【特集 No.674】日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー2025 歴史や文化と人を結びつける活動へ
2025年12月1日(月) 配信

旅行新聞新社(石井貞德社長)は12月1日、取材活動などを通じて見聞きした今年の観光業界の取り組みの中から、創意工夫の見られるものを独自に選び、表彰する「日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー2025」を選出した。同賞は2021年に創設し、今年が5回目。グランプリは、旅館を核とした革新的な創造事業を展開する「和多屋別荘」(佐賀県)を選んだ。優秀賞には「金太郎温泉」(富山県)と、「山陰花めぐり協議会」(鳥取県、島根県)を選出した。各賞の地域の拠点として歴史や文化、自然などと人を結びつける新たな試みや挑戦を紹介する。
□グランプリ 和多屋別荘
旅館を核とした「次代の嬉野創造」事業

日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー2025のグランプリに輝いた「和多屋別荘」(小原嘉元社長、佐賀県嬉野市)は、旅館を核とした「次代の嬉野創造」事業に注力している。
“嬉野”が有する独自の文化や経済的な価値を、和多屋別荘社長の小原嘉元氏は「三層構造」に分解。そのうえで旅館が「新たな魅力創出の拠点」として、3つの層を創造的に再融合することによって、ティーツーリズムなど画期的な事業を生み出している。
三層の基礎となる「第一層」では、1300年前から湧出する「嬉野温泉」、500年前から栽培が始まった「うれしの茶」、400年の歴史をもつ「肥前吉田焼」――が独自の共存関係を築き、普遍的な価値を形成する。
その上の「第二層」に、圧倒的優位性がある和多屋別荘の2万坪の豊かな土地、最上層の「第三層」は、これらを活用した事業や商品開発と捉える。
地域に根付いている歴史的伝統文化を背景に、旅館業と不動産業を掛け合わせた、「ホスピタリティ事業×リーシング事業」では、既にさまざまな革新的な事業が創出され、注目を集めている。
コロナ禍の2020年3月には、日本で初めて温泉旅館内に会社を設立。和多屋別荘内にサテライトオフィスを設置し、イノベーションパートナーズ(東京都)をはじめ、24年12月時点でIT企業など6社が入居している。
また、「社員は温泉入りたい放題」などサテライトオフィスの取り組みが話題となり多くの視察を受けるなかで、スタートアップ支援の必要性が高まり、22年3月には温泉旅館内にインキュベーション施設を開設した。佐賀県や県外、アジアにおける次世代イノベーションの拠点を目指している。

25年4月には温泉旅館内に日本語学校「ICA国際会話学院 嬉野校」を開学した。高度人材に向けた外国人日本語学校として24年に文部科学省から認可されている。……






