test

HIS、日本産の「食」 世界へ 商社事業開始 売上げ8千億円目指す

2019年11月1日
編集部:平綿 裕一

2019年11月1日(金) 配信

10月31日に開かれた締結式のようす。(左から3番目)澤田会長兼社長と(同4番目)鈴木知事

 エイチ・アイ・エス(HIS)は国内の農林水産物などを、世界の食市場に売り込む新たな商社事業を始めた。HISが持つ海外約270拠点を生かし、現地国での販路開拓や拡大、販売などを進める。

 第一歩として10月31日、三重県と「食の海外展開に係る戦略的連携協定」を結んだ。同県の「茶」をアゼルバイジャンの大手製菓メーカーが作る抹茶チョコレートの原料用に輸出する。初年度の売り上げは8千億円を目指す。

 世界の食関連市場は伸びている。農林水産省によると、世界の飲食料市場規模は2015年に890兆円だったが、30年に1・5倍の1360兆円になるという。海外における日本食レストラン数は10年から17年までで、3・8倍に伸びた。日本食への関心も高まっている。

 「我われにとっても大きなビジネスチャンス」。HISの澤田秀雄会長兼社長は同日に開かれた会見で、取り組みに期待を込めた。「日本の素晴らしい食材を、全世界に送れるようにしたい」――。1年目は3品目を3カ国に、5年後には10品目、30カ国に売り出す見通し。

 まずは三重県との連携に力を入れる。「伊勢茶」と「みかん」を戦略商材に設定。共通のロゴマークも策定し、海外でのブランド力向上もはかる。

三重県産のお茶

 茶に関してはすでに販路がある。アゼルバイジャンで100%日本産抹茶チョコレートを製造。ロシア・CIS諸国、トルコなど10数カ国に転送販売していく。健康食品などを扱う現地メーカーでは、日本茶の商品が売り出される。

 みかんは、今後、「みかんの木グローバルオーナー制度」を計画している。海外の個人・法人向けに、収穫される果実やその加工品を提供する。制度により、一定の収穫量に対して売り上げを保証し、みかん農園を支援していく。

三重県産のみかん

 鈴木英敬三重県知事は会見で、「お茶とみかんは県で輸出に取り組んでいる重要品目になる。産地の人々も意欲をもって挑戦している。(HISの)現地のネットワークによって、スピード感を持って量的にも拡大できる」と語った。

 一方、HISが取り組むのは世界の食市場に日本産の食材を売り込むためだけではない。

 国内の農林水産物の生産や加工、販売体制は現状、構造上の課題がある。生産人口の高齢化や減少が進んでいるが、根っこの流通システムは「国内向け」に偏っているという。

 輸出先の求める規模での生産や価格設定を行うことが難しい状況にある。そもそもグローバル展開に関するノウハウを持つ担い手が不足している。

 HISでは、本業の旅行業で培った独自のネットワークを世界各地で確立している。世界69カ国164都市264拠点(31日時点)の海外店舗網があり、現地のレストランやホテルなどはもちろん、さまざまな業種との接点がある。

 これら独自のネットワークを生かし、販路開拓や営業、ニーズ調査、マーケティング、販売などを担っていく。世界市場を見据えた国内の生産・加工・出荷を可能にすることで、現行のシステムを変えていく狙い。「腕の見せどころ」(HIS)。

 このほか、輸出国などで食から日本自体に興味を持った人に対し、訪日旅行ツアーを提供するなど、循環的な仕組みづくりも進めていく。

いいね・フォローして最新記事をチェック

コメント受付中
この記事への意見や感想をどうぞ!

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE
TOP

旅行新聞ホームページ掲載の記事・写真などのコンテンツ、出版物等の著作物の無断転載を禁じます。