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「観光革命」地球規模の構造的変化(293) 大阪IRの今後の行方

2026年4月12日(日) 配信

 私は昨年80歳に達したので、北海道・札幌での公職を辞して、古巣の関西に戻った。20年ぶりの大阪はさまざまな意味で以前とは異なっていて、違和感を感じている。

 大阪は昨年「大阪・関西万博」を開催し、公式的には大成功を収めたと言われ、現在は次の起爆剤として、日本初のカジノを含む統合型リゾート(IR)建設に突き進んでいる。

 安倍政権の下で観光立国のエンジンとしてIR構想が重視され、2018年に国会でIR整備法(特定複合観光施設区域整備法)が成立。都道府県または政令指定都市が民間事業者と共同で作成した区域整備計画を国土交通大臣が認定する仕組みで、最大3カ所まで認定が可能。当初横浜、大阪、長崎、和歌山が名乗りを上げたが、現時点では大阪・夢洲地区(大阪IR)のみが認定されている。

 大阪IRは米国MGMリゾーツインターナショナルとオリックスが中核の「大阪IR(MGM大阪)」が事業主体で、大阪・関西万博会場だった人工島・夢洲の北側敷地(約49㌶)に整備される。カジノ、MICE施設(国際会議場、展示場)、劇場、体験スタジオ、3つのホテルなどが配置される。既に25年4月に起工式が行われ、30年秋に開業予定。

 大阪IRの初期投資額は約1兆5千億円、年間来場者数は2千万人(うち国外客3割)、年間売上高約5200億円、近畿圏への経済波及効果は年1兆1400億円を見込む。大阪政財界はIRを景気浮揚の起爆剤とみなし、大阪府・市はカジノ関連で年に約1千億円の税収増を見込み、夢洲を国際観光拠点として発展させる想定だ。

 事業主体は1500人の雇用を想定しているが、観光業界の人手不足は深刻なので雇用確保が危惧されている。また日中関係の悪化による国際観光の不安定化も悩ましい問題。さらにIR売上高の約8割(4200億円)をカジノで稼ぐ想定であり、ギャンブル依存症の増加や治安の悪化、青少年への悪影響、社会不安の増加などが危惧されている。22年に3人の大学教授が共著「カジノ・万博で大阪が壊れる:維新による経済・生活大破壊」(あけび書房)を出版しており、一読に値する。

 政府は残る2つのIR区域について申請募集中(27年11月まで)で、複数の自治体(北海道、愛知県など)が検討を行っている。

 

石森秀三氏

北海道博物館前館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館前館長。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

 

 

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