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【第36回北前船フォーラムin信州まつもと ~初の内陸開催 「塩の道」で地域連携を一層拡大~】 海と信州との歴史で地方活性化

2025年12月25日
編集部:木下 裕斗

2025年12月25日(木) 配信

 「第36回北前船フォーラムin信州まつもと」と「第7回地域連携研究所大会」が11月20日(木)~22日(土)、長野県松本市のホテルブエナビスタを主会場に開かれた。テーマは「令和に呼び覚ませ、塩の道 ~海洋と内陸の経世済民~」。今回は初めて内陸で開催。北前船で運ばれた塩は寄港地から「塩の道」を通って信州各地へ送られ、両地域は深く交流していた。国や自治体、観光事業者などが、このつながりを地域活性化に生かすため、互いに連携と交流を深めた。

【木下 裕斗】

 北前船は、江戸時代から明治20~30年代まで、北海道、東北、北陸、瀬戸内、関西、九州などの地域を結ぶ重要な物流ネットワークとしての機能を果たしていた。このため、当時は壮大な経済圏が存在していた。こうして栄えてきた各寄港地を点から面に、さらに「回廊」へと発展させようとする「北前船コリドール構想」が北前船フォーラムの根底にある。

 地域間交流拡大をより強力に推し進め、地域活性化や訪日外国人客の誘客拡大を目指し、第1回は2007年に山形県酒田市で開催。地元実行委員会が主催し、北前船交流拡大機構が協力している。20年1月から地域連携を進めるために、同機構の兄弟法人として、地域連携研究所が設立された。22年10月に発足式を開き、地域連携研究所大会を北前船フォーラムと併催してきた。

 11月21日(金)に開催された第36回北前船フォーラムin信州まつもとの主催者を代表して、関昇一郎長野県副知事は「長野県は塩の道でさまざまな地域とつながり、発展してきた。全国の皆様と北前船の歴史的なつながり生かして、日本全体の発展につなげたい」と決意を述べた。

関昇一郎副知事

 長野県松本市長の臥雲義尚実行委員会会長は、「塩の道は長野県の発展を支え、歴史を紡いできた。北前船の歴史を活用し、地方自治体や観光事業者の皆様と地方都市の将来を考える時間にしたい」と語った。

臥雲義尚市長

 さらに、ANA総合研究所副社長の森健明北前船交流拡大機構理事長代行と、日本航空(JAL)執行役員の西原口香織北前船交流拡大機構副会長、北前船日本遺産推進協議会を代表して菅原広二秋田県男鹿市長と坂口茂石川県輪島市長らが登壇した。

 その後、同機構と同研究所の浅見茂専務理事が参加者を壇上で紹介した。

 来賓として、日本旅行の吉田圭吾社長と、観光庁の長﨑敏志観光地域振興部長があいさつした。

 基調講演には、近畿大学名誉教授の胡桃沢勘司氏が「寄港地から内陸へ」をテーマに据え、北前船寄港地と内陸地帯を結んだ塩の道の実態を解説。信州の面積は広いことから、北部は日本海側の寄港地から千国街道や北国街道を通じて、南部は太平洋側の寄港地から甲州街道と中山道を通って、それぞれ塩が運ばれたことを説明した。

 次に登壇したANA総合研究所の㓛刀秀記会長は「地域の古代史(歴史)で日本各地をつなげよう」と題し、登壇。冒頭、「日本各地には、古墳など古代史に関わる観光資源が多くあり、街道や水路で密接につながっていた。古代史の活用による相互の紹介や往来で、地域同士が連携できる」と語った。

㓛刀秀記会長

 この事例として、3地域の具体例を紹介。このうち、長野県・安曇野の語源である安曇族は古来、志賀海神社(福岡県福岡市)を拠点としていた。安曇野市にある穂高神社は志賀海神社と親子関係にあり、穂高神社の関係者が20年ごとの式年遷宮などの節目に志賀海神社に訪問するため、安曇野市は福岡市東区と友好交流都市となり、市民交流も毎年行われる。

