訪日客3000万人突破、「力強い成長軌道を継続」(村田観光庁長官)
2025年10月17日(金)配信

観光庁の村田茂樹長官は10月15日(水)に開いた定例会見で、2025年1~9月累計の訪日外客数が前年同期比17.7%増の3165万500人となり、過去最速で3000万人を突破したと報告した。堅調な訪日需要と航空便の回復により、好調な状況が続くインバウンドは「力強い成長軌道に乗っている。引き続き、戦略的な訪日プロモーションと地方誘客を積極的に進めていく」と話した。
□オーバーツーリズム、国民生活の両立徹底
一方、観光客が集中する一部地域や時間帯などは、過度の混雑やマナー違反による地域住民への生活の影響や、旅行者の満足度の低下への懸念も生じていると指摘した。
観光庁としては「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージに基づき、地域の実情に応じた取り組みを国として総合的に支援している」と説明。インバウンドの受け入れは、「国民生活と両立するための施策を徹底していくことが大前提」と強調した。そのうえで、「観光の持続可能性を高める取り組みを進めていく必要がある」と語った。
オーバーツーリズム問題は、25年度末までの策定を目指している「第5次観光立国推進基本計画」の議論でも大きな論点の一つになっていると明かした。観光庁として「地方誘客の促進やオーバーツーリズム対策をはじめとした施策の強化や、そのために必要な予算の確保なども含めて今後も強化して取り組んでいきたい」と述べた。
10月9日(木)には、自民党が新設した地方誘客・オーバーツーリズム対策プロジェクトチームの初会合が行われ、観光庁が地方誘客の促進とオーバーツーリズム対策についてヒアリングを行ったと報告した。
□9月の訪日外客数、過去最高の327万人
9月の訪日外客数は前年同月比13.7%増の326万6800人で、9月として過去最高を記録した。インバウンドの約7割を占めるアジア諸国のほか、欧米豪や中東諸国の増加が押し上げ要因となった。一方、香港が同12.2%減となり、台風による航空便の欠航が相次いだことが主な要因と分析している。
現状のペースで推移すると、年間の訪日外客数が過去最高を記録した24年の3687万人は超え、4000万人台の達成が見込まれる。村田長官は「10月以降の紅葉シーズンやクリスマス、年末年始にあわせた旅行需要の高まりに期待したい」と述べた。
□ツーリズムEXPO、大阪・関西万博が閉幕
9月下旬に愛知県で初めて開催された「ツーリズムEXPOジャパン2025愛知・中部北陸」についても触れた。来場者数が当初目標を超え、計4日間で約13万人を記録したと話し、「愛知や中部北陸の事業者と自治体が一丸となり、今回のEXPOの出展者募集や集客プロモーションに尽力した結果である」との認識を示した。
会場を訪れた村田長官は、国内外のブースが多くの人で賑わっていたと話し、「EXPOに期待を寄せていることを肌で実感した。インバウンドとアウトバウンドの双方向の交流拡大や、地方誘客のきっかけにつながる機会となった」と振り返った。「次回の東京開催にも大いに期待していきたい」と語った。
10月13日をもって閉幕した「大阪・関西万博」についても触れ、4~6月の調査結果によると、大阪府を主目的地とした国内旅行の延べ旅行者数が前年同期比で約8割増。大阪府内のホテル稼働率も上昇傾向にあり、訪日客に関しては、とくに欧州圏の宿泊客が増加したという。
業界団体からの聞き取りによると、今年4~9月の旅行会社の関西方面の旅行商品取扱額も、他の方面と比べて10~15%程度の高い伸び率だったと紹介。このような状況を総合的に踏まえ、「万博を契機として大阪方面を中心とした日本人の国内旅行の増加、訪日旅行者の関西以外への誘客に一定の効果を生んだ」との認識を示した。
2027年3月から、神奈川県横浜市で国際園芸博覧会「GREEN×EXPO2027」が開幕し、万博と同様に国内外から多くの来場者が期待される。村田長官は「2つの博覧会が間を空けずに日本で開催される機会を生かし、さらなる日本への誘客と、海外からの魅力発信を通じたアウトバウンドの双方向で国際交流を促進していきたい」と語った。
□訪日客の消費動向、7~9月期過去最高
1次速報によると、25年7~9月期の訪日外国人旅行消費額は前年同期比11.1%増の2兆1310億円で、7~9月期として過去最高を推計した。訪日外国人1人当たりの旅行支出は約21万9000円と、前年同期とほぼ同額。観光・レジャー目的で絞ると、1人当たりの旅行支出は同4.5%減の約21万6000円。
このほど、観光・小売業界の17団体が、訪日外国人旅行者の消費税免税制度維持を求める共同提言書を中野洋昌国土交通大臣らに提出した。同免税制度について、村田長官は「買物消費を下支えする重要な制度と認識している。観光庁としては引き続き免税制度も生かしながら、地方部でのインバウンド消費の一層の拡大に取り組むとともに、来年11月に改定されるリファンド方式の着実な実施に向けて取り組んでいきたい」考えを示した。


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