「津田令子のにっぽん風土記(115)」土偶メガネで地域をつなぐ~ 旅する土偶メガネ編 ~
2025年7月8日(火) 配信


2024~25年は、日本全国で埴輪・土偶に関する展覧会が目白押しだ。東京・上野の「東京国立博物館」では、同館所蔵の「埴輪 挂甲の武人」が国宝指定50周年を迎え、特別展「はにわ」に“ハニワ界のスーパースター”が大集合した。千代田区の「東京国立近代美術館」では、埴輪・土偶ブームの裏側を掘り起こす「ハニワと土偶の近代」が開催され、評判を集めた。ほかにも日本各地で個性溢れる展覧会が行われ多くの人が押し寄せている。
今回はどこかユーモラスでホッとする企画「旅する土偶メガネ」の発案者でもある聡美杏(さとみ・あんず)さんにお話を伺った。杏さんの企みは埴輪・土偶ブームも手伝ってヤフーニュースでも取り上げられるほどだ。
演劇を通して社会課題解決に取り組む地元密着のNPO法人「劇団サードクォーター」の座付き作家として活動している杏さんは、自身が配信している音声配信プラットフォームアプリ「スタンドFM」のラジオ番組「不可能姉妹のにっちもさっちも」の企画で青森県へ旅することになった。
途中、三内丸山遺跡で土産として販売されている「土偶メガネ」に出会った。「そこがすべての始まりでした。土偶メガネが2400円。もったいない、何とか活用できないものか」と思案し、出会った人に掛けてもらうことに。「土偶メガネを掛け、わしゃわしゃ喜ぶ姿を写真に撮り、SNSで投稿していると話題となり、『あの人も土偶に! 私も土偶になりたい』と志願して出土される人が増えていったのです」と話す。
欲が出て土偶メガネの写真を100人撮れたら写真展をやりたいとつぶやいたところ、それも実現した。写真には出土順に土偶ナンバーが振られ、出土場所(撮影場所)と杏さんが命名した土偶名を明記して、パネル展示する。「当初137人だった土偶は出土を重ね、600人近くまでになった」という。
ユニークで不思議な土偶メガネの縁でつながっていく人々のようすを杏さんは「土偶ミュケーション(ドグミュケーション)」と表現する。
「土偶メガネで全国行脚するのが夢。色々な(タイプの)土偶が全国で出土するのではないでしょうか」。土偶メガネを掛けて真面目そうな人が突然明るいキャラに変わるなど、「変身ぐあいは、さまざまです。土偶メガネを掛ける“千載一(土)偶”のチャンス。皆様の出土をお待ちしています」と笑顔で呼び掛ける。
津田 令子 氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。