2025年11月20日(木)配信
観光庁の村田茂樹長官は11月18日に会見を開いた
観光庁の村田茂樹長官は11月18日(火)に開いた定例会見で、中国政府が日本への渡航自粛を呼び掛けたことを受けて、観光庁として「引き続き、動向を注視していくことに尽きる」と述べた。また、政府が11月14日に取りまとめた「クマ被害対策パッケージ」では、観光庁はインバウンドを含めた登山者などへの多言語による情報発信を盛り込んだ。今後も関係省庁と連携して必要な対策を講じ、「観光客の安全確保に向けた地域の取り組みを支援していく」と強調した。
中国からのインバウンド(訪日外国人旅行)の影響について、村田長官は「現在、外交ルートでさまざまなやりとりが行われている。どのような影響を与えるか、現時点では予断を持って述べることは差し控えたい」と慎重な姿勢を示した。また、既に国内のホテルや航空便などで影響が出ているという一部報道について、観光関係者への聞き取りなどを含めて状況把握に努めると伝えた。
一方で、中国の大型連休である10月の国慶節期間では、中国の訪日旅行者数が大幅に増加していると報告した。10月の訪日外客数のうち、中国は前年同月比22.8%増の71万5700人と好調な状況が続いている。
日本政府観光局(JNTO)が中国現地の旅行会社に聞き取りを行ったところ、ゴールデンルートを中心とした旅行商品に加え、地方向け旅行商品の需要が拡大。ものづくりや文化体験など、親子で楽しめるコンテンツのほか、少人数グループやオーダーメイド型旅行が好調の傾向と話した。
観光庁は中国人旅行者の動向を注視しつつ、見極めたうえで「訪日プロモーション活動をはじめ、必要な取り組みは進めていきたい」として、引き続き従来のプロモーション方針を継続していく考えを示した。
□クマ被害の注意喚起、多言語で情報を発信
全国各地で相次ぐクマによる人身被害の影響については、訪日客を含む観光客や観光従事者の安全確保対策のほか、旅行控えや観光地への風評被害も懸念されている。このようなことを踏まえ、政府は11月14日(金)に取りまとめた「クマ被害対策パッケージ」において、関係省庁と連携しながら観光客の安全確保対策を講じることが盛り込まれた。
観光庁は被害を防止する一環として、「正確な情報発信が極めて重要である」との認識を示したうえで、関係省庁や自治体などと連携。これまでも訪日客を含む観光客に対して、クマへの注意喚起や出没状況など、多言語による情報発信に着手していると説明した。
今後も関係省庁と連携して必要な対策を講じ、「風評被害による訪日旅行の影響や、地域における宿泊者数の動向などにも注視しつつ、観光客などの安全確保に向けた地域の取り組みを支援していく」と強調した。
□国際観光旅客税の拡充、施策の財源確保努める
11月4日(火)に開かれた第1回外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議では、高市早苗首相から金子恭之国交相に対し、国際観光旅客税(出国税)の拡充をはじめ、観光課題の解決に向けた具体的な対応策の検討を進めるように指示された。そのうえで、同月13日(木)に開かれた自民党の観光立国調査会では、1人当たり1000円の出国税を3000円に引き上げる決議をとりまとめた。
受け止めを問われた村田長官は「今後、税制改正プロセスにおいて議論されるものと承知している。総理からの指示などを踏まえ、施策の実施に必要な財源の確保ができるように努めたい」と答えた。出国税は日本人旅客に配慮し、円滑な出入国の環境整備などにも充てられている。拡充された場合の使途について、「これから予算編成の過程において、政府内で十分議論を行っていくことに尽きる」と話した。
□10月の訪日外客数、過去最高の390万人
10月の訪日外客数は前年同月比17.6%増の389万6300人で、10月として過去最高を記録した。村田長官は「インバウンドの約7割を占めるアジア諸国が同16%増のほか、欧米豪や中東諸国が同21%増だった」と報告。堅調な訪日需要と航空便の増加により、好調な状況が続くインバウンドは「力強い成長軌道に乗っていくものと受け止めている。引き続き、戦略的な訪日プロモーションと地方誘客を積極的に進めていきたい」と話した。
□訪日客の消費動向、7~9月期過去最高
1次速報によると、25年7~9月期の日本人国内旅行消費額は前年同期比9.0%増の8兆536億円で、四半期として過去最高を記録した。日本人の国内旅行消費による波及効果について「消費額の約2倍とされ、同期間の経済効果は約16兆円」と推測した。
日本人国内旅行消費額のうち、宿泊旅行が同11.0%増の6兆7303億円、日帰り旅行が同0.1%増の1兆3234億円となった。
日本人国内延べ旅行者数は同4.6%増の約1億6136万人。このうち宿泊旅行が同5.4%増の9036万人、日帰り旅行が同3.7%増の7100万人だった。
日本人国内旅行1人1回当たりの旅行単価は同4.2%増の4万9912円。宿泊の有無でみると宿泊旅行は同5.3%増の7万4485円、日帰り旅行が同3.4%減の1万8639円となった。