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観光事業者の事業継続力強化を 国際防災の日に災害レジリエンスを考える  ARISEジャパン

2020年10月21日
編集部:飯塚 小牧

2020年10月21日(水) 配信

ARISEジャパンがオンラインシンポジウムを開いた

 国連防災機関(UNDRR)の民間グループ、UNDRR ARISEジャパンは10月13日、オンラインシンポジウム「観光と災害レジリエンス Postコロナを見据えWithコロナを生きる」を開いた。国際防災の日に、観光関連事業者の事業継続力の強化や防災・減災の重要性を確認した。UNDRR駐日事務所との共催で、後援は日本観光振興協会と日本防災プラットフォーム。

 ARISEジャパン代表で、観光レジリエンス研究所代表などを務める高松正人氏は冒頭、「近年は自然災害が多く、観光への影響も大きい。観光は地域全体の経済にも影響するが、脆い部分がある」と指摘した。

 内閣府の調査によると、宿泊・飲食サービス業のBCP(事業継続計画)策定率は調査業種中で最下位。「策定の人材やノウハウがない。必要だとわかっていても足踏みしてしまう」(高松氏)のが現状だ。

 ARISEジャパン運営委員でミネルヴァベリタス顧問の本田茂樹氏はBCPについて、「災害が起こったあとのものと考えていないか」と投げ掛けた。災害の種類に応じて経営資源を守る「防災・減災」と、原因に関わらず欠けた経営資源を補い、事業を中断させないための策「BCP」を車の両輪として考える必要性を説明。「準備は裏切らない」と強調した。

災害を変革の機会に――鶴雅・大西氏

鶴雅ホールディングス、鶴雅リゾート・大西氏

 事例紹介では、鶴雅ホールディングス(北海道釧路市)取締役で鶴雅リゾート常務取締役の大西希氏が登壇。「観光危機管理思考をマーケティング段階から取り入れ、グループ全体で事業継続と雇用維持」と題し、宿泊施設の減災の取り組みを紹介した。

 同社では、2002年のSARS流行時に、インバウンド客が減少。これを機にアルコールやマスクの備蓄をしていたことが、新型コロナウイルス禍でも役立った。11年の東日本大震災後は団体客が減ったことで、旅館業でタブーといわれた1人旅やペット旅などの市場を開拓し、客層を広げた。さらに、18年の北海道胆振東部地震では、ブラックアウトの経験から自家発電を整備するなど、災害を次の施策に生かしてきた。

 コロナ禍の影響は、同社の13施設中、現況は前年を上回る施設や前年並みに回復している施設もある一方、半減しているところもある。これに対し、グループ内含め地域の事業者と施設を共有することや、従業員の心理的負担を軽減すること、利用できる補助金をしっかり活用することなどを具体的に実施している。

 そのうえで、大西氏は「『危機があったからこそ』という、災害を変革の機会にすることを企業文化として根付かせたい」と力を込めた。

 また、富士五湖観光連盟(山梨県富士吉田市)専務理事の上野裕吉氏は、観光事業者災害対応マニュアルを作成した経緯や、官民連携について語った。地域の商工会議所や商工会などの協力で、4千部を地域の観光事業者すべてに行きわたるように配布した。マニュアルでは、近年多発している水害や、富士山の噴火なども盛り込んだほか、外国人への避難誘導のための英文なども記載している。

 ディスカッションでは、視聴者を含めて、意見を求めた。そのなかで、名古屋大学減災連携研究センター教授の西川智氏は「近くの異業種、遠くの同業者との連携が有効」とリスク分散法を紹介。「手を取り合って補い合うことで、お互いの人手不足や余剰人員が解消し、新しいマーケットも拓ける」と述べた。

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