 最後に「地域の物語を大切にするインバウンドを長期間引き寄せることもできる。皆様と古代史で地域を活性化したい」とまとめた。

 続いて、国土交通省総合政策局の星明彦モビリティサービス推進課長が「しなのの国から~懐かしくて新しい世界をつくる~」をテーマに登壇した。星課長は「東北と近江を結ぶ東山道は最初に近江から松本まで整備された。これは当時の王朝である大和王朝は松本を重要視していたことを示す」と紹介。さらに江戸時代の松本について、「近江商人が東山道を利用して日本各地に物を運び、自らの土地の技と組み合わせた技術革新も行っていた」と説明した。

星明彦課長

 このため、「信濃の地域は日本の要であり、経済的に発展した豊かな場所だった。また、ヨーロッパ諸国以上の高付加価値化社会を実現する社会も生まれていた」と地方同士がつながり、栄えていたことを説明した。これらを踏まえ、「信州の人が世界をリードしたことを誇りに、私も地域振興に力を尽くしていきたい。地方と地方をつなぎ、地方から世界へつなぎ、地方活性化を目指しましょう」と呼び掛けた。

 「伝統工芸品と食の海外展開」では、初めに高橋邦芳新潟県村上市長が伝統的工芸品のさらなる振興を目指すため、26年1月下旬に発足を予定している北前船伝統的工芸品ネットワークの設立趣旨や活動方針を説明した。

 前EU日本政府代表部参事官で財務省大臣官房の二宮悦郎企画官と奥井海生堂の奥井隆社長は、海外への好事例を踏まえた販路開拓を提言した。

 跡見学園女子大学の篠原靖准教授は、北前船交流拡大機構が伝統的工芸品の販路拡大に取り組んできたことを説明。こうしたなか、北前船寄港地フォーラムに数多く出席してきた前財務副大臣で横山信一参議院議員が、高市早苗首相に販路拡大や事業継承を応援してほしいと要望すると、高市首相は「伝統的工芸品などの地場産業の付加価値向上や販路拡大を強力に進めていく」と回答したという。

 これを受けて、篠原准教授は「北前船交流拡大機構が積み上げたことは、国を挙げて動き出すこととなる。具体的な成功例を共有する北前船伝統的工芸品ネットワークも発足することで、新たな活動へステップアップする。新しい目標として、地域をさらに発展させてほしい」と語った。

齋藤元経産相も出席 レセプションを開く

 北前船フォーラムの終了後には、レセプションも開催され、昆布カットセレモニーからスタートした。

 主催者あいさつで、実行委員会特別顧問の阿部守一長野県知事が「長野県は北前船の恩恵を受けて発展した。今後も皆様の地域と協力をしながら、地域振興に取り組んでいきたい。レセプションを新たな連携に向けた絆を築く場にしてほしい」と語った。

阿部守一知事

 臥雲松本市長も主催者を代表して登壇した。開会あいさつは、東日本旅客鉄道(JR東日本)常務で北前船交流拡大機構の中川晴美副会長が行った。

 来賓として、元経済産業大臣の齋藤健衆議院議員が「地域振興に、物流が重要であることに気づかされた。これに改めて着目する場にしてほしい」と話した。

齋藤健衆議院議員

 横山信一参議院議員は「皆様の知恵をいただき、一層地域が活性化するよう、今後も最大限努力していきたい」と語った。

横山信一参議院議員

 浮島智子衆議院議員は「毎回北前船寄港地フォーラムに参加してきた。回を重ねるごとに団結が強まっている。皆様と日本各地の魅力を発信できるように頑張っていきたい」と抱負を述べた。

浮島智子衆議院議員

 また、SGCの土屋豊会長が大会記念オブジェ「黄金のミロのヴィーナス」を披露。続いて特別ゲストとして長野五輪金メダルリストの清水宏保さんが登壇した。
 乾杯のあいさつは、北前船交流拡大機構の岩村敬会長が行った。参加者を代表して、前ハンガリー大使で、TDK戦略本部広報グループのパラノビチ・ノルバート氏が登壇した。

 次回は10月29~31日、新潟県新潟市を予定している。鈴木康之新潟県副知事は「村上から糸魚川までの海岸線は約300㌔で、寄港地も多くある。各地の大変特色のある、おもてなしで迎える」と呼び掛けた。

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