日本温泉協会、登別温泉で総会開く ”ユネスコ登録は温泉の保護と活用を訴える好機” 佐藤好億副会長「地熱乱開発には保険や補償も必要」
2025年7月2日(水) 配信

日本温泉協会(多田計介会長、1124会員)は6月24日(火)、北海道・登別温泉の「祝いの宿登別グランドホテル」で2025年度会員総会を開いた。
地熱の乱開発がないように、注視を継続していきながら、「温泉文化のユネスコ文化遺産登録は、日本の温泉の保護と活用を訴える好機」との考えから、活動を支援していくことを確認した。
多田会長は冒頭、コロナ禍で2度延期となった登別温泉での総会が今年実施できたことに対し、関係者に謝辞を述べた。続けて「学術部を有する当協会では、温泉保護の観点から地熱開発の乱開発がないように注視し、声を出して発信していく」と語った。一方、「全旅連をはじめ、当協会も日本の温泉文化をユネスコ文化遺産に登録する活動をしている。会員に周知し、活動をしっかりと支えていこう」と呼び掛けた。
前田眞治学術部委員長は「温泉の科学的、社会的、医学的学問などを通じて、温泉の正しい知識の普及に努めている。ユネスコ文化遺産登録に向けて、多くの学術部委員も参加し、力強く後押ししている」と述べた。
地熱対策特別委員会顧問の佐藤好億副会長は、全国各地で行われている地熱発電開発により、源泉の枯渇や温度低下などの影響が出ている状況を報告。「反対のための反対をする気持ちはない。しかし、万が一のことが起こったらどうするか。保険や補償対策も必要」と力を込め、モニタリング装置の必要性を改めて訴えた。
今年度も引き続き、①地熱開発は慎重に②日本の温泉文化をユネスコ文化遺産へ③世界各国の温泉関係者と交流促進――を事業の柱に据え活動していく。
温泉地への外国人旅行者が増加するなかで、10カ国語で掲載する「入浴エチケットポスター」の販売強化により、入湯客のマナー向上にも取り組む。
さらに、29年の創立100周年事業として記念誌の作成に着手するほか、天然温泉表示委員会では、100周年に向けて新看板制定を検討していく考えだ。
なお、26年度会員総会は、熊本県・南小国町の黒川温泉で開催することを決めた。

総会後には、温泉文化シンポジウムが開かれた。登別温泉取締役営業部長の大宮一哉氏、下呂温泉・水明館社長の瀧康洋氏、黒川温泉・ふもと旅館社長の松﨑郁洋氏が登壇し、それぞれの温泉地の取り組みを紹介した。コーディネーターは高崎商科大学特任教授の熊倉浩靖氏が務めた。
夕刻からは情報交換会が盛大に開かれた。