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「津田令子のにっぽん風土記(92)」人と地域を言葉でつなぐ~ 群馬編 ~

2022年12月13日(火) 配信

前橋市臨江閣で行われた朗読コンサート桃太郎のようす
コミュニケーション講師 久林純子さん

 群馬県高崎市を中心に活動している久林純子さんは、コミュニケーション講師として企業研修やビジネスパーソン向けのスピーチレッスンを行うほか、朗読活動にも力を入れている。

 
 「群馬は萩原朔太郎や山村暮鳥といった近代詩人を多く輩出しています。雷やからっ風などの気候が、長文ではなく短い文章を書く気質を産んだと検証している方もいます。そこで昨年、臨江閣でバイオリンとピアノの演奏にのせて朔太郎の詩の朗読コンサートを行いました」。

 
 臨江閣というのは、1884(明治17)年に建てられ、国の重要文化財に指定されている和風近代建築。当時は迎賓館として活用され、朔太郎も利用したことがあるそうだ。歴史的空間の中で、歴史的な題材を扱う地域密着の文化イベントとして興味深く感じる。地元の来場者だけではなく、オンラインでの生配信も行うハイブリッド方式で県外の視聴者も多かったとのこと。投げ銭スタイルでチケット代はお客さんに決めてもらったというのだから、面白い。

 
 コロナ禍で自粛していたが、今年は「旅する朗読講座」が実施できた。「普段、朗読・音読教室の生徒さんとは、教室内で朗読のテキストを読み、聞き手に伝わるように表現しながら楽しんでいますが、旅する朗読講座は、朗読に興味がなくても十分楽しめる旅の講座なんです」と久林さん。作家ゆかりの地を訪れ、その作家の文章の一部を味わい、周辺観光を行うという。

 
 今年は桜桃忌に合わせて、太宰治ゆかりの谷川温泉の旅館たにがわへ伺い、太宰がこの旅館で執筆した「創世記」を、コーヒーを飲みながら味わったと話す。「名物のダムカレーのランチのあとは自由行動。天一美術館や温泉など各々が思い思いに満喫した時間となりました。日帰り旅でしたが、参加者の1人は宿に宿泊され余韻を楽しんでいました」。朗読を切り口にした旅のスタイルとは何とも味わい深いと感じた。

 
 もともとラジオパーソナリティだった久林さんは、声や言葉で想いを伝える楽しさを知っている。次のビジョンは北関東で初めてのインターネットラジオ局を開局させること。熱い想いを持った人が自分の番組を持ち発信する。自分メディアを持つことで広がる人と人のつながりや、地域の良さの深堀りを担っていく。  

 
 来年の開局を目指し、パーソナリティも募集中だ。旅、朗読、ラジオとさまざまな切り口で人と地域を言葉でつなぐ久林さんを応援したいと感じた。

 

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

 

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