老舗旅館「親湯温泉」(長野県)のスタッフ28人が「旅のユニバーサルデザインアドバイザー」資格に合格

2021年7月21日(水) 配信

実技講習のようす

 長野県茅野市と諏訪市で3つの旅館を経営する親湯温泉(柳澤幸輝社長)は7月6日(火)、大正時代創業の本館(蓼科新湯温泉)で、ケアフィット推進機構が認定する「旅のユニバーサルデザイン(UD)アドバイザー」に同社スタッフ28人が受講した。

 午前中は座学講習として、UDの基本理念や、障害の社会モデル、合理的配慮の理解などを学んだ。午後は簡単な手話や車イス操作、視覚障害がある人の手引きなどを体験。その後、終了筆記試験を受け、28人全員が合格した。

 受講生からは「お客様の考えを尊重し、一緒に考え、対話しながら寄り添っていきたい」、「あいさつだけでも手話を使えるようになりたい」などの感想があった。

 旅のユニバーサルデザインの研究を専門とする東洋大学国際観光学部講師の竹内敏彦氏は、「宿は客室の構造(ハード)だけでなく、サービスを提供する主体者(ソフト)が重要」とし、「宿のスタッフが資格取得によって『お客様のことを想う私たちが担当します』というメッセージを伝えることができ、素晴らしい効果だと考える」と語る。

 親湯温泉はSDGs(持続可能な開発目標)の方針に賛同し、滞在中にベビーシッターを利用した「お子様お預かりサービス」や、車イスの貸し出し、ユニバーサルデザインの客室などを用意しており、従業員の理解向上にも努めている。

阪急交通社×JAL共同企画 9日間連続JAL機チャーター 道東の絶景を巡る3日間

2021年7月21日(水) 配信

釧路湿原イメージ

 阪急交通社(酒井淳社長)は、このほど、日本航空(JAL)と協力し、9月11(土)~19日(日)の9日間連続で日本航空機をチャーターし、北海道の知床半島などを満喫する3日間のツアーを売り出した。ツアーは、中国と四国(高松・出雲・広島・岡山・徳島・高知・松山)発着。同地域のJALにおける連続日チャーター企画は初となる。

 中国や四国地方の各空港から女満別空港には直行便の定期運航がないため、通常乗り継ぎを含め、片道には10時間かかってしまう。

 しかし、このほどの日本航空チャーター直行便を利用することで、所要時間が2時間30分となり、大幅に時間を短縮できるのが魅力だ。

 女満別空港に直接乗り入れるため、道東を3日間の行程で効率よく観光することが可能。

 ツアーでは、世界遺産の知床や、釧路湿原、この時期にしか見ることのできない赤く染まるサンゴ草などを見ることができる。また、羅臼でのクルージングでは、野生のシャチなどを見学するホエールウォッチングを楽しめる。

 JALと阪急交通社の共同企画、「北海道 道東絶景の旅3日間」は、高松空港など発、大人1人当たり13万~17万9000円(2人1室利用時)。

審査委員会を設置 IR整備審査、認定へ(観光庁)

2021年7月21日(水) 配信 

観光庁は7月20日(木)、特定複合観光施設区域整備計画審査委員会を設置した

 観光庁は7月20日(木)、特定複合観光施設区域整備計画審査委員会を設置し、同日に第1回会合を開いた。同委員会では、国土交通大臣がIR整備法に基づいて区域整備計画の認定を行うとき、公平な審査を行い、優れた区域整備計画を認定する。

 自治体とIR事業者が共同で作成する区域整備計画の認定申請期間は、10月1日(金)~2022年4月28日(木)まで。申請のあったものの中から上限の3まで認定する。

 国から区域整備計画の認定と公示が行われれば、都道府県などと事業者の間で実施協定の締結と認定があり、国からカジノ免許が付与されれば、完成検査を受けたのち、IRを開業することができる。

 同委員会の認定審査の結果や、評価の過程は、区域整備計画の認定後、速やかに公表される。

ビッグホリデー、ワクチン接種者向け旅行代金割引ツアー発売

2021年7月21日(水)配信

パンフレット表紙

 ビッグホリデー(岩崎安利社長、東京都文京区)は7月21日(水)から、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種者を対象に期間限定ツアーを売り出した。ワクチン接種者は、同ツアーで1人当たり旅行代金から5000円を割引するサービスを受けられる。

