【特集 No.682】笛吹市×石和温泉がタッグ “新時代型の団体”創出へ挑戦
山梨県笛吹市(山下政樹市長)と石和温泉旅館協同組合(理事長=古屋公士・ホテル古柏園社長)は、温泉や果実などの地域資源を軸に、官民一体で既存の団体客を大切にしながら、新たな需要の獲得をはかっている。キャッチコピー「美肌湧泉」の発表をはじめ、「長野県・静岡県・神奈川県旅行業協会 富士山石和温泉郷 団体グループキャンペーン」など、観光客の増加に向けたさまざまな施策を展開。山下市長と古屋理事長が対談し、官民一体で行う誘客への想いや今後の展望などを語り合った。
【木下 裕斗】
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――笛吹市における観光の位置づけを教えてください。
山下:笛吹市は、温泉を中心とした観光業に加え、収穫量と栽培面積で日本一を誇る桃とブドウなどの果樹農業が主要な産業です。市内では、小学生から大人まで幅広い年代層に知られた地域を代表する産業になっています。
一方、1961年の温泉開湯以降、高度経済成長と共に発展してきた市内にある石和温泉ではコロナ以降、それまで最も多かった宴会を楽しむことを主な目的とした団体旅行が減少傾向にあります。
以前の石和温泉は、旅館経営者の皆様がそれぞれの個性と力を発揮し、地域を支えてきました。しかし、時代の変化と共に経営者も変わるなかで、官民一体で前に進む機運が高まっています。
お客様のおもてなしは旅館の役割です。魅力的な観光地づくりや情報発信、誘客などは、市と石和温泉旅館協同組合が連携することで、より高い効果を期待できます。
現在、地域でテーマ性の高い旅の実現が求められるなか、これまで築いてきた団体旅行を得意とするブランドを大切にしながら、新たな魅力を磨き上げ、需要を開拓しています。
この一環で昨年11月、石和温泉の新しいキャッチコピー「美肌湧泉」を発表しました。これは石和温泉のpH値が9・0以上のアルカリ性単純泉という泉質が古い角質を落とし、「肌を滑らかにする〝美肌効果〟を期待できる」効能を表現しています。さらに、温泉街の地中から勢いよく湧き出る豊かな源泉も表しています。石和温泉に対し歓楽街のイメージを持つ人が多いことを受け、女性にも選ばれる温泉地でありたい想いを込めて、企画しました。
――官民一体でさまざまな取り組みを進めるなか、石和温泉旅館協同組合が感じている手応えや成果をお聞かせください。
古屋:コロナ以前は、リピートする団体客も多く、テーマ性の高い体験の追求に比べて、宴会や温泉を中心とした宿泊施設での満足度を向上させることに注力していた時代でした。
しかし現在は、旅行者のニーズが変化しています。単に泊まるだけではなく、「ここで何が体験できるのか」「どのような思い出をつくれるのか」など、温泉に加え、食や体験を含めた旅全体の満足度が求められています。
こうしたなか、市長と一緒に旅行会社などへのトップセールスを継続して行うことで、石和温泉での新しい取り組みの発信や、消費者のニーズなどを聞くことができています。ニーズを踏まえ、行政と旅館組合が一体となってさまざまな施策を展開することで、地域を訪れる観光客の増加にもつながっていると感じています。
――今回の団体送客キャンペーンへの期待は。
山下:新たなグループ客の集客によって地域を活性化させるため、市もキャンペーンの事業費を負担しています。
今回想定しているメインの利用グループは、近年増加傾向にある三世代旅行や親族旅行、友人同士のグループ旅行など12―30人程度の小グループです。これまで石和温泉で十分に取り込めていなかった新たな需要の開拓を進めていけると考えています。
古屋:旬を迎えるフルーツが少ない冬は閑散期となっています。個人旅行が大きく減るなか、冬期にも送客いただいていたのは、全国旅行業協会(ANTA)会員の旅行会社の皆様でした。このため、団体のお客様は、温泉街を支える大切な存在です。これからも団体のお客様に選ばれ続ける温泉地づくりを進めていきます。
さらに、三世代旅行やグループ旅行など新たなスタイルの団体旅行の需要も取り込み、幅広いお客様に選ばれる温泉地となることで、団体旅行を通じた地域のさらなる活性化をはかります。
――団体旅行CPの利用を検討している旅行会社へメッセージをお願いします。
山下:笛吹市には、温泉や日本一を誇る果物、富士山の絶景を望むことができるFUJIYAMAツインテラスなど、魅力的な観光資源が多くあります。さらに、山梨県の中心に位置し、静岡県、長野県、神奈川県などからのアクセスにも恵まれています。ぜひ石和温泉をはじめとした笛吹市へお越しいただきたいと思っています。
