【同行取材】佐藤工業、インフラツアー事業化へ ”公共事業の意義”を楽しく学ぶ
2025年11月11日(火) 配信

総合建設会社の佐藤工業(平間宏社長、東京都中央区)は10月30日(木)、土木技術者の案内で栃木県日光市の五十里ダムや川治ダムなどを巡るファムトリップを実施した。同社の企画「土木技術者の知見を活かしたインフラツアーで鬼怒川上流ダム群を観光資源化し、地域の魅力向上を図る事業」が観光庁の「地域観光魅力向上事業」に採択されたことを受けての試み。同ツアーに同行取材した。
公共投資が減るなか、多くの人にインフラの整備や維持、管理の必要性を楽しみながら旅行を通じて深く理解してもらおうと、 佐藤工業は社内にインフラツーリズム事業化研究会を発足。同会のメンバーが国内旅行業務取扱管理者の資格を取得するなど、事業化を進めている。こうしたなか、今回は旅行会社やメディアなど約20人を招待し、インフラツアーの催行に向けた課題の抽出や、収益化に向けブラッシュアップが狙い。
ツアーの冒頭には30年以上、土木事業本部で現場を担当してきた岩橋公男ゼネラルマネージャーが国内にあるダムの種類や目的などを説明。日本では、主に重力式コンクリートダムとアーチダム、ロックフィルダム、アースダムの4種類の型式が採用されている。目的は、洪水調節や河川の正常な流れの維持、農業用水、上水道、発電、渇水対策など。
初めに訪れた五十里ダムは、重力式コンクリートダム。ダムの重さで水をせき止めている。洪水調節と河川の正常な流れの維持、発電を目的としている。1956年に完成し、高さは112㍍で、工事完了時は日本一だった。
現地では、ダムを管理する国土交通省鬼怒川ダム統合管理事務所の伏見一徳課長がガイドを担当した。雨量によって川の水量を調節していることや、下流域のアユに最適な水温となるよう放流水温を管理し、生息環境の向上をはかっていることなどダムの役割を説明した。
続いて、参加者は伏見課長の案内で川治ダムも見学。同ダムは洪水調節、河川の正常な流れの維持、農業、上水道、工業用水の確保のために建てられたアーチ式で、ダムの両側の岩盤で水圧を支えている。重力式と比べて少ないコンクリートで建設することができ、ダムの厚さは薄くなる。このため、重力式ダムなどはダム本体の内部に点検用通路が設けられているなか、川治ダムは外部に張り出す形で地面から30㍍、60㍍、90㍍の高さに、管理用通路「キャットウォーク」が設置されている。

参加者はダムの概要について説明を受けたあと、ヘルメットを装着し、非公開のキャットウォークを歩いた。高さ60㍍にある格子状の床版から下を覗き込むと足が竦んだ。上を見上げるとダムの迫力に圧倒された。
昼食は川治ダム資料館で、同ダムを再現したダムカレーが提供された。
その後、見学した両ダムの下流域を流れる各河川が合流する場所にある川治温泉を、日光市観光協会の案内で散策。温泉街の中心を流れる男鹿川沿いには、足湯や川を泳ぐ魚を見ることができる遊歩道が整備されている。また、2つの川が合わさることから、出会いや縁結びの願いを込め、各河川の石を抱き合わせた道祖神を設置している。

最後に、川治温泉街にある「祝い宿 寿庵」で、参加者と佐藤工業がファムトリップの課題や今後の改善策について話し合う意見交換会が開催された。
佐藤工業は11月10日(月)と17日(月)にもモニターツアを実施し、今後収益を得ることができるツアーの造成に向けて、一層磨き上げを行っていく。






