MENU

test

「観光革命」地球規模の構造的変化(282) トランプショックの行方

2025年5月3日(土) 配信

 政府は3月の訪日外国人客が推計349万人に達し、1月からの累計で1053万人となって、最速で年1千万人を超えたと発表した。旅行・観光業界にとっては喜ばしい成果であり、政府は2030年に訪日外国人客6千万人という目標に向かって、インバウンド観光立国を強力に推進するのであろう。

 一方トランプ大統領は第2期政権発足後に矢継ぎ早に大統領令を発して全世界に強烈なトランプショックを与えて大混乱が生じている。とくに米国の貿易赤字を前提にして数多くの国々に一方的な相互関税発動を宣告した。その結果、マーケットは大変動し、世界経済の不確実性が極度に高まっている。

 東アジアに目を転じると、中国は米国からのすべての輸入品に34%の追加関税を課すことを公表して徹底抗戦の構えを明らかにしている。韓国では尹錫悦大統領の罷免に伴う次期大統領選挙で革新系野党「共に民主党」の李在明候補者が当選すると中国や北朝鮮との緊密な連携が推進されると共に、反日の動きが高まると予想されている。ロシアもまた中国や北朝鮮と連携をはかりながら日本に軍事的圧力をかけている。

 日本は傍若無人な米国の意向を気にしながら、中国の揺さぶりと脅威に対抗していく必要がある。しかしトランプ政権は既に「世界の警察官」としての役割を放棄しており、日本は米国に全面的に依存できないために、独自の軍事力増強(核装備を含め)に踏み込まざるを得なくなる可能性が高い。

 世界はトランプショックで大混乱しているが、米国国内で「真正の保守派」を自認する若手グループ(40歳代)が政治的影響力を持ち始めている。彼らはトランプ政権を支持しつつ、トランプを過渡的存在とみなして、ポストトランプを見据えて活動を行っている。新自由主義者やテクノリバタリアン(テクノロジーで理想社会実現を目指す人)などによって生みだされた社会の分断を伴う極端な格差社会を是正し、社会的連帯や共同体の安定を重視する米国の再生を目指している。

 日本はトランプショックの行方を冷静に見極めると共に、国力の衰え、少子高齢化の進展、地方の衰退などを踏まえながら、厳しい世界情勢の中で確実に生き抜くことのできる国民的合意の形成をはかる必要がある。

 

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

 

 

いいね・フォローして最新記事をチェック

コメント受付中
この記事への意見や感想をどうぞ!

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

旅行新聞ホームページ掲載の記事・写真などのコンテンツ、出版物等の著作物の無断転載を禁じます。