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「提言!これからの日本観光」 情報は「観光」の血液

2021年9月18日(土) 配信

 国は平成半ばから、「観光立国」を国策の柱に掲げてきた。とくに、外国人観光客の誘致による「観光」の振興に力を入れており、目標人数も掲げた。当初の目標は2020年に、2000万人とした。円安が急速に進み、近隣諸国から“爆買い”と揶揄された買い物を目的とした大勢の観光客が、激増したため、急きょ目標は4000万人と倍増を目指すことにした。

 国を挙げての誘致努力や、東京オリンピックの開催が決定したことなどで、18年には3000万人を超えた。20年に4000万人の突破も視野に入ろうとしていたが、日本はコロナ禍に見舞われ、観光目的の来日は停止状態に追い込まれた。

 コロナ禍を克服し、1日も早い「観光」の復興をはかるべく、国は30年に6000万人とした目標は変えていない。

 しかし、訪日客が最も多かったコロナ禍直前に、近隣諸国に極端に偏っていたことが課題だったこと。また、外国人観光客がいわゆる有名観光地に集中したことなどから観光客の増加が、地域住民の日常生活に悪影響を与えていたことなどが反省されなければならないと思う。

 従ってコロナ禍からの観光復興は過去の事例を反省し、受入態勢も再考する必要がある。現在の情報化時代では、量・質共に充実した観光情報を国内外に改めて適確に発信するべきだと考える。

 日本の観光アピールについては、観光客の多い近隣諸国や交流機会が多いアメリカなど重点が置かれる傾向にあった。

 今後は、訪日客数の少ない国などへも万遍なく情報を発信する必要がある。具体的には、日本政府観光局(JNTO)などの公的機関からの発信のほか、国内各企業の在外支店や取引先、個人の交友関係活用などあらゆるチャンネルを活用するべきと思う。

 また、情報を質的量的に充実させるためには、日本各地のキメ細かい情報を届ける必要がある。

 東海旅客鉄道(JR東海)のイギリスとフランス、オーストラリアにある在外事務所は10年間、各国で読まれている日本の観光ガイドブック10冊を調査。毎年4月には、各都道府県別の掲載ページ数を調べた。その結果、延べ5千㌻の日本の地域紹介ページのうち約50%が、東京と大阪、京都の情報が占めた。中部地域は10%ほどだった。ほとんど紹介されていない県さえもあった。

 一部のガイドブックは、「交通の要衝で観光地への通過点にすぎない」とか「工業都市で観光都市ではない」など地域にとってマイナス情報を載せていた。発行日から2年前の新幹線時刻表を掲載している本もあった。これらは、その都度、出版社に連絡し、修正してもらっている。

 外国で、発出されている日本の観光情報をたえずチェックすることをはじめ、最新で適確な日本の情報をリアルタイムに、オンラインで発信する必要性を痛感した。

 コロナ克服の努力と並行して、観光情報の発信環境の整備と点検が急務である。「情報は『観光』の血液」なのだから…。

須田 寛

 

日本商工会議所 観光専門委員会 委員

 
須田 寬 氏
 
 
 
 

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