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〈旅行新聞11月1日号コラム〉――愛すべき「振動」と「呼吸」 煙突のある家は外界とつながり生きている

2026年11月1日
編集部:増田 剛

2026年11月1日(日) 配信

 家から少し離れた公園に小さな森があり、くすんだ赤や黄色の枯葉が黒い土を覆う。晴れた昼には木漏れ日が差し込み、長袖のシャツを心地よく温める。深まる秋の森で深呼吸する。

 ウチに来て6年ほどになるヒガシヘルマンリクガメのかめ吉は、室内飼育が中心。今夏の長雨の影響も相俟って、日光浴が十分にできず、エキゾチックアニマル専門病院の先生によると、「カルシウム不足」という診断で元気がなかった。

 そこで最近は、ベランダで日光浴を存分にさせ、休日になると、この森林公園にリクガメを連れて行き、落葉で埋もれる森の中を数時間歩かせている。やはり自然の中が好きなようで、枯葉を両腕で勇ましくかき分け、元気に歩を進める。リクガメの散歩は余ほど珍しいのだろう。犬の散歩をしている人にしばしば声を掛けられる。

 リクガメは目的がはっきりしていれば想像以上に速く歩く。誰にも見つかりたくないときには、足音を消して歩くこともできる。亀にも人間と同じように鼻の左右に小さな2つの穴が開いている。顔を近づけると、小さな鼻の穴から呼吸のたびに空気が勢いよく出てくる。頬や耳に当てるとくすぐったい。甲冑のような固い甲羅に包まれた亀の呼吸が面白く、小さくても「ちゃんと生きている」と感じられる。

 ペットを飼っていると癒されるが、旅行が難しくなる。3~4日の旅行では、水と餌を十分に置いてエアコンを適温に設定しておけば、帰宅後にゆっくりとお湯に浸けて体をきれいに洗って、美味しい餌をどっさりあげると大丈夫なのだが、今度予定しているドライブ旅行では、一匹だけ家に残しても行けず、彼を連れて行かなければならないだろうと思う。そのためのバッグも買った。亀との旅行も、大事な思い出になるのかもしれない。

 10月初旬、オートバイのエンジンのかかりが悪くなった。バッテリー不足の警告灯がインジケーターに点灯されていたが、「まだ行けるのではないか」と見ないふりをしていた。休憩してエンジンをかけようとしたら、ダメだった。保険で一度だけJAFを無料で呼ぶことができるので、お願いした。手書きの整備ノートによると、前回の交換から3年半が過ぎていた。

 JAFの到着を待つ間、オートバイを停めていた場所は、神社の駐車場だった。早めに七五三の参拝をする晴れやかな家族連れの姿を多く見掛けた。これも日本の秋の風物詩なのだと季節の移ろいを感じた。

 JAFのスタッフはとても感じの良い人で、ジャンピングスタートでエンジンがかかった。車体が振動し、2本のマフラーから微かな煙が出て、オートバイの止まった呼吸が再開した。

 電気自動車が普及しているが、私はエンジンが好きだ。内燃機関で駆動する車やオートバイは、オイルが燃焼してマフラーから煙が吐き出される。鉄で作られた機械の「振動」と「呼吸」が、まるでよく懐いた生き物のようで、愛着が湧いてくる。

 旅先で、煙突のある家にふと目が留まる。日々の生活の中で家も外界とのつながりを閉ざさず、呼吸をして生きている。いつか煙突のある家で薪をくべるような生活してみたいと思うこともある。そのような動画を、都会の外界から閉ざされた一室で酒に酔いながらぼんやり眺めている。

(編集長・増田 剛)

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