2025年11月28日(金)配信

全国運輸環境協会(竹島美香子会長、東京都新宿区)はこのほど、東京都千代田区の衆議院第二議員会館で、バス業界の在り方をともに考える機会として、国土交通省、経済産業省の担当官と意見交換を行う国会セミナーを開いた。会発足から10年を超え、国会セミナーは今回で7回目。今回は安全対策や人手不足への対応、運賃制度の見直しなど、山積する課題の解決に向けた意見交換を通じて、参加者はバス事業の切迫した現場の声を届けた。

冒頭、竹島会長は「地域のバスを維持していくためには、関係省庁との連携が非常に重要。本日のセミナーで業界の現状や課題を率直に伝えさせていただき、政策立案などに生かしていただければありがたい。今後も、官民が一体となって解決策を模索する重要な機会としていきたい」と述べた。
同協会の名誉顧問を務める柴山昌彦衆議院議員は「安全を守り、多様な人材がしっかりと業界で活躍できる環境を整えていく観点でこれまで開催してきた」とセミナーの趣旨を説明。関係省庁と連携をとって、インバウンド対策や最新機材の導入、人材不足対策など、安全確保に向けた課題解決を支援していきたい考えを訴えた。

第1部の意見交換会では、国土交通省物流・自動車局旅客課と都市局都市計画課、経済産業省地域経済産業政策課の各担当官が出席。バス事業に関する運行管理や人員体制、安全対策制度、人材不足対策などに関する質問や相談に答えた。
最初に、運行管理者や点呼執行者、運転士の他事業者間での協力・貸出の法令上の可否、条件、手続きを明確化した。運行管理業務は2024年度から同一事業者内で一元化が実施可能となり、事業者を跨ぐ一元化まで視野に入れた検討を進めている意向を示した。一方、運転士はそれぞれの事業者で雇用・専任する必要があると回答した。
点呼について、対面による点呼と同等の効果を有する遠隔点呼や、業務前後の自動点呼の制度を新たに規定。自動点呼機器の業務前の機器認定は25年8月から始まり、認定を受けた自動点呼機器は、国交省の「運行管理高度化ワーキンググループ」ページに一覧で案内していると紹介した。
安全対策・制度活用に関しては、安全原価計算と下限運賃制度、貸切バス安全評価制度の評価基準強化、ASV(先進安全自動車)や後付安全装置の設置に対する補助金制度の検討状況などの質問が挙がった。
第2部では、国土交通省の物流・自動車安全政策課の担当官が出席。会員からバス事業の安全向上政策に関する質問や、現場の実情を訴えた。
国交省が25年度までを計画期間とする「事業用自動車総合安全プラン2025」のバス分野において、25年の目標達成状況や経過、次期計画の見通しを確認。このほか、車線逸脱警報や前方衝突警報などの後付け可能な装置の普及策や考え方、ASVの定義・評価課題を聞き、現行ガイドラインの更新を要望した。
要望では、後付け「前方車両衝突防止警報装置」の特定ASV指定の追加や、「貸切バス安全性評価認定制度」における後付ASVを含む正当な評価の要望が行われ、国交省側は受け止めた。