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“多頻度昼行路線守れ”、新制度の活用法など紹介(高速バス・マネジメント・フォーラム2012)

2012年11月21日
編集部
成定竜一代表
成定竜一代表

変化対応で選ばれるバスに

 高速バスマーケティング研究所(成定竜一代表)は10月24日、東京都内で「高速バス・マネジメント・フォーラム2012」を開き、国土交通省が4月の高速ツアーバス事故を受け移行期間を短縮した、高速乗合バスと高速ツアーバスを一本化する「新高速乗合バス」制度の活用法などを紹介した。そのなかで成定氏は「地方、多頻度昼行路線をどう守るか」とし、変化に対応して選ばれるバスになる重要性を説いた。

【飯塚 小牧】

 

 

フォーラムの全体風景
フォーラムの全体風景

 同フォーラムは、高速バスマーケティング研究所が既存の高速乗合バスを対象に昨年から開催しているが、今回は全国の会社から153人が参加。昨年の81人と比較すると約2倍の参加となり、関心の高さが窺われた。

 成定代表は冒頭のあいさつで、4月の高速ツアーバスの事故に触れ、自身が高速ツアーバス連絡協議会の顧問を務めていることから「今でもあの事故がなぜ防げなかったのか、考えてしまう」と心境を語る一方で、「事故から得たものを再発防止や業界の成長に活用しきらなければならない」と強い決意も表明した。

国交省・小熊氏
国交省・小熊氏

 フォーラムは導入として、国土交通省自動車局旅客課バス産業活性化対策室長の小熊弘明氏が、事故後の安全対策や新制度について語った。小熊氏は事故後の国交省の対応として、旅行会社と貸切バス事業者間の書面取引の義務化や、消費者からの情報を受ける「高速ツアーバスの安全通報窓口」の設置などを報告。今後は、今年3月まで開いていた「バス事業のあり方検討会」の再設置や各種安全対策の検討会の設置などを講じることを紹介した。

 新制度については、事故以前に設置した「バス事業のあり方検討会」で協議した結果、両者を一本化する「新高速乗合バス」制度を導入するに至った経緯を語り、事故が起きたことで、移行期限を来年7月末と大幅に前倒ししたことを説明した。会場に集まった既存の高速乗合バス事業者にとっては、運行計画や運賃・料金の事前届出期間が短縮されるなど優位な点も示しながら、「ビジネスチャンスを広げる機会だと捉えてほしい」と理解を求めた。現在、停留所を持たない高速ツアーバスにも停留所が義務づけられることに関しては「本来は事業者が独自で取得するものだが、社会的問題として行政が関与して環境整備をしていきたい」と述べた。

 本題のマネージメントについては、成定氏が持論を展開。成定氏によると高速バスの成長フェーズは、高速ツアーバスの登場などで現在、第3フェーズの「バスを選んで乗る時代」にあり、大都市間路線では既に定着し、都市と地方を結ぶ夜行路線にも着実に進展しているという。その波は高速乗合バスの“本丸”である地方向けの多頻度昼行路線にも押し寄せるとし、「従来のまま生きた化石になってしまうのか、その変化に大きく対応していくのか問われている。勇気を持って変革を」と語気を強めた。

 今後の変化としては、「ポスト4・29」を提示。「事故の背景に、旅行会社が搾取しているため安全にお金が回らないという声があるが、それは間違い。コスト削減圧力や販売側に力があるのはどの業界でも同じだ。だからといって他の業界は生産側が小売店に不良品や腐ったものを納品することはない」と言及。そのうえで、バス業界の特殊性として規制産業で同基準だったものが、規制緩和で「松竹梅」が出てきたことをあげ、「目に見える品質は高速ツアーバスを中心にウェブ活用で差異化に成功し、がんばっている会社が利益をあげるサイクルができたのに対し、安全という目に見えない品質は誰も手を付けてこなかった。最低限の法令遵守以上にがんばった会社が報われないのが問題」と語った。しかし今後は「安全が選ばれる基準になる。当たり前に行っていることでよいので、画像と数字と固有名詞で具体的に、なぜそうなのかを利用者に明確にすることが必要だ」と、ウェブを活用した安全の可視化を訴えた。

 また、新制度移行にともない「高速バス・ビッグバン」が訪れると主張。現在の高速ツアーバスとの競争だけではなく、既存業者間の競争も激化するとし、「共同運行の関係はいい意味でお互いにプレッシャーを掛けあう関係になっていかなければならない。既存の関係性の再構築が求められている」と述べた。

 このほかフォーラムには全国に先駆けて多頻度昼行路線で高速ツアーバスと激しい競争を経験した、宮崎交通のバス事業本部乗合部乗合業務課・田代景三課長が事例紹介として登壇。ツアーバスとの底のない価格競争の経緯などを紹介した。一方で、「ツアーバスを追いかけてばかりでお客様を見ていなかった。今後は、お客様を見て、より魅力ある商品を展開したい」と本音を語り、会場の同業者から大きな拍手を集めた。

 また、京王電鉄バスによる基幹システムの紹介や、来年から高速乗合バスサービスを展開するリクルートライフスタイルの「じゃらんnet」など各事業者からの事業紹介も行われた。

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