古屋:石和温泉は、長年にわたり団体旅行を受け入れてきました。現在でも、さまざまな規模の宴会場やカラオケなど団体旅行に対応できる設備を備えた宿泊施設が多く、小グループから大人数まで受け入れられる体制が整っています。
さらに温泉をはじめ、果物やワイナリーなど、旅の満足度を高める観光素材も豊富にあり、多様化するニーズにも応えることができます。近年増加する小規模団体の行き先として笛吹市を提案いただき、多くのお客様に石和温泉の魅力を体感してほしいと思っています。
――閑散期である冬の誘客に向けて、どのように取り組んでいますか。
山下:現在取り組んでいるのが、学校で冬休みや春休みなどに実施しているスポーツ合宿の誘致です。公共グラウンドを専門性の高い施設へ整備し、サッカーや陸上などの合宿地としてアピールしていきます。
笛吹市は東京から近く、冬でも雪が少なく、気候が安定しています。練習環境として非常に適しており、温泉で疲れた体を癒すことができる大きな強みもあります。
温泉、観光、スポーツ合宿を組み合わせることで、閑散期だけでなく年間を通じて宿泊需要を拡大していきます。
――行政と旅館組合が目指す笛吹市の将来像をお聞かせください。
古屋:これまで石和温泉を支えた団体のお客様を大切にしながら、新たな旅行スタイルのお客様にも選ばれる温泉地へ成長していきます。
現在は新たなキャッチコピー「美肌湧泉」を発信し、石和温泉のイメージを一新している段階です。そのうえで、今後さらに多くの人に選ばれる観光地となるためには、市と旅館組合が同じ方向を向き、地域全体で魅力を高めていくことが重要になります。行政と連携することで、個々の旅館だけでは実現が難しい広域的な情報発信や誘客活動にも取り組むことができます。
地域内での情報共有や連携も深め、多様化するお客様のニーズに応えられる受入体制を整えていきたいと考えています。ユニバーサルツーリズムなどにも積極的に取り組むことで、これまで石和温泉を訪れることが少なかったお客様も訪れる温泉地を目指していきます。
山下 :笛吹市は、温泉や果物、体験などを組み合わせることで、滞在価値をさらに向上させ、市を一つの観光地として磨き上げていきます。
このために、まずは地域にある資源を見つめ直し、その価値をさらに高めながら、今後も官民一体となって“新たな時代に選ばれる観光地づくり”を進めていきます。
具体的に、食については、各旅館がそれぞれ工夫するだけではなく、地元食材を活用するなど、「笛吹市でしか味わえない」価値を官民一体となってさらに磨き上げます。
そのうえで、今後の10年先を見据え、全国からさまざまな形態の団体旅行をはじめ、個人旅行でも選ばれる観光地づくりを進めていきます。
□12人以上の団体補助 近隣3県から集客へCP
静岡県旅行業協会と長野県旅行業協会の協定会員連盟の風間秀一会長が対談に先立ち、長野県・静岡県・神奈川県旅行業協会 富士山石和温泉郷 団体グループキャンペーンの中間報告を行った。
同CPは長野県、静岡県、神奈川県の旅行業協会の会員に対し実施。対象宿泊施設を12人以上で利用する団体グループにはバス1台につき3万円、15人以上で日帰り施設を訪れるツアーには1万円を補助する。対象のホテル・旅館は華やぎの章 慶山や石和常磐ホテル、ホテル古柏園、ホテル石風、ホテル千石、石和びゅーほてるなど17軒。日帰り施設はFUJIYAMAツインテラスやモンデ酒造のほか、笛吹市商工会の会員施設など。5月からプレCPを実施。CPは8月17日(月)~12月25日(金)に行う。
笛吹市と笛吹市商工会(向山秀男会長)、石和温泉旅館協同組合をはじめ、マツムラ酒販(松村昌樹社長、山梨県甲府市)、モンデ酒造(簗田克彦社長、山梨県笛吹市)、山梨中央銀行(古屋賀章頭取、山梨県甲府市)、アサヒビール(松山一雄社長、東京都墨田区)などがCPの事業費を支出している。
7月5日(金)現在、225台の貸切バス利用申請を受け付けた。このうち、宿泊は30台、日帰りは195台。宿泊については実際の予約ベースで1097人、日帰りは5931人の計7028人が送客される見込みだ。団体旅行の申込者による旅行の取消などで、石和温泉旅館協同組合は催行率を約6割と見込み、4200人程度の来訪を想定している。
風間会長は「目標は1万5千人に設定した。順調に申請数が伸び、目標達成が視野に入ってきた」と語る。




もロケを誘致。長﨑部長(右端)はアピールのようすを見学した-120x120.jpg)


