2025年7月15日(火) 配信
瀧康洋氏
日本温泉協会(多田計介会長)は6月24日(火)に登別グランドホテル(北海道・登別温泉)で2025年度会員総会を開いた。併せて実施した温泉文化シンポジウムでは、岐阜県・下呂温泉観光協会会長の瀧康洋氏(水明館社長)が登壇し、「下呂温泉観光協会の現状」について発表。日本を代表する先駆的DMO(観光地域づくり法人)のトップとして、地域一体性やマネジメントの役割の重要性を語った。
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下呂市の人口は約3万人。旅館組合加盟旅館の客室数は約1350室。24年の宿泊数は前年比4・0%増と伸び、100万人の大台に乗った。瀧氏が100万人にこだわるのは、「100万人から入湯税を徴収している実績。(DMOとして)行政に対してしっかりと答え(結果)を出す」という考えからだ。
宿泊者の内訳をみると、国内個人客やインバウンド客が大幅に増加している一方で、国内団体客が同26・9%減の7万3970人と落ち込んでいる。
昨今、「泊食分離」や人手不足の理由から、「素泊まり」や「一泊朝食」プランなどで宿泊客を温泉街へと促す旅館も増えている。瀧氏は「これをやり過ぎると、問題が発生する」と警鐘を鳴らす。
「一見、経営が安定するように見えるが、『観光立国』を目指すなかで、我われ旅館が成長する方向に持って行かなければならない」と持論を展開する。
他方、温泉街の飲食店もオーバーツーリズムの状態も散見される。「個人客に振れ過ぎるのは良くない。今年度は団体客を取りに行く」姿勢を示した。
瀧氏は「団体、個人、インバウンドのバランスが大事。DMOの役割は、誘客とマネジメント」と語る。「地域には、旅館を訪れる団体客で生活をしている人たちも多い。地域の事業者を守ることにもなる」。
地域別では、地元・中部エリアが若干減り、首都圏など遠方からの集客に成功している。インバウンド客も増えてきているが、日本人の宿泊客が減っていない。「これはDMOが機能しているから」(瀧氏)と分析する。
「インバウンドは偏らず、できるだけ多くの国・地域から少しずつ来てほしい」という方針で、現状は欧米からの旅行者も増え、24年度のシェアは最も多い香港でも23%と、徐々に平準化に向かっている。
下呂温泉の特徴である「エコツアー・体験商品」の消費額も24年度は約5200万円と順調に伸びている。
瀧氏は、「観光は地域が一体とならなければ成功しない。マーケットは変わり続けるので、一度決めたことでも、その都度変えていかなければならない」と自身の経験を踏まえ言葉にした。地域活性化には、「官と民が力を合わせ、役割をいかに明確にしていくかが大事。道半ばだが、さらなる飛躍を目指していきたい」と力を込めた。