旅行新聞 創刊50周年記念特集号 観光業界と共に歩み続ける
2025年10月1日(水) 配信

「旅行新聞」は今年、創刊50周年の節目を迎えた。今号は創刊50周年記念特集として、1面では、当社代表取締役社長の石井貞德が、本紙が産声を上げた1975年から観光業界の動きと合わせて、本紙の歴史を振り返る。さらに、これから100周年に向けた紙面や新たな事業展開を語る。2―3面には、本紙に支援いただいている主要観光団体や、海外の提携紙トップから寄せられた「創刊50周年メッセージ」を掲載している。
【本紙編集部】
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□創刊50周年を迎え
本紙「旅行新聞」は今年、1975(昭和50年)の創刊から50周年の大きな節目を迎えました。2002年6月に1000号、13年4月に1500号と発行を続け、観光業界と共に歩み続けて参りました。
半世紀にわたり新聞発行を継続できていることは、ひとえに観光業界に携わる方々の応援があってこその証と考えております。
読者の皆様には、改めて感謝申し上げます。
創刊した1975年は山陽新幹線(岡山―博多間)の開業、沖縄国際海洋博覧会の開幕、ベトナム戦争終結という世相のなかで、本紙は呱々の声を上げました。
「これからの時代は観光が主要な産業に成長し、専門紙の必要性が求められる」と、未来への期待と重い責務を感じながら、総合出版社「産報」(当時)の旅行専門紙「週刊旅行新聞」として第一歩を踏み出しました。
小生は創刊メンバーの一員として参画。翌年には新聞発行の周知をはかることを目的に、「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」事業をスタートしました。
その後、産報から事業を独立して「産報トラベルニュース社」に移管。本紙の発行も引き継ぎました。
旅行会社の投票によって国内の宿をランキング付けする「旅館100選」事業は開始当初、業界全体に十分認知されていないこともあり、全国の旅行会社に投票用紙を郵送してもなかなか投票が伸びない状況でした。宿泊施設からは「何を基準にランク付けするのか」という指摘もあり、苦労が多々ありました。
しかしながら、業界でタブーとされていたランク付けも回を重ねるうちに、「旅のプロ」である旅行会社の視点による評価が観光業界を超えて、広く認知されるようになりました。
79(昭和54)年、産報トラベルニュース社が解散し数人のスタッフと共に同年3月、旅行新聞新社を設立。月に3回発行する「旬刊旅行新聞」を創刊しました。
第2次石油危機の中での船出でしたが、前年に新東京国際空港(成田)が開港し、旅行熱が徐々に高まっていく時代の空気を感じながら、業界の課題解決に向けた方向性を示す記事や、旅行会社と宿泊・観光施設との橋渡し役となる紙面づくりに努めてきました。
「100選」事業も業界全体に注目をされるようになり、80(昭和55)年に「プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」(旧ドライブイン100選)がスタートしました。
82(昭和57)年には東北新幹線(大宮―盛岡)、上越新幹線(大宮―新潟)が開業し、国内旅行の隆盛とともに、本紙の役割も大きな広がりを見せてきました。
こうしたなか、87(昭和62)年に、当社の基礎を築いた加藤東二社長が逝去し、経営を担うことになりました。現場に長年携わってきましたが、経営となると別で、苦心惨憺の毎日でした。バブル景気を追い風に、社員の結束で乗りきることができました。
90(平成2)年の7月7日(七夕)には、女将のための、女将による、女将の会議「全国女将サミット」(全国旅館おかみの集い)を京都で初開催しました。おもてなしの文化を守り続けている全国の女将さんが一堂に集まり、互いに悩みや課題を語り合い、全国の旅館女将たちの交流の場として、30年以上の歴史を刻んでいます。
同年から「プロが選んだ日本のホテル旅館100選」書籍を発行。書店販売で一般消費者からの関心が一層高まり、宿泊観光業界の地位向上に大きく貢献してきたと自負しています。
92年に「プロが選ぶ優良観光バス30選」がスタート。03には「優良バスガイド」、04年には「もてなしの達人」など、観光業界の現場で活躍する個人表彰事業にも着手しました。
経営者だけではなく、“縁の下の力持ち”のスタッフにも光を当てることにも、観光業界専門紙の使命として注力してきました。
15年には、国際的にも注目が高まる「旅館100選」の商談会を台湾で開催しました。現地の旅行社を集めて日本の「旅館100選」を精力的にアピールし、「RYOKAN」のグローバル化にも寄与しています。
社会貢献事業にも取り組んでいます。12年からは、旅のユニバーサルデザイン(UD)の観点から、乳がんを罹患した患者さんにも「旅に出掛け、温泉の楽しさを知ってもらいたい」との想いを込めて、「ピンクリボンのお宿ネットワーク」を立ち上げました。今では「全国的な輪」として成長しています。
17年には「プロが選ぶ水上観光船30選」、令和に入り、コロナ禍の21年には「日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー」を創設しました。本紙の取材活動などを通じて見聞きした観光業界の取り組みの中から、創意工夫の見られるものを独自に選び、表彰するもので、その年の観光業界の動向を映す鏡としても年々注目度の高まりを感じています。
安心・安全で成り立っているのが観光産業ですが、これまでにも1989年の昭和天皇の崩御、95年阪神・淡路大震災、2011年東日本大震災、19年からの新型コロナウイルスによる感染症など、観光は自然災害に大きく左右されてきましたが、その度に大きな苦難も乗り越えてきました。
その間にも、急速な情報のグローバル化が進み、しっかりと対応するために、韓国や台湾、フランスの旅行専門紙誌をはじめ、国内外の企業・団体とも提携関係を強めてきました。
これら半世紀の間に培ってきたネットワークをさまざまなかたちで事業化し、協業に積極的に取り組み、「これまでにない」「これを待っていた」と言われるような事業を提案していきたいと考えています。
本紙「旅行新聞」を軸に、Web版での配信拡大、ユーチューブ「旅行新聞チャンネル」の開設など、複合的に、発信力をさらに強化していきます。
AI時代の本格的な到来を迎え、我われメディアを取り巻く環境も激変しています。このような激変期にあっても、本紙は精緻な取材による記事発信によって、観光業界の「信頼をさらに高めていくこと」が肝要だと考えています。
業界のオピニオン紙として、次なる50年先を目指し、これからも観光業界と共に歩み続けて参ります。
【本紙1961号または10月7日(金)以降日経テレコン21でもお読みいただけます。】