 割引対象となるツアーは、羽田空港発着の国内旅行(北海道、沖縄、九州、四国)で、フライトやホテルを自由に選べる個人旅行プラン。出発期間は8~11月(方面により出発日は異なる)。割引条件は、①新型コロナウイルス感染予防ワクチンを接種した人②同ワクチンの「接種証明書」か「接種記録書」の写しの提出――の2点を満たしている場合、割引が適用される。なお、割引対象は大人のみ。

 予約方法は、ビッグホリデー予約センター、ビッグホリデー公式ウェブサイト、同ツアーのパンフレットを取り扱っている旅行代理店から。予約期限は出発日の前日から起算して7日前まで。

 そのほか、ビッグホリデーのツイッターアカウントでプレゼントキャンペーンを実施している。今回のワクチン接種者割引ツアーに関するツイートをフォロー&RTした人から、抽選で1人にQUOカードPay1万円分をプレゼント。また、フォロワー2000人突破記念のダブルキャンペーンとして、抽選で5人にQUOカードPay2000円分をプレゼントする。

コロナ後を見据え農泊推進 地域と旅行会社が訪日向け商談会

2021年7月21日(水) 配信

商談会のようす。旅行会社側は会場に集まった

 農泊商談会事務局(JTB)は7月15日(木)、日本旅行業協会(JATA)の協力で、農泊地域と旅行会社との訪日旅行向け商談会を開いた。農林水産省の交付金を活用して開催したもので、JATA会員とツアーオペレーター品質認証会社から21事業者が参加。コロナ後の訪日需要の回復を見据え、リモートで参加した21の地域が、それぞれの魅力を熱心に売り込んだ。

 農水省は観光を通じた農山漁村の地域活性化のため、農泊地域と旅行事業者間のマッチングや、観光関連事業者との連携促進を目指している。今回は、2021年度農山漁村振興交付金のなかで同事業を公募し、JTBが受託した。当初は昨年の開催を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響から見合わせていた。

 あいさつに立った農水省・農村振興局農村政策部都市農村交流課農泊推進室の米田太一室長は、「国で採択した農泊地域数は20年度までで554地域となり、政府目標としていた500を超え、宿泊人員も少しずつ伸びてきたところだったが、コロナ禍で20年度は半減した」と報告。

 一方で、ワクチン接種が世界的に進むなか、観光庁によるインバウンド受入実証事業など、訪日回復を見据えた動きが始まろうとしていることに触れ、「農泊はまさに新たな時代に求められる旅の1つと言える。来るべきインバウンド回復を見据えて、早くから積極的に展開できるよう進めていくには、地域コンテンツの開発や磨き上げと同時に、流通や販売チャネルを整えていくことが重要だ」と今回の意義を語った。

 また、JATA需要拡大部会の喜田康之(日本旅行取締役兼常務執行役員)座長は、「コロナ後もインバウンドが観光の未来を牽引する成長エンジンであることに変わりはない」とし、「コロナ前から訪日市場は『量から質』『買い物から体験』『都市から地方』へと変化の兆しが見えた。農泊はこれらの動きと合致した素材。地域の皆様とは長い時間をかけて、一緒に市場をつくっていきたい」と意気込んだ。

 会では、商談の前に1分間プレゼンとして、地域のアピールの場を設けた。訪日受入は未経験の地域もあり、コロナ後の市場参入へ意欲的な姿勢が見られた。

常磐ホテル 今夏もビアテラス開業 安心・安全な環境で実施

2021年7月21日(水) 配信

日本庭園の屋外席

 山梨県甲府市の信玄の湯 湯村温泉「常磐ホテル」(笹本健次社長)は7月1日から、芝生の日本庭園を開放した夏の風物詩「ビアテラス」を今年もオープンした。オープン前日の6月30日には、県や甲府市の地元観光関係者、主要取引先、メディア関係者など人数を絞って招待したプレスデイも実施した。

 ビアテラスは2012―13年に、米国の日本庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」で3位にランクインしたことがある松を基調とした情緒豊かな日本庭園で、ビール大手4社(アサヒ・キリン・サントリー・サッポロ)の生ビールが味わえる。このほか、瓶ビールやワイン、梅酒、日本酒、焼酎、ハイボール、サワー類、ノンアルコール・ソフトドリンクなどが飲み放題(一部チケット制メニューあり)で提供される。

 ビアテラスは9月5日まで原則毎日(7月6・7日、8月2・3日は除外日)、午後6時―8時30分(ラストオーダー8時)に開催する。利用時間120分で座席数は最大60席。今年のメイン会場は東館1階「柏(かしわ)」で、室内固定の座席で飲食を行う。全席禁煙。屋外の庭園席へは自由に移動できる。

