日本旅館協会 函館で金融懇談会、投資と災害多発で意見交わす 官・民・金融の連携強化へ
2026年9月16日(水) 配信
日本旅館協会(桑野和泉会長)は9月7日(月)、北海道函館市で「宿泊業界における観光と金融に関する全国懇談会in函館」を開いた。会員をはじめ、観光庁や金融庁、中小企業庁、金融機関など約700人が参加。コロナ禍での債務に加え、多発する災害や、時代に合わせた投資に対する費用の高騰といった金融課題を受け、関係省庁や金融機関と意見を交わした。官・民・金融の共創で切り拓く持続可能な観光と地方創生に向けた行動宣言を採択した。
桑野会長は「近年、災害が相次ぎ宿泊業界を取り巻く環境は大変厳しい状況。これに加え、コロナ禍における金融面での負担など、我われが抱えている課題は多く残されている」と話し、「懇談会では、金融庁や観光庁による基調講演ほか、財務省や金融機関とのパネルディスカッションで多角的な議論を行い、官民・金融の連携による地方創生を実行していく」と語った。
来賓には、長谷川岳参議院議員をはじめ、鈴木直道北海道知事、大泉潤函館市長らが出席した。
「地域金融の役割」と題した基調講演では、金融庁の伊藤豊長官は「地域経済の発展には金融機関と宿泊業をはじめとした地域事業者が互いに協力することが大事」とし、「観光は日本の戦略産業であるため、地域の独自のまちづくりや魅力などを金融機関として応援することで、相互に利益を得ることができるウインウインの関係を築いていける」と語った。
中小企業庁の野原諭長官は「地域再生と中小企業政策について」をテーマに登壇。「現在、経営者が60歳以上の中小企業が全体の50%以上となり、半数は後継者が決まっていない。全体で約860万人を雇用しており今後、事業承継が大きな課題になる」との考えを示した。こうしたなか、国税庁で非上場株式を承継する際の増税が検討されていることを紹介し、「中小企業庁は企業の事業拡大を支援しているため、深く議論したい」と話した。
観光庁の木村典央長官は「観光を巡る状況と観光政策」について語った。「オーバーツーリズムが課題となるなか、分散の受入先として、北海道に期待を寄せている」との考えを示した。
北海道は東アジアからの訪日客が中心であり、宿泊日数の多い欧米豪の集客が課題であることから、「観光庁から10億円の補助を受けた北海道観光機構が情報発信、2次交通の整備などが実施される予定だ。今後もさまざまな施策を講じていく」と述べた。
□3テーマで分科会 宿と金融の連携確認
分科会は①宿泊業と地域金融機関との連携推進②テーマ型ツーリズムの推進③まちづくりでの観光関係者の役割について――の3テーマでディスカッションを行った。
第1分科会の「宿泊業と地域金融機関との連携推進」では、金融庁長官の伊藤氏、中小企業庁長官の野原氏、財務省大臣官房総括審議官の中山光輝氏、北洋銀行頭取の津山博恒氏、北海道銀行頭取の兼間祐二氏、北國銀行社長の米谷治彦氏、函館商工会議所会頭の久保俊幸氏、日本旅館協会の副会長で北海道支部連合会会長の濱野清正氏が登壇。ファシリテーターは日本旅館協会副会長の相原昌一郎氏が務めた。
相原氏は冒頭、緊急セッションで「近年、災害が頻発し、逃れるのは不可能」と問題を提起したうえで、能登半島地震の復興に携わる米谷氏へ復興における金融機関の役割について問いかけた。
米谷氏は震災後、ホテル・旅館の営業再開に向け、宿泊施設の経営者と和倉温泉創造的復興プランを策定。「和倉温泉は奥能登への入口であり、復興によって観光客が増え、地域活性化を見込める」と理由を説明した。
また、珠洲市の人口は震災前の約6割に減少したため、「定住人口の増加を見込むのが難しいなか、地域のあらゆる企業を持続するうえで必要となる交流人口を増やすことができる宿泊など観光業は大事な存在だ」と強調した。
その後、北海道の観光事業者の現状を聞かれた濱野氏は「ホテル・旅館は建物と設備を抱え、時代に合わせた継続的な投資は欠かせない」として、「北海道は冬と夏の寒暖差が激しく、建物と設備の老朽化が早い。このため、北海道の多くの宿は金融支援が欠かせない」と説明した。
これに対し、北洋銀行の津山氏は、従来の融資では不動産の担保や経営者の保証などに依存しており、資産の評価額などが低い事業者は資金調達が難しかったことを振り返った。これを受け、「宿泊施設の立地やブランド力、収益力などの企業価値を担保として融資する制度を始めた。企業価値の強化に向けたサポートも実施している」と説明した。
北海道銀行の兼間氏は「宿泊業は北海道の基幹産業で道内の雇用、食、交通を支える重要な産業だ。こうしたなか、後継者は前の経営者による債務を抱えるなど、事業承継は大きな課題となっている」と語った。そのうえで、道内の取引先である旅館が事業を承継する際、事業再生ファンドの支援を受けながら、創業家と常に話し合い再生した事例を紹介し、「今後も融資だけでなく、事業推進も支援していく」と述べた。
宿泊事業者と金融機関の取り組みを踏まえ、金融庁の伊藤長官は、金融機関が取引先企業において、事業を深く理解し、必要な資金を調達するCFOの役割を担うことを促した。そのうえで、「事業者もCFOのような発想で金融について考える人がいることで、両者は充実した融資・資金調達ができる」とした。さらに、地域でもCFOの役割を発揮する人を置くことで、「金融機関と地域が一体となって戦略を立てることが大事だ」と話した。
野原長官は「宿泊業が成長取り組みを全力で支援する。地域課題の解決に取り組む企業には十分な資金調達ができるよう、金融庁と連携していく」と方針を示した。
懇談会の最後には、「函館から未来へつなぐ行動宣言~官・民・金融の共創で切り拓く持続可能な地域観光と地域創生~」を採択。参加した関係者が、地域観光を共に創るパートナーとして持続可能な地域の発展に取り組むことを確認した




大西特別顧問、桑野会長、村田長官、山下長官、伊藤長官、佐藤副会長、相原委員長-120x120.jpg)


