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〈旬刊旅行新聞11月1・11日合併号コラム〉日本のクルーズトレイン―― 「ななつ星in九州」も歴史を刻み続ける

2022年11月10日
編集部:増田 剛

2022年11月10日(木) 配信

 今年は新橋―横浜間鉄道開業150周年に当たることから、旅行新聞紙上でも鉄道に関わるさまざまな方々に寄稿していただいたり、10月15日の記念イベントに参加したりした。

 

 鉄道の思い出も多い。田舎育ちのため、最寄りの小さな駅に行っても電車はすぐに現れず、1時間近く駅舎で待つことも珍しくなかった。遥か遠くに1点の光が見え、それから数分間をかけてライトが少しずつ近づいてくる。電車を利用する日は特別感があり、その分憧れも大きかった。

 

 幼いころから電車は「駅のプラットフォームで待ち続けるもの」という認識がしみ込んでいたために、上京して電車が次から次にホームに入ってくる状況に驚いた。しかし、次第に「日々の足代わりに利用する」環境にも慣れていき、都会暮らしが長くなってしまった今では電車を待つことは、地方に旅行したときに体験するくらいになってしまった。

 

 

 鉄道の旅での食事は格別である。駅弁を買って好きなお酒を飲みながら、ゆっくりと流れる車窓の風景を眺める旅は理想的だ。私が上京したころは、新幹線に食堂車があった。学生だったため、お金もあまりなく九州の実家に帰省するときなどは、食堂車でカレーライスを食べることが楽しみだった。特急電車の食堂車で食事をするという行為が、とても大人な気分にさせてくれた。

 

 狭い食堂車内は、最大限空間を上手く使っている。給仕が幾分不安定なテーブルにスプーンを置き、やがて料理が運ばれてくる。揺れる車内で、グラスに入った水も揺れる。鉄道の食堂車という限られた条件の中で、可能な限り精一杯の料理を提供してくださる心配りが、通常よりも美味しく感じさせる要因なのだろう。

 

 

 鉄道開業150年という長い歴史のなかで、1964年に目的地までの移動時間を極限まで短縮させた新幹線の誕生は、世界的にも画期的な出来事であった。さらに、観光目的に特化させた周遊型豪華寝台列車「クルーズトレイン」の登場も、日本の鉄道史を語るうえで重要な転換点だと思う。

 

 2013年10月15日にJR九州が運行する「ななつ星in九州」の登場は大きな衝撃を与え、一躍脚光を浴びた。その後、17年にJR東日本の「TRAIN SUITE四季島」、JR西日本の「TWILIGHT EXPRESS瑞風」も営業をスタートした。

 

 いずれの車体も豪華で高級感があり、見惚れるほどである。日本国内を数日間かけて列車の旅を楽しめる環境が整いつつあることを感じる。

 

 

 日本のクルーズトレインの草分けとなった「ななつ星」は、九州7県の誇りである。それぞれの土地の食材を、地元の腕利きのシェフが調理し、器やお酒も九州産の逸品をさりげなく提供している。

 

 「ななつ星」が走ると、沿線の住民が自然に手を振って歓迎する。すでに九州の観光文化と経済の発展に大きな貢献をしており、乗客だけでなく、地元の人々からも愛され、憧れと尊敬を受ける存在となっている。

 

 「ななつ星」は間もなく10年を迎える。1日ずつ歴史を刻んでいくなかで、ある種の規範も生まれてくる。「本物」であり続ける伝統のオーラを纏った列車への憧れは強まっていくばかりだ。

(編集長・増田 剛)

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