 今年は新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、やまなしグリーンゾーン認証で定められた基準を遵守し、安心・安全な環境づくりに努め、来場の際はマスク着用、ビアテラス入口で入場の際に体調確認の協力を要請している。今までとは大きく異なるスタイルでのサービス提供となる。

食事は室内の固定席で

 ビアテラスは完全予約制(予約は前日の午後5時まで)、料金(税込)は大人6600円(チケット5枚綴)、未成年4620円、未就学児(4―6歳)3300円、3歳以下無料、前売り券6千円。基本は飲み放題・食べ放題であるが一部のメニューはチケット制になっている。アルコールを飲まない人はチケット2枚が追加される。このほか、ワクチン接種特典で受付の際に自治体発行の接種証明書を提示すると「湯村温泉厄除健康甘納豆」がプレゼントされるという。

常磐ホテルの笹本社長

 常磐ホテルの笹本社長は、オープニングの席上で「当社では、これまでも新型コロナウイルスの感染阻止対策を積極的に進めてきたが、恒例のビアテラスに関しても、感染症対策を徹底したうえで本年も開催することに決定した」とあいさつ。

 「通常では250人収容の会場を最大60席に限定して、食事も室内で食べていただくかたちとなる。料金を少し上げているが、その分ゆったりと過ごしてもらえるよう安心・安全な環境を確保した。もちろん日本庭園の屋外席も自由にご利用できる。ビアテラスで楽しいひとときを過ごしてほしい」とアピールした。

 

JATA、「補償とセット」を要望 夏休み直撃の緊急事態宣言受け

2021年7月20日(火) 配信

会見のようす

 日本旅行業協会(JATA)は7月8日、メディアを対象に記者懇談会を開き、旅行マーケットの復活に向けて、国内と海外、訪日旅行における取り組みについて説明を行った。菊間潤吾副会長(ワールド航空サービス会長)は、国内で進むワクチン接種について、「旅行業界にとって大きな光。トンネルの向こうにやっと明かりが見えてきた」と需要回復に期待を示した。一方で、4回目の緊急事態宣言が夏休みの旅行シーズンを直撃し、「補償とセットでないと耐えられない」と述べ、キャンセル料などの補償を政府に要望する考えを明らかにした。【入江 千恵子】

 昨年の緊急事態宣言がゴールデンウイークや修学旅行シーズンだったことに加え、今回も書き入れ時の夏休み期間中と重なる緊急事態宣言。菊間副会長は「旅行の一番のシーズンを直撃している。補償がまったくないという環境で、大変な苦境にさらされている」と危機感をあらわにした。そのうえで、「Go Toトラベル期間中は、その枠内で(宿泊施設や交通機関への)キャンセル料が補償されたが、現在は停止し、補償もない状態。補償とセットでないと、これ以上は耐えられない。我われに、いつまで我慢しろというのか」と、観光業界の切迫した状況を訴えた。

 修学旅行のキャンセル料についても、「お子さんたちには求められない」とし、旅行会社が負担していることを明かした。

 緊急事態宣言の発令を受け、JATAでは政府に対し、補償と感染状況を踏まえたうえでのGo Toトラベルの早期再開を強く要望していく。

 一方で、「日本もかなりのスピードでワクチン接種が進み、国際交流を含めた旅行マーケットが本格的に動き出すのも、そう遠くないと考えている」(菊間副会長)と期待を寄せた。

 旅行マーケットの復活に向けたJATAの取り組みについて、国内旅行担当の髙橋広行副会長(JTB会長)は、重点的取組事項として①国内旅行宿泊拡大キャンペーン「笑う旅には福来る」の実施②観光庁の「地域観光事業支援」の事務局運営などの支援③国内旅行における新たな役割研究会において「旅行会社の役割」の議論・提言――を行うと説明した。

 昨年、中止や変更が相次いだ修学旅行は「日本独自の教育文化であり、他国にはない旅行形態。日本の教育文化の灯を消さないよう今後も文部科学省や教育委員会に働き掛けていく」と述べた。

 海外旅行は、菊間副会長がワクチンパスポート(新型コロナワクチン接種証明書)のデジタル化と、渡航時に活用する健康管理アプリの国際標準化について言及した。JATAの海外旅行推進委員会では、デジタルパスポートワーキンググループを設置。「渡航医学会や観光庁、経済産業省にもメンバーに入ってもらい、ヘルスパスの仕組みや、海外諸国の動きなど情報収集している。(ワクチンパスポートが)早期にデジタル化され、グローバルスタンダードになるよう政府への要望に動いている」と語った。

