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「津田令子のにっぽん風土記(86)」ブックカフェで心地よい時間を~東京・千川編~

2022年6月19日(日) 配信

「BOOK CAFÉユーカリと尨」の店内
BOOK CAFÉユーカリと尨  井上喜尋オーナーと奥様の麗さん

 昨年9月にオープンした「BOOK CAFÉユーカリと尨」は、池袋駅から歩いて約20分、東京メトロ有楽町線と副都心線の千川駅からだと3~4分という閑静な住宅街の一角にある。店に入るとジャズが流れ、ゆったりとした心地よい空間が広がっている。

 

 店の名前は「尊敬する作家・藤枝静男の代名詞である「ユーカリ」と、妻はとにかく毛足の長いかわいい動物が大好きで、それを表す漢字一文字「尨」を、どちらかひとつにせず並べちゃった方が自分たちらしいかなと思い『ユーカリと尨』になりました」と井上喜尋さんは笑顔でおっしゃる。

 

 生まれは小田原に近い神奈川県足柄上郡開成町。「家の目の前を酒匂川が流れる静かなところ」と話す。生まれ育った風土が穏やかなお人柄に現れているような気がする。

 

 小田原市立かもめ図書館(公共図書館)を皮切りに、練馬区立練馬図書館など幾つかの図書館で司書として働き、司書への愛着が強かった井上さん。「一生図書館の仕事をする方法としてブックカフェという形態もあるよね」と奥様の麗さんと日常的に話していたという。店のある千川の印象を「生活の中で心地よい静けさを感じる時が多く、散歩しているとふと出会う住宅街の中のお社だけの小さな神社で初詣をしてみたり、いつも利用しているスーパーでお手ごろなスイカを買って食べたり、そうかと思えば大好きな作家の美術館(熊谷守一美術館)で刺激を受けたりと何気ない宝物がゴロゴロ転がっています」と語る。

 

 この地で店を開いたきっかけは、図書館勤務時代に知り合った麗さんとこの街で暮らすようになって10年が過ぎ、地元の盆踊りに熱心に参加したり、土地に愛着を持ち始めたころに、「いつかお店を開いたら盆踊りに出店を出店したい!」と2人で話をするようになっていた。

 

 「当時勤めていた出版業界での仕事が一段落つき、設備・資金面ほかブックカフェを開く準備が整ったタイミングが昨年9月だった」という。

 

 人に喜んでもらうのが好きだという井上さんは、「お店はできる限り長く続けたいです。何年も後に誰かが引き継ぐ形でも……。千川の休憩できる場所としてこの先ずっと残り続けてくれるといいなと思っています。店内の本とともにおいしいごはんを食べてもらって、その時間を楽しんでもらい、お客様に心を解してもらいたい」と話す、眼鏡の奥の優しい目が印象に残る。

 

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

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