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「街のデッサン(243)」もう、五大湖灯台ツアーの企画を 古着から生まれた、コロナ後の旅の構想

2021年7月3日(土) 配信

スエットにたくさんの美しい灯台の作画が

 「灯台」という言葉には、何か惹かれるものがある。故郷の羽衣伝説のある三保の松原にも、さして大きくもない灯台があった。名所の天女の舞った松原からは離れていて、観光客も来ない半島の先にぽつんと立っていたが、高校生だった夏の終わりに1人で訪ねてみた。

 三保に暮らす同級生の一家が「海の家」を経営していて、仲間が集まって海水浴を楽しんだが、桟敷からは遠く離れて灯台が見えていた。真っ青な海原に浮くように建って見える灯台が心に残された。浜辺に秋風が吹くころ、訪ねた瀟洒な灯台の周りに咲き遅れた浜昼顔が控えめに顔を出し、誰もいない塔の風景は高校生の感傷に打って付けだった。砂浜に座って、鍵が掛かって登れない施設をしばらく眺め、埋もれた桜貝を何枚か拾った。青春の残滓は長い間、ポケットに眠っていた。

 つい最近、パソコンで古着の通販をチェックして、不思議なスエットに出会った。さまざまな灯台の建物がプリントされているトレーナーだ。塔と建物が美しくデザインされた作画がトレーナーの表にも裏にもたくさん描かれていている。その数の多さがうるさい気がしたが、何やら欲しくなって購入の手続きをした。

 届いたのはアメリカ生まれのスエットで、湖らしき名前に付随してオールド・ミション・ポイントなどとあるのは、それぞれ灯台の名前だろうか。湖の名前はミシガン、スペリオル、ヒューロン、エリーとあり、そうだこれは五大湖ではないかと気が付いた。名前の中でオンタリオ湖だけが無く、この一番小さな湖にこれといった建築がないのかもしれない。なぜこんなたくさんの灯台を載せたスエットが存在するのか不思議だったが、ひょっとすると灯台観光マニアが大勢いて五大湖巡りのツアーがあり、その参加者がおそろいで着て、船やバスで巡るのかもしれないと想像した。着ているトレーナーに、巡る灯台が載っていてガイドマップを兼ねているのだ。

 このツアーの醍醐味は、朝方は朝日に輝く波頭の中の灯台、昼間は海辺と建築の美しい環境を楽しむ施設観賞、夜は夜で灯台の本来の機能である光を海洋に投射する煌めく夜景と、船舶だけでなく地球環境を守る灯台の存在意味にある。

 丁度、旅行新聞の4月1日号に、不動まゆうさんの「愛しの灯台100」の新刊紹介があって、取り寄せると日本でも美しい灯台が目白押し。件の清水灯台もあって、コロナ後の国内旅行の一番手。しかも思いも寄らず「五大湖灯台ツアー」が人生の楽しみに浮上したのが私には嬉しい。

コラムニスト紹介

望月 照彦 氏

エッセイスト 望月 照彦 氏

若き時代、童話創作とコピーライターで糊口を凌ぎ、ベンチャー企業を複数起業した。その数奇な経験を評価され、先達・中村秀一郎先生に多摩大学教授に推薦される。現在、鎌倉極楽寺に、人類の未来を俯瞰する『構想博物館』を創設し運営する。人間と社会を見据える旅を重ね『旅と構想』など複数著す。

 

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