 訪日旅行は、6月に就任した小谷野悦光副会長(日本旅行社長)が、ウィズ・ポストコロナの訪日旅行に向けた政策推進について語った。

 ワーキンググループを立ち上げ、①管理型旅行による訪日旅行の再開②インバウンド旅行客受入再開にむけた意識調査③旅行業における新型コロナウイルス対応ガイドライン――のテーマについて、検討・議論していることを明かした。

 小谷野副会長は「JATAとして、1日も早い安心安全な国際交流の再開に向けて準備している」と述べた。

夏休み期間中の旅行人数は4000万人 前年比5.3%増も大幅な回復には至らず JTBの旅行動向見通し

2021年7月20日(火) 配信

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 JTB(山北栄二郎社長)は7月19日(月)、「夏休み(7月20日~8月31日)に1泊以上の旅行に出かける人」の旅行動向見通しを発表した。夏休み期間中に国内旅行をする人数は4000万人で、前年同期比5.3%増とわずかに増加するが、緊急事態宣言の発出もあり、コロナ禍前の前々年比では44.8%減と大幅な回復には至らないと予測する。旅行の特徴は、これまでと同様に感染予防を意識した“新常態の安近短”旅行傾向がうかがえるとした。

 アンケートや各種経済指標、予約状況などを基に算出した、国内旅行人数は4000万人で、国内旅行平均費用は3万3000円(前年比3.1%増、前々年比9.6%減)、総額では1兆3200億円と推計する。

 旅行日数は「1泊」が41.9%と最も多く、次いで「2泊」(29.6%)、「3泊」(15.3%)の順。旅行先は、マイカーなどを使っていける近場の傾向がみられ、全国的に旅行先と居住地が同じ域内旅行の割合が高くなっている。

 コロナ禍前と比較し、約10%減となる旅行費用は、域内旅行志向による平均泊数の低下や、将来不安による旅行費用の抑制傾向があるとみている。一方で、多少割高でも新型コロナの感染防止を優先する動きや、観光・地域応援と連動した旅行先での食事、土産購入などから、1人当たりの平均費用は前年を上回ると予測している。

 調査は2021年7月5日(月)~7月9日(金)の期間、全国の15~79歳までの男女1万人を対象に、インターネットで実施した。夏休みに旅行に「行く」または「たぶん行く」と回答した人の合計は19.8%で、「たぶん行かない」「行かない」の合計80.2%を大幅に下回った。

 旅行に行かない理由は「まだコロナの影響で、旅行することに不安があるから」が45.1%と最多で、「コロナウイルス新規感染者数が減っているとは言えない状況だから」(37.1%)、「コロナ第5波が心配だから」(31.1%)と続いた。

 なお、今夏の旅行動向の見通しは、新型コロナウイルス感染拡大に対する国の方針および東京五輪の観客受入方針の発表を待ち、対象期間の開始日を例年より5日遅い7月20日からとし、国内旅行のみを対象とした。

〈旬刊旅行新聞7月21日号コラム〉コロナ収束後には――我慢し続けた子供たちに楽しみを

2021年7月20日(火) 配信

 
 7月16日に関東甲信越、東北地方も梅雨明けした。その前日に真っ青な空と、夏特有の入道雲を眺めながら、本格的な夏の到来を予感した。しかしながら、新型コロナウイルスの影響はまだ収まらない。

 
 夏休みを前にして、東京都は7月12日から8月22日まで4回目の緊急事態宣言下にある。ワクチン接種も進んでいるが、「行動制限」が1年半にも及んでいる状況だ。コロナの感染防止のためとはいえ、これほどの長期的な「行動制限」に、そろそろ多くの国民はストレスや、我慢の限界に達しているではないか。

 

 
 大人に振り回されて、子供や若者たちが時に悪者になり、さまざまな制約を受けてきた点も、何もなかったように見過ごしてはいけない。

 
 昨年の春ごろから「重症化リスクが高い高齢者を守るため」と、子供たちは一生の記念となる卒業式や入学式、楽しみにしていた修学旅行や部活動、スポーツイベントやコンサート、芸術祭など数え上げたら切りがないほど中止・延期になってきた。

 
 お花見、ゴールデンウイーク、夏休み、お盆、秋の連休、クリスマス、お正月、成人式、春休みと、その都度、「我慢、我慢」と言われ続けてきた。

 
 未だに子供たちのイベントの多くは延期や中止されている。修学旅行が実施されるのか、今年も無くなるのか、不安に思っている。

 
 しかし、決定権は子供にはない。責任回避一辺倒や、政治的な駆け引きにコロナを利用する動きに苛立ちを覚える。

 
 大半の高齢者はすでに、ワクチンを接種している。あらゆる行動にはリスクはつきものであり、世の中のリスクは何もコロナ感染だけではない。子供たちの修学旅行やキャンプ、帰省、旅行、スポーツ大会などに、もう少し社会全体が寛容になるべきだと思う。

