「第16回辻静雄食文化賞」贈賞式開く 陳玉箴氏(外国語翻訳作品は初)、前田尚毅氏(サスエ前田魚店)が受賞
2025年8月20日(水) 配信
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辻静雄食文化財団(代表理事=辻芳樹・辻調グループ代表)は8月19日(火)、辻調理師専門学校東京(東京都小金井市)で第16回辻静雄食文化賞の贈賞式を開いた。
受賞作は、「『台湾菜』の文化史 国民料理の創造と変遷」(陳玉箴〈著〉、天神裕子〈訳〉、岩間一弘〈解説〉、三元社発刊)。
専門技術者賞には、サスエ前田魚店(静岡県焼津市)店主の前田尚毅氏が受賞した。
同賞は、よりよい「食」を目指し、新しい世界を築き上げる作品や人を顕彰するもので2010年に創設された。
主催者あいさつで、辻芳樹代表理事は「外国語の翻訳作品が受賞するのは初めてのこと。また、専門技術者賞では、生産者と料理人の間をつなぐ役割に光が当たった。優れた作品や仕事に刺激を受けて、日本の食文化がさらに豊かになることを期待している」とし、「この賞が地域や国を越えて、食べ物の魅力や問題をともに考え、再認識する機会になれば幸い」と、今後も顕彰事業に力を入れていく考えを示した。
受賞作「『台湾菜』の文化史 国民料理の創造と変遷」は、国家と個人の関係性を生活に密着した食から探るという大きな問題設定のもと、『台湾菜(台湾料理)』という概念が、ここ100年の間にいかに形成され、変遷してきたかを検証し、政治、文化、市場の担い手が及ぼした作用を多角的に解き明かした作品だ。
「国民料理という視点に立った類書はなく、台湾の食を重層的に描き出し、台湾の現代史への理解を深めるうえでも優れた手引きとなる」(選考講評)と高い評価を受けた。
著者の陳玉箴(ちん・ぎょくしん)氏は「台湾と日本は昔から深い関わりを持っている。台湾料理も、台湾の歴史が歩んできた道と同じように政治と複雑に絡み合っている。この本によって台湾の美食だけでなく、台湾の近現代史にも興味を持っていただければうれしい」と述べた。
専門技術者賞を受賞した前田尚毅氏は、魚店と飲食店のつながりはあったが、バトンリレーの第一走者である漁師とのつながりに奔走し、直談判してきた経験を振り返りながら、「第一次生産者の気持ちが変わると、食材が変わり、美味しくなる」と力を込めた。「この賞をいただいたことを漁師さんに伝えると、きっと喜んでくれると思う。これからも仲間を大事にして、今の『美味しい』を未来に残す活動を続けていきたい」と喜びを語った。

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