「津田令子のにっぽん風土記(98)」人が集まり賑わう商店街~ハッピーロード大山商店街編 ~
2023年6月24日(土) 配信
「暑い日も、台風の日も雪の日にも雨でも1日も欠かさず散歩と日々の買い出しを兼ねて行っていますよ」と、小宮勢津子さんは言う。
小宮さんが雨にも負けず足繁く通っているというのが、東京都板橋区にある「ハッピーロード大山商店街」だ。1978(昭和53)年に板橋区随一のアーケード商店街として誕生以来、「一生づきあいします」を旗印に、赤ちゃんからお年寄りまで地元の皆なから喜ばれている。催事やイベントの開催、ハローカードの提供など、お客にとって便利で魅力のある商店街になるような活動を続けている。
なかでも注目を集めているのが「全国ふれあいショップ『とれたて村』」だ。現在全国の4市町村と直接契約を結んでいて新鮮な採れ立て野菜や、各地の特産品などを販売している。店舗での販売に留まらず、参加市町村への訪問ツアーの企画実施、生産者との交流、体験、祭り参加、産地の修学旅行生の販売体験などの受け入れのほか、板橋区の全小・中学校への給食食材の供給(年数回)も実施。都会と産地を結ぶ「ふれあいの拠点」として活発な交流が行われている。
また、商店街では地元の方々のために環境を良くする運動にも取り組んでいて、とくに最近では「自転車マナーの向上運動」や、「商品のはみ出し防止のためのマナーラインの設置」などにも力を注いでいるという。
そんな地元民に愛され続ける商店街の魅力を小宮さんは、「コンビニやスーパーは時間を問わずやっていて便利だけれど、ここに来れば、お店の人と話をしたり近所の方に偶然出会って話に花が咲いたり、面白くて、楽しいの。それが一番ですよ」と語る。
シャッター通りと言われる商店街が多いなかで、「ハッピーロード大山商店街」は、まさに勝ち組だ。ハッピーロード大山商店街振興組合では、これからも安全、安心、快適で楽しい商店街を目指してお客様のニーズに応えていくのだろう。
今、散歩兼買い出しから戻ったという小宮さん。「これ見て、懐かしいでしょう。植木屋さんで風鈴買ってきたのよ」と話す。涼しげなガラスのそれを、うれしそうに掲げて見せてくれた。子供のころは初夏から夏に欠かせなかった風鈴。隣の家の軒先に掲げた釣忍とともにチリーン、チリーンと聞こえてきたものだ。「風鈴の階を隔てて鳴りあえり」と自慢の一句を披露してくれた。87才とは思えない軽やかな足取りが印象に残る。
津田 令子 氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。