〈旅行新聞8月1日号コラム〉――海外の地方を旅する 首都とは異なる不便さや感動も大きい
2025年8月1日(金) 配信

韓国には、これまでソウルと釜山以外の地方を訪れたことがなく、「いつかのんびりと地方都市を巡る旅をしたい」とぼんやり考えていた。先日、ようやくそれが実現した。訪れたのは、韓国中部に位置する忠清北道の清州と、その南にある全羅北道の全州だ。たまたまだが、どちらもチョンジュだった。
¶
成田国際空港からLCC「AeroK」で清州国際空港に到着。中心市街地までバスで移動した。清州はサムギョプサルが有名で、韓国観光公社と日本旅行業協会(JATA)の共同企画「韓国絶品グルメ30選」にも選定されている。
夕刻、サムギョプサル通りを訪れた。入りやすそうな店を選び、サムギョプサルとマッコリをたらふく食べて、飲んだ。久しぶりの海外1人旅で、何だかとてもいい気分になったので、近くのカフェバーに入り、ジントニックを何杯か飲んで、ホテルまでタクシーで帰った。
翌朝は高速バスセンターまで歩き、全州行きの都市高速バスで向かった。全州は以前、韓屋村をテレビで見て以来、「一度行ってみたい」と思っていた。バスは途中、大田(テジョン)広域市などに立ち寄り、3時間ほどで全州に辿り着いた。
全州は韓国を代表する「美食の古都」として名高い。とりわけ「ビビンバ発祥の地」とのことで到着早々、バス発着所近くで見つけた安食堂で、全州ビビンバを食べた。こちらも「韓国絶品グルメ30選」に入っており、まあ、普通に美味しかった。
全州は日本と同様に暑く、35度を超えていた。ホテルに入るや否や缶ビールを飲んで昼寝をした。夕方少し涼しくなったころ、伝統韓屋が立ち並ぶ韓屋村を歩いた。土産物店や飲食店も多い。身体を少し冷やそうと、目に付いた古民家カフェで小豆とミルクのかき氷を食べた。
「晩ごはんどうしようか」と考えたが歩き疲れていたため、ホテル近くの韓国風鶏唐揚げ店に入り、ビールと唐揚げを爆食した。名物「やかんマッコリ」も飲みたかったが、胃が悲鳴を上げていたので今回は諦めた。
¶
3日目は高速バスで清州に戻った。コミカルな音楽が流れる市場を懐かしく感じた。昼は市場近くの食堂で汗まみれになりながら参鶏湯(サムゲタン)を食べた。再び市場に立ち寄り、パック入りのキンパ(韓国風海苔巻き)を夜にホテルで食べようと思い立ち「1パック」と指差すと、おばちゃんはものすごい勢いで2つ分を袋に入れた。「あれっ、1パックでいいのだけどな」と言った私の声は無きもののように扱われ、圧倒的な気合い負けで、2つ買った。
気を取り直し近くのコンビニエンスストア「CU」でチャミスルや韓国のお菓子などを買い込んで、冷房の効いたホテルのベッドの上で大型テレビを見ながら、その夜は酔い耽った。翌朝、清州空港までバスで行き、帰国した4日間だった。日本人とはほとんど会わなかった。
¶
海外の地方から地方をバスで移動する旅のなかで、さまざまな失敗もし、学びも多かった。言葉はほとんど通じなかったが、グーグルマップや翻訳アプリを自分なりに使いこなせたことも、大きな収穫となった。
海外の地方を旅すると、首都とは異なる不便さもあるし、その分、感動も大きい。最近、外国人旅行者が訪れ始めた地方の観光担当者には、ぜひ海外の小さなまちを巡る旅をおすすめしたい。
(編集長・増田 剛)

