奥出雲PR動画完成 映像作家・堀田氏が制作
2025年8月30日(土) 配信

著名アーティストのプロモーションビデオや企業CMの制作など第一線で活躍する映像作家・堀田明宏氏が今年5月、故郷の島根県・奥出雲町をPRする動画を完成させた。
同町では「たたら製鉄に由来する奥出雲の資源循環型農業」が2019年に中国地方で初めて「日本農業遺産」に認定され、現在は世界農業遺産認定を目指している。PR動画は、町の豊かな自然や美しい景観を発信しようと同町農業遺産推進協議会が企画し、堀田氏に制作を委ねた。
完成した動画は奥出雲の豊かな自然と、そこで暮らす人々の日常を切り取った26分の長編。稲作や和牛飼育、木炭生産、原木シイタケやソバ栽培、たたら製鉄の操業、たたらで栄えた櫻井家や絲原家の歴史的景観など、里山の営みと四季の移ろいが静かに、しかし力強く映し出される。
撮影は1年5カ月に及び、映像制作会社を構える東京と奥出雲を行き来しながら、季節を逃さぬよう撮影を続けた。ときに撮影許可の交渉から始まり、地域の人との距離を縮めることも重要な仕事だったという。堀田氏は「地元でも知らない場所がたくさんあった。撮影を通じて、町の豊かな地域性を改めて知ることができた」と振り返る。
奥出雲で生まれ育ち、高校まで過ごした。上京し青山学院大学経済学部を卒業後、映像作家の佐藤輝氏に師事し、1985年に独立した。以来、CMやミュージックビデオ、ドキュメンタリーなど幅広く手掛けてきた。
なかでも多くの仕事をともにした歌手・中島みゆきさんのヒット曲「地上の星」のプロモーションビデオ制作で注目を集めた。アイルランドやフランスを旅しながら撮影した現地の人々の表情や生活のようすが、中島さんの歌の世界観に鮮やかな奥行きを与えたのだ。
「この村の山の向こうに何があるのか」。幼少期に抱いた興味心や冒険心が堀田氏の創作の原点だ。「子供時代に奥出雲で遊んだ経験の一つひとつが、今でも映像の細部ににじみ出る。小さい生き物や虫、花に対する愛情みたいなものが根底にあるのだと思う」と語る。
近年は奥出雲で過ごす時間が長くなった。自宅近くにある3反の農地で米作りも行う。7月中旬には母校の小学校で講演し、自身の経験を語りながら好きなことを見つける大切さを子供たちに語りかけた。
堀田氏は「奥出雲の魅力は底知れず、とても1年半で撮り尽くせるものではない。今は奥出雲の神楽に惹かれている」と意欲を見せる。
【土橋 孝秀】






