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〈旬刊旅行新聞3月11日号コラム〉消費市場が変わる 新型コロナの水面下で進む構造的変化

2020年3月11日
編集部:増田 剛

2020年3月11日(水) 配信

新型コロナの水面下で進む構造的変化

 小田急線の車両の音が軽い。通常であれば平日の朝の通勤時間は多くの乗客がいるために、車両の走行音は地響きのように重いのだが、最近は空の貨物列車が走っているような乾いた音がする。

 
 新型コロナウイルスの感染拡大により、政府は3月2日から全国の小学校・中学校・高等学校や、特別支援学校を春休みまで臨時休校としたほか、時差通勤やテレワークの実施などで、東京都心に向かう電車の中は日曜日の朝のように空いている。経済への影響を考えると、不安になる。

 
 さまざまなスポーツや文化イベントも中止や延期、無観客試合などの措置が取られている。発災から9年を迎える東日本大震災の追悼式も取りやめとなった。さらに、3月9日から中国と韓国からの入国を制限した。近年の「インバウンド重視政策」の要に位置している観光業界には大打撃となる。
 
 日本旅館協会(北原茂樹会長)が緊急融資制度の創設などを求める「新型コロナウイルス感染症対策に関する要望書」を赤羽一嘉国土交通大臣に提出するなど、政府や国会議員、首長への陳情活動も活発になってきた。「声を上げなければ無いものとされる」世界においては、観光関連の業界団体は正確な経営状況を把握し、国に伝える使命がある。
 
 一方で、個々の旅館やホテルでは、従来の「作業プロセスのムダを見直す絶好の機会」と、改革に着手する施設もある。苦境によって見えてきた自館の課題に対して改革に着手できるか、陳情活動に終始するだけで時が過ぎていくのか。新型コロナウイルスの感染が終息したときに大きな差が出てくる。
 
 人間は観光や外食を楽しみたい文化的な生き物である。旅行需要は、必ず回復する。中国人観光客もいずれ大きな波となって戻ってくる。延期になったコンサートイベントやスポーツイベントも再開される。戦争や大恐慌、パンデミックが起こっても、人間はいずれ旅をする。拡大と縮小を繰り返しながら、観光産業は成長を続けてきた。
 
 その意味では楽観視しているが、もう一つ厳しい現実を直視しなければならない事態がある。新型コロナウイルス感染拡大のニュースに隠れて、水面下で進む大きな動きがやがて姿を現すだろう。
 
 というのも、年明けに本格的に新型コロナウイルスの感染が拡大する以前から、「今年の2月、3月の予約がかつてないほどに悪い」と言う声を耳にしていた。昨年10月に実施した消費税率のアップの影響もあるかもしれないが、もっと根本的な理由がありそうだ。つまり、旅行や消費する層が、まさに今、大きく変化している、「構造的な問題」を真剣に考える時期に来ているのではないか。
 
 本紙は2019年6月21日号の1面で「注目の消費市場『70代シニア』」を特集した。国立社会保障・人口問題研究所によると、2020年に日本で最も多い世代は70代となり、1634万4千万人(17年推計)を見込んでいる。しかし、その70代も後半になると、海外も、国内旅行も行く回数が減っていく。
 
 新型コロナウイルスの感染拡大が終息したあとに、従来と同じ客層が戻ってくるとは限らない。これらの構造変化を理解することで、新たな顧客層を開拓していくうえでの基礎資料としたい。
 (編集長・増田 剛)

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