高付加価値旅行が好調、訪日受入に支援継続の意向(秡川観光庁長官)
2025年6月20日(金)配信

観光庁の秡川直也長官は6月18日(水)に開いた会見で、2023年の訪日高付加価値旅行市場が消費額・旅行者数ともに大幅に増加した調査結果に触れ、宿泊施設を核とした面的な取り組みを支援した成果とし、今後も継続する意向を示した。一方、海外旅行の需要喚起に向けて、現在策定を進める新たな観光立国推進基本計画に、日本旅行業協会(JATA)からの提案も盛り込む方針を述べた。
日本政府観光局(JNTO)が同月11日(水)に発表した23年の訪日高付加価値旅行市場の調査結果によると、23年の訪日高付加価値旅行者の消費額が約1兆円に達し、19年比で50.6%増と大幅に増加した。旅行者数も59万人の19年比で83.2%増と著しい伸びをみせた。
観光庁では、インバウンド(訪日外国人旅行)における消費単価が高い傾向にある高付加価値旅行者の地方誘客を促進するため、総合的な施策を集中的に講じるモデル観光地として、14地域を選定している。秡川長官は「モデル観光地に旅行会社を招き、魅力的なコンテンツづくりや販路づくり、プロモーション、体験コンテンツ造成など、宿泊施設を核とした面的な取り組みを支援している。そうした取り組みの成果が表れている」と述べ、今後も取り組みを継続する意向を示した。
高付加価値なインバウンド観光地づくりの推進は、6月13日(金)に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太の方針)にも明記されている。骨太の方針について、秡川長官は「地方誘客の促進、持続可能な観光地づくり、国内交流の拡大など、観光庁が3つの柱を掲げて取り組んでいる具体的なものが記載されている。新たな観光立国推進基本計画の策定も盛り込まれており、具体的な施策も含めてしっかり進めていきたい」と話した。
海外旅行の動向について、JATAと今年3月に発出された「もっと! 海外へ宣言」や、このプロモーション施策にアーティスト・俳優の岩田剛典さんの起用を紹介。海外旅行の需要喚起に向けた取り組みとして、夏休み時期の需要回復に期待を寄せた。また、現在策定に向けて議論している新たな観光立国推進基本計画には、JATAからの提案も盛り込む方針だ。
そのほか、訪日クルーズ船について聞かれ、24年の訪日クルーズ旅客数が前年比約4倍の143万8000人と大幅に伸び、コロナ前ピーク水準(17年)の約60%まで回復していると答えた。観光庁ではJNTOを通じて、世界最大級のクルーズ見本市への出展や、クルーズ販売旅行会社を対象とするセミナーなどを実施している。秡川長官は「拡大の余地がまだある。引き続き取り組んでいきたい」と力を込めた。
なお、昨年7月に観光庁長官に就任してからの1年間の振り返りを問われ、観光について「これだけ好調な状態が続いている年はない」と語った。03年にビジット・ジャパン事業が開始して20年以上が経ち、継続的な取り組みの成果が出ていると示した一方で、3大都市圏に集中するインバウンドの地方誘客や、宿泊産業を中心に人材不足などを継続して解決していきたい考えを示した。