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〈旅行新聞2月1日号コラム〉――宿の真の実力 メンテナンス業務を自分たちで担う

2026年2月1日
編集部:増田 剛

2026年2月1日(日) 配信

 本紙1月1日号(前号)の新春特集で、「清掃・洗濯の内製化」をテーマに、工学博士・内藤耕氏のインタビュー記事を掲載した。これにあわせて、宿の経営者らに「清掃や洗濯の内製化」について話を伺った。すると、口をそろえて「外注コストの高騰に頭を悩ませている」と話された。さらに、「自館で洗濯の内製化を検討している」という声も幾つか聞かれた。

 物価高騰や人手不足の問題が、宿泊業界の現場に大きな影響を与えており、多くの宿泊施設ではIT化やDX化を進め、コストの削減に努めている。

 例えば、予約やチェックイン・アウトは人を介さずタッチパネルやスマートフォンで行われる施設が増えた。浴衣やアメニティグッズは、フロント近くのスペースから宿泊者が必要なものを客室に持参する。最近の傾向として、宿泊料金システムの「オールインクルーシブ」化によって、ラウンジにアルコールやソフトドリンク、お菓子やおつまみなどが並び、夕食後もコーヒーやデザートなどを楽しめるようになった。ラウンジだけでなく、大浴場近くでは冷たいハーブティーやアイスクリームなどもフリーで提供される。

 宿側はモニターなどで確認しながら補充すればよく、少人数での対応も可能となる。宿泊客にとっても、滞在中にいつでも自分の好きなものを気軽に飲食できるため、その自由度の高さから満足度も高い。このようなスタイルは今後もさらに増えていくことが予想される。

 しかし問題は、宿泊業にとって宿命的に必要な客室の清掃と、タオルやシーツ、浴衣・作務衣などの洗濯である。これはいくらIT化やAIが進展しても、省人化は難しい。東京都心のある大型ホテルでは、客室清掃が間に合わず、夜間に清掃をせざるをえず、宿泊需要はあるのに相当数をクローズしなければならないことも耳にした。極言すれば、今や清掃や洗濯業務を上手く機能させることが可能な宿のみが運営を維持できる時代になったことを感じる。

 先日、神奈川県・箱根の旅館に取材で訪れた。この宿はスタッフが増えたため、社員寮を1棟拡充した。その社員寮内に業務用の洗濯機と乾燥機を備え付け、自社が運営する2館のバスタオルやフェイスタオル、作務衣などを洗濯している。

 以前は外注していたが、稀に生乾きの匂いなどのクレームがあり、それであれば「自分たちで洗濯した方が高品質を保つことができる」と決断した。将来的には自社の宿だけでなく、近隣宿泊施設の洗濯業務を請け負うことも視野に入れている。

 この宿は、パティシエの手作りした洋/和菓子を各客室に置くサービスが、とても好評だという。バースデーケーキも自館で作り宿泊客の誕生日を祝う。ケーキも近隣のホテルや旅館に販売することも計画中だ。

 高付加価値化事業が進む旅館・ホテルの宿泊料金は軒並み高くなった。高価格帯のラグジュアリーホテルも増えた。しかし施設の素晴らしさに頼って、人の温もりが希薄な宿には虚しさが漂うのはなぜだろう。人が試行錯誤を繰り返すなかに“見えない力”が蓄積されていく。その力とは、地道なメンテナンス業務を外部に丸投げするのではなく、可能な限り自分たちで担うことではないか。宿への“想い”も培われる。これこそが宿の真の実力なのだと最近強く思う。

(編集長・増田 剛)

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