【第36回北前船フォーラムin信州まつもと ~初の内陸開催 「塩の道」で地域連携を一層拡大~】第7回地域連携研究所大会 地方を観光でつなぎ日本元気に
2025年12月25日(木) 配信

地域連携研究所(理事長=濵田健一郎・元ANA総合研究所会長)は北前船交流拡大機構の実績や信用を北前船に限定せず、広く地域の連携を果たすことを目的に設立された。従来の大都市と地方の関係で地方振興をはかるのではなく、地方の地域同士が連携し、地域の活力を生み出すことを軸に活動している。11月22日の大会における主催者あいさつで、前秋田県大館市長で衆議院議員の福原淳嗣自治体会員会長は「地方の多様性は国力の源泉。地域を観光でつなぎ、日本を元気にしたい」と語った。

地域連携研究所は2021年1月に、北前船交流拡大機構の兄弟法人として設立され、北前船寄港地フォーラムとの併催で全国大会を実施してきた。
大会は浅見茂専務理事による参加者紹介で始まった。歓迎のあいさつは、関昇一郎副知事が行った。岡山県岡山市長の大森雅夫自治体会員共同会長と観光庁元長官の田端浩特別顧問が主催者として、あいさつに立った。
第1部では、横山信一参議院議員やANA総合研究所副社長の森健明北前船交流拡大機構理事長代行、前EU日本政府代表部参事官で財務省大臣官房の二宮悦郎企画官がそれぞれの立場から、地方創生に向けた伝統工芸品の活用について、持論を展開した。
第2部の特別公演では、はじめに参議院議員の齋藤健氏が「日本の農作物の品質は世界と比較して優れている。日本の農家が海外に目を向ければ、農業が地方創生に資する」とした。一方、「農家が外国へ営業することはできない。セールスを行う仕組みが必要」と課題を提起し、解決に向けた連携を呼び掛けた。
続いて、角川文化財団名誉会長の角川歴彦氏と「Rocket Base LLC」CEOの水野寛氏が「アニメーション産業の現在地と地域社会への展開可能性」をテーマに講演を行った。

角川氏は「多くの市町村で制作されたゆるキャラは、日本的なキャラクターで地域の魅力を表現している。今年5月に開催する日中アニメ映画祭では、初心者から上級者まで幅広い層を対象に、ゆるキャラを活用したアニメを募集し、表彰する」と地域振興に向けた取り組みを説明した。
水野氏は「伝統的工芸品や古代史の魅力をアニメで伝えることができれば、若い世代や世界へ発信できる」とアニメの可能性に言及した。
その後、ビズリーチ創業者であり、ビジョナル社長で八ヶ岳農業大学校理事長の南壮一郎氏は「八ヶ岳農業大学校の再建」をテーマに登壇した。同校が破綻状態にあった昨年に理事長に就任したことを説明。自身がカナダで育った経験などを踏まえ、「日本の農業や自然資源は過小評価されている。価値あるものは世界各地で評価される」とした。そのうえで、「農業と地方には未来がある。ロールモデルを示し、発信したい」と意気込みを述べた。
基調講演では、国土交通省関東地方整備局局長の藤田礼子氏が同省で推進する東京都や埼玉県、群馬県、長野県、新潟県などと連携し、観光振興をはかる「江戸街道プロジェクト」について、「街道は文化をつなぐ物語の軸で、多様な観光資源を一体的に束ねることができ、世界へも競争力を発揮できる」と語った。
会員の募集も行われた。内閣府の出口岳人地方創生支援官が「北前船ネットワークによって全国の自治体・企業を結ぶ稀有なプラットフォームに成長した。地域の文化資源を国内外へ流通させるには、継続的な連携強化が欠かせない。会員制度は、地方創生に貢献できる」と述べた。
□エクスカーション開催 塩の道の現状を視察
北前船フォーラムと同大会に先立って11月20日(木)~21日(金)には、塩の道の現状について理解を深めるエクスカーションが実施された。コースはA~Dの4コースに分かれ、Aコースは千国街道、Bコースは中山道、Cコースは北国街道、Dコースは甲州街道を巡った。
このうち、Cコースは長野市にある善光寺や須坂市の重要伝統的建造物群保存地区、千曲市の田毎の月/棚田などを視察した。20日には信州の湯清風園(千曲市・戸倉上山田温泉)で前夜祭が開催された。
主催者を代表して、新田恭士長野県副知事は「北国街道は信州から新潟県・上越につながっていた。街道沿いは北前船で塩が運ばれ、発展した。長野県の魅力を1つでも多く知ってほしい」と呼び掛けた。

日本航空(JAL)執行役員の西原口香織北前船交流拡大機構副会長は「知と美に触れ、各地で温かいもてなしを受けた。地域の魅力を海外に発信して双方向交流を進めたい」と語った。

エクスカーションを終えて、観光庁元長官の田端浩特別顧問は北前船が初めて内陸で開催されることに触れ、「北前船と信州との歴史的なつながりを深く理解できた。この歴史を現代でも生かした連携強化で、地方が活性化することを期待している」と述べた。







