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【サービス連合・櫻田会長に聞く】 6%の賃金改善を要求 「基幹産業へ発展目指す」

2026年3月3日
編集部:木下 裕斗

2026年3月3日(火) 配信

櫻田あすか会長

 人手不足を背景に、サービス・ツーリズム産業労働組合連合会(サービス連合、櫻田あすか会長)は2024年と25年の春闘で最高の賃金改善を実現した。櫻田会長は2026春闘に向けて「21世紀の基幹産業となるため、社会的な賃上げの風潮に依存せず、誰もが働きたい、働き続けたい産業へ発展する必要がある」と強調し、6%の賃金改善に加え、労働時間の短縮を含む総合的な労働条件の改善を目標に掲げる。今年の春闘の方針について櫻田会長に聞いた。

【木下 裕斗】

 ――観光業界の現状をどのように捉えていますか。

 サービス連合では、24年と25年の春闘で5%を超える賃上げを実現し、大きな成果を得ました。これは人手不足を背景として、人への投資の必要性を労使で共有できた結果です。

 ――誰もが働きたい、働き続けたいと思える産業を実現するため、経営側と、どのような交渉を進めていきますか。

 観光業は今後、基幹産業として成長していくなかで、現行の労働条件を改善していく必要があります。観光業は、機械や設備よりも人間の労働力に依存する割合が高い産業で、多くの価値を生み出すのは働く人です。労働者に投資することが商品やサービスの質を高め、産業の発展につながります。

 このため、経営側には人手不足の解消に向けた人材への投資だけではなく、産業の発展に向けて前衛的に賃上げを行っていくことの重要性を説明していきます。

 ――中間層への賃上げも課題となっています。

 採用強化のために、多くの企業が昨年、新卒者の賃金を引き上げました。一方、中間層の給与は新卒ほど顕著に増加していません。

 長期的に働くことを見据えたとき、将来の生活設計が見通せない状況は、労働者にとって大きな不安要因となります。さらに、責任だけが重くなり、生活の質が向上しない状況では、働く意欲の維持は困難です。とくに若い世代が将来に希望を持てなければ、短期間で離職してしまう可能性も高まります。

 このため、誠実に働き続ければ着実に賃金が上昇する実感を持てる仕組みを整えることが不可欠です。

 ――賃上げが難しい中小企業への交渉をどのように行いますか。

 中小企業では売上に占める人件費の割合が大きく、賃上げは簡単ではありませんが、離職防止とともに現場スタッフを大切にしているメッセージとしても、賃上げは有効な手段となります。サービス連合では、加盟組合に対して要求内容のまとめ方や、要望を切り出す方法、交渉時期など具体的な進行を支援していきます。 

 ――離職が経営に与える影響は。

 育てた人材が他の産業に転職するのは、業界にとって大きな損失です。人材育成には多くの時間と費用が掛かっています。さらに、退職によって人員不足となるなかで指導したスタッフも疲弊し、離職することもあります。このため、離職を防ぐためにも働き続けたいと思える環境が欠かせません。

 ――勤務時間の短縮など労働条件の改善に向けた交渉の方針を教えてください。

 総実労働時間は短縮傾向にあります。観光産業は休日数が少ないなか、他産業との人材獲得競争に勝つために、経営側は休暇を増やしました。

 一方で観光業は21世紀の基幹産業といわれるなか、週休2日に満たない職場も多くあります。

 サービス連合では、春闘で段階的な労働時間の短縮を進めるための取り組み方針として時短アクションプランを策定し、加盟組合の交渉を支援していきます。

 具体的に、まずは完全週休2日制を整備し、次いで祝日を含めた年間124日の休暇確保、さらに年次有給休暇の取得による休日数の増加を目指します。そのうえで、子供の看護や親の介護などを理由として休む場合も、給料が支払われる制度の整備を理想としています。

 ――年次有給休暇の取得数増加に向けた取り組みは。

 まず十分な人員確保が不可欠となります。このためには、他産業と比較して、魅力的な労働条件が必要になります。

 また、職場で休暇は互いに取得するものだという意識を共有することや、繁忙期にも取得できる雰囲気づくりも欠かせません。

 さらに、子供が体調を崩したときのために休暇を温存するスタッフが多くいます。与えられた年次有給休暇を休養を取るために使うのではなく、結果として子供の看護のために活用するケースも見られます。

 こうした状況を改め、誰もが当たり前に、労働基準法で定められたリフレッシュを目的とした年次有給休暇を取得できる環境へと一段引き上げていく必要があります。

 ――加盟組合の組合員を対象に、過去最大となる約2千人へアンケートを実施し、労働環境の改善に向けた意見を集めました。

 これまで総実労働時間の実態把握を行い、産業全体として、労働時間が長い傾向にあることがわかっていました。

 今回のアンケート結果では、長時間労働が働く人のモチベーションに与える影響を数字で表し、現在の労働条件に満足していない組合員の状況を把握できました。この点は、経営者への配慮などから労働者が経営者に対して直接伝えることは難しいと考えています。春闘では職場に対する想いを伝え、経営側に改善を求めていきます。

 賃金と労働条件が生産性に影響を与えるデータも収集できたため、2026春闘では、賃金改善だけでなく、勤務時間などの労働条件の改善についても、賃金改善と両輪で進めていきます。

 ――ジェンダー平等への方針を教えてください。

 サービス連合では、運動方針を決定する定期大会などの決議機関に参画する女性が増えています。さらに、加盟組合の女性役員比率も上昇しました。これにより、企業との交渉の場に女性が当事者として、より多様な声を的確に反映させながら、働きやすい環境を求めることができるようになりました。  

 観光業は女性が多い産業であるため、労働組合の役員として組織運営に参画する女性を増やす必要があります。サービス連合や加盟組合の三役への就任も進めていきたいと考えています。

 ――サービス連合では、組織拡大にも取り組んでいます。

 労働組合のない未組織企業への取り組みに最も力を注いでいます。ゼロから組織化を進める企業には、定期的に訪問し、使用者側の理解を得るための取り組みを粘り強く続けています。

 労働組合は、労働条件のチェック機能や組合員の声をもとに、経営側と課題を早期に共有し、解決に向けた協議を重ねることで、労働問題が労使紛争などへと発展してしまう可能性を抑えることができます。

さらに、健全な労使関係は、労使の相互理解を深め、安定した経営と安心して働ける職場環境を支えることが可能です。

 ――春闘への意気込みを語ってください。

 この2年間は正念場として取り組み、賃上げなどの成果を得ることができました。21世紀の基幹産業となるためのサービスや商品の質の向上には、生活の質の向上を実感できる賃上げが欠かせません。労働条件の改善にも力を入れ、賃上げとの両輪で春闘を進めていきます。働く魅力が向上すれば、さらに多くの優秀な人材から働く場所として選んでもらうことができます。

 この産業をより良く発展させたいという思いは経営者の皆さんと同じ思いです。いまこそ将来を見据え、何が必要とされているかを共に考え、より良い成果を得るため、真摯に協議を続けていきます。

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