【FIXER・松岡社長に聞く】市民の相談に注力を 文書作成はAIで効率化
2025年12月26日(金) 配信

2009年創業のIT企業、FIXER(松岡清一社長、東京都港区)は23年に、生成AIのプラットフォーム 「GaiXer(ガイザー)」を開発した。中央官庁はじめ地方自治体、金融、医療機関など実証実験を含め120以上の公的機関にサービスを提供し、業務効率化を推進してきた。松岡社長に話を聞いた。
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ガイザーは、急速に発展した「ChatGPT」や「Gemini」などの技術を活用した行政・医療・企業向けの生成AIサービスだ。複数の大規模言語モデル(LLM)の中から最適な一つを選択し質問することで、必要な回答を得られるのが特徴だ。
「ISMAP-LIU」の特別措置サービスリストに登録されており、政府のセキュリティ基準を満たすクラウドサービスとして評価されている。
松岡社長は同社がガイザーを開発した経緯について、「OpenAIの誕生で、爆発的にユーザーを獲得していくのを見て、それまで細々と取り組んでいたAI事業を中心事業に据えた。嫌な仕事はAIにやってもらい、人は自分の好きな仕事ができる社会を作りたいと考えた」と振り返る。
これが顕著なのは、行政の業務だ。自治体ではメール返信から議事録作成、発表資料など文書作成がとても多く、それに業務時間の大部分が費やされる。これをAIが担うことで、業務効率化がはかれ、生産性の向上が期待できる。ガイザーが最も得意とする作業でもある。

病院でも、医師の業務のなかでカルテや診断書など、文書作成が負担になっていることが多いという。松岡社長は「市民のため、また目の前の患者に向き合うなど、本来の業務に使える時間を生み出すことに貢献したい」と意気込む。
一番初めにガイザーを導入した自治体は、三重県伊賀市。同社は2015年に三重県の企業誘致第1号として、津市に開発拠点を設立しており、現在は津市と四日市市に事業所を構えるなど、三重県内の自治体とのつながりが強い。
伊賀市では実証実験から始まり、現在はさまざまな業務でガイザーを活用している。例えば、他部署の職員に連絡したい場合、以前は内線番号を探す手間があったが、ガイザーに名前を打ち込むだけで簡単に表示できるようになった。これは、ガイザーにその団体固有の情報をインプットすることで、そこから回答を引き出せる機能があるため。情報は外部からはアクセスできないようになっており、安全だ。
こうした簡単なデータサーチから、観光イベントの企画アイデアなど、幅広い活用ができる。今後はガイザーでの動画の作成も視野に入れる。利用する自治体の職員からは、「優秀なアシスタントがいる感覚」「強い武器を得た」など好評だ。
一方、松岡社長は「自治体が抱える課題の本質的な解決はできていない」と語る。「人口減少で職員の数も減っていくなかで、しっかり行政サービスを提供していくためにはまだ不十分だ」と捉えている。
文章作成はガイザーの得意とするところだが、100%ではないため、今後は一切修正せずに済むレベルまで、技術的進歩をしていかなければならない。また、ガイザー導入自治体のなかで、活用していない職員もいることから、利用率を上げることも課題だ。「垂直と水平の2つの方向へ広げていくことに愚直に取り組んでいく。この結果、パソコン作業がなくなり、市民のための相談やイベントなどに集中できる未来を作っていきたい」と展望する。
問い合わせはHP(https://www.gaixer.com/ja-jp/)へ。





