55頭の大蛇が圧巻の舞、石見神楽・万博特別公演
2025年6月23日(月) 配信

島根県浜田市と同市石見神楽大阪・関西万博公演実行委員会は6月19日(木)、20日(金)の2日間、大阪・関西万博のEXPOホール「シャインハット」で伝統芸能・石見神楽の特別公演「IWAMIKAGURA HEROES 石見神楽『大蛇』降臨!受け継がれる情熱の軌跡~石見神楽を創り出したまち浜田~」を開催した。
1970年の大阪万博以来、55年ぶりの万博での石見神楽公演となり、2日間で、計4回公演(各回約2時間)を実施した。各回とも当日先着順での入場だったが、開演前から長蛇の列ができるなど4公演とも満席になる盛況ぶりだった。
演目は「神迎」「大江山」「恵比寿」「大蛇」を1つのスペシャルストーリーにした作品を披露。伝統と創造が融合する圧巻のステージとなった。
筆者は2日目午前中の公演を観賞した。外国人の観客も多く、日本の伝統芸能への関心の高さが伺えた。
公演は神々を迎える神秘的な「神迎」から幕を開け、狩衣姿の舞手4人が創り出す神聖な空気感に一気に神話の世界に引き込まれた。「大江山」は源頼光と悪行重ねる酒吞童子の戦いをドラマチックに描き、迫力と緊迫感が印象に残った。
続く、「恵比寿」は一転して豊漁と商売繁盛の神・恵比寿様が、美保の御崎で釣りを楽しむ姿をコミカルに描いた神楽。会場には和やかな笑い声が響いた。
そしてクライマックスは石見神楽を代表する演目「大蛇」。55年ぶりにちなみ、55頭の大蛇が舞台を埋め尽くす空前の演出に度肝を抜かれた。リアリティ溢れる大蛇の動きが立体的に絡み合い、暴れ回るようすは圧巻の一言。舞台上を所狭しとうごめく大蛇たちは、細部まで作り込まれた意匠と巧みな操作によって命を吹き込まれ、生きているかのような存在感を放っていた。
今回の特別公演は、伝統芸能が持つ可能性を万博という国際舞台でいかに輝かせるかを示す好例となった。単に伝統芸能を披露するだけでなく、その背景にある歴史・文化の発信、そしてそれを未来へつなごうとする人々の情熱が多くの人に伝わったと感じた。