2025年7月7日(月) 配信
髙橋広行会長
日本旅行業協会(JATA、髙橋広行会長)は7月4日(金)、東京都内のJATA本部で記者懇談会を開いた。髙橋会長は「今年は我われにとって特別な年。政府は現在、2026年に新たにスタートする、第5次観光立国推進基本計画の策定を行っており、我われも観光業の将来に関わる課題や解決策を盛り込んだ提言書を提出した。これらを計画に反映させるべく、勢力的に関係省庁や関係機関に働き掛けを行っている」と言及。提言書をもとに、持続可能なツーリズム産業の構築に向けた要望やJATAの取り組みについて紹介した。
現状の課題としては、2030年に訪日外国人旅行者6000万人を目指すなか、双方向交流の不均衡が深刻化していることを挙げた。24年の訪日客数は約3687万人、対して日本人の海外旅行者数は約1301万人で、出入国に占める日本人の割合は26%と4分の1程度にとどまっている。
JATAは提言のなかで日本人のパスポート所持率を向上させるため、取得費の抜本的な低減策を求めた。海外旅行経験含め、若者の国際交流の減少で、国際競争力の低下リスクもあることから、海外修学旅行や語学研修、国内国際交流事業などを高校卒業までに体験する「国際交流必須化」への検討も訴えた。
また、訪日観光客の7割が大都市圏に集中していることから、地方分散化をはかるため、アドベンチャートラベルガイド育成制度の構築など高付加価値化を推進することや、国内旅行会社の訪日市場への参画支援などを要望した。
オーバーツーリズムの観点からも、旅行者数の大半を占める国内旅行の需要の平準化をはかるため、ラーケーションや県民の日による平日休みを増加させるための取り組み推進、経済界と連携した有給休暇の取得率向上、取得日数の拡大検討などを求めた。JATAとしては、関係機関と「休み方改革」推進に向け、全国知事会に要望書を提出したほか、平日旅行に特化したキャンペーンなどで需要の拡大、需要の平準化に努めている。
さらに、DXによるビジネスモデル改革や、観光産業の担い手育成と学校教育への繁栄、健全な観光産業の育成のための不正行為、違反行為の取り締まり強化などを盛り込んだ。
小谷野悦光副会長
会見には、各分野の担当役員も出席した。国内旅行担当の小谷野悦光副会長は市場の状況について、24年の日本人国内旅行消費額は過去最高の25.2兆円となった一方、JATA会員である主要旅行会社43社の24年度の取扱額は、19年度比で約15%減少したことを報告した。「コロナ前とコロナ後では、店舗の縮小や廃止、OTAや直販化の加速などで、旅行会社は伸びた需要を捉えられていない。市場としっかり向き合い切れていない」と課題に言及。「旅行業界全体として、代売から脱却した価値ある商品の企画・販売、地域と連携した発着双方の視点での需要創出、価値創出を目指す必要がある」と力を込めた。
他方、北陸復興支援について、会員会社による能登半島地区へのツアーが多数企画されていることや、24年の宿泊伸率が石川県は19年比で29.0%増と東京都に次ぐ第2位となったことなどに触れ、旅による復興支援は「旅行会社の持つ機能として重要だ」と認識を示した。