2025年11月15日(土) 配信
1976年の発足以降、専門学校は各種学校からの転換によって、一貫して進学者を伸ばし続けた。
平成以降は、少子化が加速度的に進行し、1学年当たりの生徒数は減少の一途を辿るようになった。しかし、そのような少子化の状況においても、大学の新設や定員増が認可され続けたことで、大学進学者数は増加している。さらに高校においても、商業科、工業科、総合科といった専門科を有する高等学校は、かつては就職や専門学校進学が中心で、4年制大学進学は限定的であったが、最近では多様な入試制度の導入が進んだことにより、大学進学熱が大いに高まっている。
一方で、入学者が定員に満たない大学は増加し続け、2023年にはついに定員割れしている私立大学は53・3%にも達した。大学さえ選ばなければ誰でもどこかの大学には入ることができる、いわゆる「大学全入時代」となった。
大学進学率は、18年度から24年度までの7年間では、53・3%、53・7%、54・4%、54・9%、56・6%、57・7%、59・1%と一貫して増やしている一方、短大進学率は、4・6%、4・4%、4・2%、4・0%、3・7%、3・4%、3・1%と衰退が著しい。
このデータだけを見ると、専門学校も短大と同じく衰退の一途を辿っていそうに感じるが、専門学校への進学率は、21年度までは22・7%、23・0%、24・0%、24・0%と漸増し、コロナ禍で22・5%、21・9%と漸減したものの、24年度は24・0%と持ち直している。結局、専門学校は、10年代以降は変わることなく20%前半の範囲内で進学率を保持してきた。
大学の新設や定員増が認可され続けて、大学進学率が上昇し続け、短大と同じ外部環境の変化にさらされているにもかかわらず、専門学校と短大とでここまで明暗を分けたのは、ここまで日本の学校教育史を辿ってきたことでわかる通り、ひとえにその2者の成り立ちが異なっているからに他ならない。
短大は、戦後の教育改革でGHQが6・3・3・4制の単線型学校体系に急進的に変革しようとした際、現場として教育環境を整備できないために、暫定的に移行措置として2年制を認めたことが恒常化したことによって成立した。そのため、大学に準じる存在として大学と同じ枠組みで学校経営・運営を行っている。管轄も大学同様文部科学省が直接行っている。
それに対して、専門学校はそれぞれの学校が理想の教育を求めて思い思いの学校を作った各種学校を起源とする。管轄も都道府県なので文部科学省ほど箸の上げ下ろしまでの細かい指示はない。
専門学校は、社会や産業界のニーズに合わせて、専門的なカリキュラムを構築してきたから、このような逆風下でも生き残っているのである。
島川 崇 氏
神奈川大学国際日本学部・教授 島川 崇 氏
1970年愛媛県松山市生まれ。国際基督教大学卒。日本航空株式会社、財団法人松下政経塾、ロンドンメトロポリタン大学院MBA(Tourism & Hospitality)修了。韓国観光公社ソウル本社日本部客員研究員、株式会社日本総合研究所、東北福祉大学総合マネジメント学部、東洋大学国際観光学部国際観光学科長・教授を経て、神奈川大学国際日本学部教授。教員の傍ら、PHP総合研究所リサーチフェロー、藤沢市観光アドバイザー等を歴任。東京工業大学大学院情報理工学研究科博士後期課程満期退学。