「観光革命」地球規模の構造的変化(288) 高市政権と観光立国
2025年11月5日(水) 配信
10月21日(火)の臨時国会で自民党の高市早苗総裁が首相に選出され、憲政史上初の女性首相が誕生した。日本が数多くの内憂外患を抱えるなかでの新政権の発足である。
高市政権は少数与党体制でのスタートであり、しかも26年間に亘って継続してきた自公連立体制に終止符を打ち、新たに日本維新の会による閣外協力という不安定な体制での船出になっている。高市首相は24日(金)に就任後初の所信表明演説を行い、物価高への対応に最優先で取り組むことを表明すると共に、数多くの国家的課題について新政権としての基本方針を表明した。
高市首相は所信表明演説で「地方の活力はすなわち日本の活力であることを、身をもって知っております」と述べ、地域未来戦略の推進を表明しているが、肝腎の「観光」への言及はたった1回限りで、しかも「人口政策・外国人対策」との関わりのみであった。
「人口減少に伴う人手不足の状況において外国人材を必要とする分野があることは事実です。インバウンド観光も重要です。しかし一部の外国人による違法行為やルールからの逸脱に対し、国民の皆様が不安や不公平を感じる状況が生じていることもまた事実です」と述べている。観光は少子高齢化に伴う地方創生で重要な役割を果たし得るが、高市首相は観光の負の側面を注視しているようだ。
自公連立政権(とくに安倍政権・菅政権)では自民党重鎮の二階俊博氏と菅義偉氏の主導の下で親中派の公明党選出の国土交通大臣が7代に亘ってインバウンド観光立国政策を強力に推進してきた。ところが観光振興に懐疑的かつ親中派ではない高市首相の登場で、従来通りの観光立国政策が安穏と継承されない可能性が高まっている。勿論、量的拡大志向や稼ぐ観光志向のインバウンド観光立国政策が一挙にストップされないにしても減速される可能性が大である。
世界が大混迷時代を迎え、日本がさまざまな内憂外患を抱える現状において、政府として観光立国の原点(住んでよし、訪れてよしの国づくり)に基づいて観光立国政策の抜本的見直しを行うと共に、地方でも政府の言いなりではなく、「地域の民産官学の賢明な協働」によってそれぞれの地域に最も相応しい観光振興の在り方を再検討すべき絶好の機会が到来している。