 
 旅行業界は、子供たちの楽しい思い出づくりや、旅でしか学ぶことができない貴重な体験などを提供してきた。コロナ禍にあっては、この「楽しい思い出づくり」の手助けをするという仕事の貴さを改めて感じる日々である。

 

 
 1年延期された「東京オリンピック2020」の開会式が目前に迫っている。だが、57年ぶりに東京で開催される五輪の祝祭ムードは、現在ほとんど感じられない。開催国・都市への配慮を欠いた、“商業主義”第一の姿勢が目に余るIOC(国際オリンピック委員会)の言動が、日本国民の感情を逆撫でし、オリンピックそのものが相当に嫌われてしまった。だが、競技者には罪はない。彼らだって被害者である。人並外れた努力をした者による、命を懸けた真剣勝負を純粋に楽しみたい。

 

 
 五輪が開幕すると、感染者数は増加していくだろう。海外選手の感染者も出てくるだろう。ワイドショーは威勢よく非難するだろう。これに世論が乗り、政府や首長らはさらに保身的になっていく。リスクを声高に叫び、責任を追及する側が押し込み、よりリスクが低い方へと社会全体が流れていく。

 
 これは結局、誰が得をするのだろう。巡り巡って、最も弱い子供たちの楽しみを奪っていくのではないか。不憫でならない。コロナが収束したら、我慢をし続けた子供たちに大きな楽しみを与えられる政策に期待したい。

 

(編集長・増田 剛)

 

【特集No.587】宿の波及効果生かし、地域活性化 空き家改修 地元の利益に貢献へ

2021年7月20日(火) 配信

 地方では過疎化が進み空き家の増加が深刻化している。藤龍館(福島県・湯野上温泉)の星永重社長は「地域観光の起点であるホテル・旅館から地方を活性化したい」との思いから、2020年9月に地元・湯野上温泉のお菓子工場兼店舗だった空き家を、観光客と地域住民が交流するコミュニケーションスペースに改修してオープンした。今後は、リネン業や寝具業など他産業への波及効果が高い宿泊施設も開業する予定だ。星社長に詳しい話を聞いた。

【木下 裕斗】

福島県・湯野上温泉 藤龍館 星社長に聞く       1棟貸しで新しい客層を集客

 ――藤龍館の歴史を教えてください。

 湯野上温泉は当館創業者が1890(明治23)年、近くの阿賀川に沸く源泉を水車で旧館である清水屋旅館に汲み上げたことから開湯しました。ほかにも源泉を引く宿が現れ、軒数も増加していきました。

 当館は開業当時、温泉街がある街道に沿った場所に位置し、宿泊客は、同街道で売れた牛や馬などの家畜を運ぶ馬喰が中心でした。

 1980年代には社員旅行などの団体旅行が盛んになり、近隣の芦ノ牧温泉では、大型化に着手する旅館が相次ぎました。しかし、当館は90年に開業100周年を記念して、創業の地から現在の場所まで300㍍ほどの場所に移転した以外、大規模なリニューアルは行いませんでした。移転前の宿は「清水屋旅館」として営業を続けています(コロナ禍で同館は現在、休止中)。

 ――大型化に踏み切らなかった理由は。

 私は大学を卒業後の2006年に当館に入りました。それまでは宿を継ぐことはもとより、宿泊業への就職を望んでいませんでした。大学在学中に父(先代)が亡くなったことを受け、仕事の手伝いから始めました。

◇源泉を客室に引く 先代の信条継ぐ

 父は、学生だった私に旅館経営に対する理念などをほとんど話すことがありませんでした。このため、過去の資料や、現在の宿の状態を鑑みた話になります。

 大型化しなかった理由として、すべての客室の浴場に源泉を掛け流し、温泉を楽しむ「内湯文化」を維持したい創業者の信念が大きく影響しています。

 温泉は開業当時、宿から約50㍍下った川の近くにある露天風呂のみでした。創業者は、街道を歩いてきた宿泊客に「すぐに風呂に入ってほしい」と思い、当時は贅沢と言われていた内湯を増設しました。……

【全文は、本紙1838号または7月27日(火)以降、日経テレコン21でお読みいただけます】