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「観光革命」地球規模の構造的変化(292) 一樹百穫の教え

2026年3月15日(日) 配信

 ミラノ・コルティナ冬季五輪が無事に終了した。日本選手団は金5、銀7、銅12の計24のメダルを獲得し、史上最多を記録した。今回はとくにスノーボード選手が金4、銀2、銅3を獲得し大活躍した。競技後のインタビューなどを通して選手育成システムの素晴らしさを知ることができた。

 中国古典「管子」によると、一年の計は穀物を植えるのが最善、十年の計は木を植えるのが最善、百年の計は人を育てるのが最善、という教えがあり、人材育成は即効性がなくとも、将来的に大きな恩恵(百穫)をもたらすという意味で「一樹百穫」が奨励されている。

 私は2006年に北大で観光学高等研究センターを立上げ、07年に独立大学院で観光創造専攻を創設した。新しい観光を生みだすことのできる人材育成が目的だった。その際に東日本旅客鉄道(JR東日本)と北海道旅客鉄道(JR北海道)による寄附講座(年額3000万円、10年継続)を受領できたために観光大学院を軌道に乗せることができた。

 その後、約20人に観光学博士号を授与し各地の大学で観光学教員を務めている。また約300人に観光学修士号を授与し、優秀な人材が各地で観光事業の担い手になっている。若い人材が「地域活力の源泉」になっており、「一樹百穫」に貢献している。

 北海道の宿泊業最大手・野口観光グループは18年に職業訓練校として「野口観光ホテルプロフェッショナル学院」を開校している。ホテリエ養成の総合ホテル学科と総合調理学科を設置。企業内職業訓練校であるため、学院生は野口観光の正社員として採用され、高卒並みの給料をもらうと共に、入学金・授業料無償、寮完備(3食付)で働きながら学べ、各種資格を取得できる。

 学院は野口観光運営の「新苫小牧プリンスホテル和なごみ」に併設されており、2年間の座学と実習によるホテルプロフェッショナル養成を行う。宿泊業の人手不足が深刻化するなか、若者が誇りをもってホテリエとして活躍できる基盤づくりに挑戦し、優秀なホテル人材を育成する野口観光グループの貢献は高く評価できる。

 観光立国実現のためには若い世代の活躍が不可欠であり、地域の民産官学の協働による「一樹百穫」が必要になる。その際に観光業界の聡明なリーダーシップが不可欠になる。

 

石森秀三氏

北海道博物館前館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

 

 

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