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「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(121) 感謝の想いを持ってスタートラインに立つ 明日へつなぐ今を大事に

2021年2月14日(日) 配信

 

 ジャラジャラと料金箱に次々と落ちていく運賃。1人の利用者からいただけるお金は、わずか百数十円と少額かもしれませんが、そのお金の積み重ねで私たちの日々の生活ができています。子供たちを学校に通わせ、車や家も買えたのです。これは路線バス運転士の研修でいつも私が話していることです。

 ところが、その運賃をいただくときに運転士から「感謝の言葉」を聞けることは意外に少ないのです。言っているのかもしれませんが、聞こえません。利用者の顔を見ないで前を向いたまま言うのが理由と考えられます。

 ある日、子供連れの利用者が降車口に向かって行きました。背の低い子供には、運賃の投入口が見えません。大概後ろに並ぶ降車客を気にして、親は慌てて子供を抱き上げて運賃を入れさせます。

 そのとき、運転士は無表情で料金箱を指し示すだけです。残念ですがそんな光景をよく見かけます。子供たちは何にでも興味を持ち、大人がするようにやってみたいと思うものです。上手くできたら誇らしく「またバスに乗りたい」と親にせがむかもしれません。

 そして、大きくなれば、最も親しみのある欠かせない交通機関になっていくのです。

 北海道帯広市の十勝バスは、通学定期の利用枠を広げ学校以外にもクラブ活動などで使えるようにして、学生に最も身近で便利な交通機関となり、数年後には通勤定期の利用者が増えました。未来のお客様を創造する壮大なプロジェクトが成功したのです。

 あるとき、航空会社のCA研修時に「飛行機はなぜ飛ぶのでしょうか」と質問しました。「ご利用いただけるお客様がいるから、飛行機は飛ぶのです」という答えは、コロナ禍の中でより強く意識してもらえるようになりました。

 この当たり前のことに、改めて気付かされたとき、その感謝の想いをどのような行動でお客様に伝えたらよいのでしょうか。それを実行に移すやり方を学ぶのが今なのです。

 今、改めて宿泊業の方々にお願いしていることがあります。今まで忙しくて手が回らない、と軽視していたことを始めてみましょう。1つに「お礼状」があります。現場での満足度を高めることに一生懸命で、手が付けられていなかったことです。

 東京にある、私の大好きなレストラン「カシータ」では、オープン当時お客様が少なくて苦しいときにオーナーが店長に話された言葉で「今日お越しくださったお客様が、次に必ずまたお越しいただくことだけを考えて実行してくれ」が今も大切にされています。

 どんなに苦しい状況でも「感謝の想い」があれば、毎日スタートラインはやって来ます。今日をスタートラインに顔晴りましょう。

 

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。

 

 

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