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「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(156)カスハラ対策には「はじめの瞬間」 名前を呼び意識させる

2024年1月8日(月) 配信

 

 観光業界の企業や観光協会などから、多くの講演依頼を受けています。先日は公共施設の接客研修を依頼されました。事務局から連絡をいただき、事前ヒアリングの時間で、お話を伺いました。

 お話のなかで、来館者は「お客様」ではなく、「市民」や「利用者」です。リピート利用は大切ですが、民間事業と違い、利益を上げるのが目的ではありません。「それを踏まえて、話をしてもらいたい」ということでした。

 ただ、市民が利用者でも不快な想いはさせられない。そのなかには、理不尽な言葉を発する人もいて、現場スタッフは常に緊張しながら、日々の業務に向き合っている、ということでした。「おもてなし」が助長すると言う「カスハラ」という言葉を、耳にすることが多くなりました。コロナ禍で人との接触が減り、SNS上にも心ない言葉があふれています。

 施設側に問題がなくても、来館する前から何らかの不満を持っていて、突然怒りをぶつける人がいるようです。「それでも、私たちは日々多くの利用者を迎えなくてはなりません」と担当者は話します。

 そこで、「はじめの瞬間を大切にしましょう。ボタンの掛け違いで、その後の対応が難しくなります。出逢いの瞬間を元気に明るく、利用者を迎えることが大切」と伝えました。

 私の友人にとてもドライで、おもてなしにあまり関心のない人がいます。無駄な話が苦手で、興味のないことには口数も少ない。その友人と同じ店に2度目の訪問をした時のことです。店主から突然に友人の名前を呼ばれて、驚いていました。

 友人はその後、店主に積極的に話し掛けていました。名前を呼ばれて親近感を持ったのだと思います。その姿を見た時に、改めて「名前を呼ぶ」大切さを知りました。研修会では、「よく利用する名前の分かる人は、積極的に名前で呼んでお迎えましょう」と話すと、参加者の多くが大きく頷きました。

 しかし、頭では分かっていても、実際にやらなければ、できないこともたくさんあります。ロープレで、「どなたかチャレンジしませんか」と呼び掛けると、参加者の1人が元気に手を上げて前に出て来て、「よろしくお願いします。西川さん」とあいさつされました。

 こうした迎え方ができれば、機嫌の悪い人であっても、それを私たちにぶつけて来るような人を少なくできると考えます。

 目の前のお客様に、一生懸命に仕事をすることは尊く大切なことです。しかし、感情に任せて苦情をいう人が増えているなかで、大切なお客様にカスハラをさせない接客を目指すことも、私たちの仕事を守るためには大切なのです。

 

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。

 

 

 

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「「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(156)カスハラ対策には「はじめの瞬間」 名前を呼び意識させる」への1件のフィードバック

  1.  「はじめの瞬間を大切にしましょう。ボタンの掛け違いで、その後の対応が難しくなります。出逢いの瞬間を元気に明るく、利用者を迎えることが大切」とありますが、初対面の10数秒でこの問題を解決するのは難しいと感じます。さらに来場者の名前を呼ぶことも自治体の今までの対応からかけ離れすぎていて、ただ違和感を覚えるだけとなりましょう。

     まず自治体とは何でしょう。そもそも自治体は最初からあったわけではなく、最初期は作物の栽培や道路建設は勿論のこと、防犯や侵入者の排除などすべてが全員で対処してきました。それが時代を経るにつれ自然と組織ができますが、組織が大きく作業内容が複雑になってきたため、専用の組織ができたものでしょう。つまり基本中の基本は現自治体の職員と我々庶民とはもともと一体なのです。それが先に言った理由でそれぞれ別になったのです。つまりの一般人が自分の仕事と両立ができないので、税金という薄く広くお金を集めて専用の組織を作り、その方たちにお願いしているのです。結局言えるのは最初はカウンターの向こうの人とこちら側の人とは同じ側だったのです。(変にへりくだる必要はありません。この考え方は非常に大事です)

     わたしの具体的な方法はこうです。 
      ①職員さんには「カウンターの向こうとこちら側では同じ立場にある」ということを共通認識にしていただく、ということです。一見「なーんだ」と思われるでしょうが、これは今回の土台となるもので、とても大切です。
      ②そのうえで次に進めるのが施設の掲示板にでも「利用者の声を聴く」ということを今まで以上のことばで訴えることです。聞いたうえで対策を施し、その結果なども後日公表します。この時はいい意見も耳に痛い意見もすべて公開します。(自治体は隠したがるという一般通念があります)
      ③職員にはこのキャペーンのカードを胸につけてもらいます。来館者もこれを見て、更に無理難題を言ってくるでしょうか。
    とにかく自治体および施設側の本気度を見せるのです。

    いまでも町内会という組織があります。そこでは住民が班長さんなどに日常的に苦情を言うということはあまりないと思います。どちらかというと協力姿勢があります。私たちは助け合わなければ生きていけません。この基本中の基本をお互いが持つようになれば様々な問題も少なくなっていくのではないでしょうか。

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