AI時代の旅館未来像を語る 万博でトークイベント開催 ブッキング・ドットコム・ジャパン
2025年5月23日(金) 配信

ブッキング・ドットコム・ジャパン(東京都渋谷区)は5月22日(木)、大阪府大阪市で開催中の「大阪・関西万博2025」のオランダ王国パビリオン内で、旅館の未来像をテーマにしたイベント「オーセンティックジャパン」を開いた。
パネルディスカッションでは、湯谷湾温泉ホテル楊貴館(山口県長門市)の岡藤明史取締役と、ホテルおかだ(神奈川県・箱根湯本温泉)の原洋平常務取締役営業部長が登壇し、AI時代における旅館の役割や地域との連携策などを議論した。

NECのITエンジニアを経て2009年に家業の旅館に入った原氏は「入社当時、弊社では全体の6割が団体旅行でオンライン予約は5%未満。海外のお客様は1%にも満たなかった。それが現在団体は2割に減り、国内のOTA経由が5割、ブッキング・ドットコムをはじめ海外OTAが15%になっている」と旅行予約のオンライン化とインバウンド需要の変化に言及。「日本のお客様は2食付き予約が74%だが、海外のお客様は30%に留まる」と予約形態の違いにも触れた。

岡藤氏は、現在求められるおもてなしについて、「今、何に困っているのかといった瞬間的なニーズを感じ取る力が必要だ。弊社スタッフにも海外の人が増えている。日本の文化を伝える仲間としてワンチームで取り組みを進めている」と述べた。
AIの活用方法について、原氏は「宿泊料金のダイナミックプライシング(変動料金制)や宿泊プランの出し入れの自動化に少しずつ取り組んでいる」と説明。さらに「箱根DMOでは2年前に、『箱根デジタルマップ』を導入した。AIカメラによるタクシー混雑状況の可視化や8時間先までの道路渋滞予測などで周遊ルートの提案に役立てている」と先進事例を紹介した。
岡藤氏は「客室清掃など各オペレーションの部分でデジタルに置き換わっているが、AIはあくまで手段。インバウンドのお客様は宗教やアレルギーの面でより細やかな配慮が必要なこともあり、ヒューマンエラーを防ぐことが重要だ」と強調した。
旅館の未来像について、岡藤氏は「旅館は地域のショーケースであり、語り部にもなれる存在だ。山口県は日本酒で有名だが県内26蔵すべての酒が楽しめる日本酒バーを館内に開設した。1泊の物語をどのように紡いでいくかが鍵になる」と滞在体験の進化を目指す姿勢を見せた。
原氏も「1泊2食のスタイルの魅力をもう少し海外のお客様に伝えていきたい」と述べる一方、「人手不足の問題もあり旅館単体ではなく地域全体でのおもてなしが重要になる」と地域間でのデータ連携などに意欲を示した。