシーを降車して徒歩で向かったのです。ちょっぴりの不安を胸に。
ビルが見えて来たときに、その想いは一気に吹き飛んでしまいました。ビルの下では見覚えのある人が両手を振りながら笑顔を向けてくれていたのです。リピーターにとっては、教えられて作られた笑顔以上に、知っている人の笑顔が数倍嬉しいものです。一緒に歩きながらエレベーターへ。そして到着し扉が開いたときに「お帰りなさい!」と、逢いたかったオーナーが笑顔で待っていてくれたのです。
この言葉自体は、今では多くの施設でも聞くようになりましたが、それらとはまったく違う嬉しさを感じたポイントは、私の到着を聞いて、普段そこにいるはずのないオーナーが、わざわざエレベーター前で待っていて下さったところにあります。リピーターを「迎える想い」と「手間」を掛けるおもてなしです。リピーターにとっては、この些細な行動が離れられない気持ちを高めて、また来たくなるのです。
コラムニスト紹介

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。





