JTB、「鬼滅の刃 湯めぐりの旅」 湯河原・伊香保で開催

2023年10月2日(月) 配信

「鬼滅の刃 湯めぐりの旅」キービジュアル

 JTB(山北栄二郎社長)はこのほど、「テレビアニメ『鬼滅の刃』刀鍛冶の里編」が全国の温泉街とコラボレーションする体験型イベント「鬼滅の刃 湯めぐりの旅」の開催を決めた。11月11日(土)~2024年2月12日(月・祝)まで、神奈川県・湯河原温泉、群馬県・伊香保温泉の2カ所で同時開催。旅行を楽しみながら、アニメ「鬼滅の刃」の世界観に没入できるコンテンツを幅広く展開する。

 イベントでは、スタンプを集めると温泉に入れる「入湯手形」や、現実世界に仮想世界の音が混ざり合う新感覚の音響体験を楽しめるアプリ「Locatone(ロケトーン)」を使用。物語を楽しめる音声スポットやフォトスポットを巡ることで、温泉街にアニメ「鬼滅の刃」の世界が広がる湯巡りを楽しめる。

 さらに、街中の装飾や、地元飲食店とのコラボメニュー、宿泊施設での特別プラン、特別なクラフト体験、オリジナルグッズストアなど、多種多様なコンテンツを温泉街全体で展開する。このほかの詳細については、「鬼滅の刃 湯めぐりの旅」公式サイトなどで順次発信していくという。

 なお、同イベントは、今後も国内の温泉街で開催する予定としている。

全国大会が終了へ フィナーレと感謝の会開く 地域伝統芸能活用センター

2023年10月2日(月) 配信

名誉総裁の高円宮妃久子殿下

 地域伝統芸能活用センター(中村徹会長)は9月9日(土)、東京プリンスホテルで、地域伝統芸能全国大会のフィナーレと感謝の会を高円宮妃久子殿下ご臨席のもとで開いた。

 同センターは、地域伝統芸能を活用した観光および地域商工業の振興をはかる目的で、30年にわたり「地域伝統芸能全国大会」と「顕彰事業」を実施してきたが、今年度で終了する。中村会長は、「全国大会が地域の発展に貢献したと自負している」とし、両事業への理解と協力に感謝を表した。

 名誉総裁でもある高円宮妃殿下は「1993年に石川大会が開催されて以来、途中コロナ感染症などで中止が余儀なくされましたが、毎回参加し各地域の芸能を楽しく拝見し、幸せを感じました。これからも、多くの人々に伝統文化が受け継がれていくことを願っております」と語った。

 来賓として、髙橋一郎観光庁長官と森田健太郎経済産業省商務サービス政策統括調整官が出席し、祝辞を述べた。

 これまでの功績に対し三隅治雄氏(元日本伝統工芸センター顕彰事業選考委員長)と星野紘氏(同)に中村徹会長から感謝状が、高円宮妃殿下より記念メダルが授与された。また、中村会長と棚橋祐治副会長に高円宮妃殿下から記念メダルが授与された。

 式典に先立ち、過去に受章した「銚子はね太鼓」(銚子はね太鼓保存会)、「鶴見の田祭り」(鶴見田祭り保存会)、鷺流狂言清水(山口鷺流狂言保存会)、「香川良子の篠笛演奏と寿獅子舞・香川社中」(香川良子と香川社中)、「奄美の島唄」(川畑さおり)、「阿波おどり」(東京高円寺阿波おどり振興協会)が記念公演を行い、フィナーレに彩りを添えた。

クラブツーリズム、Xアカウント開設 米沢牛が当たるCPも

2023年10月2日(月) 配信

応募期間は10月1日(日)~31日(火)まで

 クラブツーリズム(酒井博社長、東京都江東区)は10月1日(日)~31日(火)まで、X(旧ツイッター)公式アカウントの開設を記念したプレゼントキャンペーンを行っている。20~40代に広く利用されているX公式アカウントの開設により、サービスの認知向上を目指す。

 CP期間中、クラブツーリズムX公式アカウント(@ct_official_jp)をフォローし、CP投稿をリポストした人から抽選で21人に賞品が当たる。賞品は、A賞の「米沢牛焼肉360㌘食べ比べセット」が1人、B賞の「クラブツーリズムの旅行予約に使えるWebクーポン1万円分」が20人。抽選結果は、当選者にのみ11月15日(水)までにDMで連絡が送られる。

 詳細はクラブツーリズムのWebサイトから。

【特集No.644】「北前船寄港地フォーラム」in岡山に向けて 新時代の地域間交流・連携探る

2023年10月2日(月) 配信

 江戸、明治期に日本の交易を担った「北前船」の歴史を紐解き、新しい地域間連携のあり方を探ろうと「北前船交流拡大機構」(濵田健一郎理事長)は今年10月5―6日、岡山県岡山市で「第33回北前船寄港地フォーラム」を開催する。開催地を代表して岡山市長の大森雅夫氏、同フォーラム実行委員会会長の松田久氏(岡山商工会議所会頭)、秋田県大館市長の福原淳嗣氏が国内外の地域間交流の拡大などを語り合った。司会は内閣府地域活性化伝道師で地域連携、インバウンド戦略などが専門の跡見学園女子大学准教授の篠原靖氏が務めた。

【増田 剛】

 ――10月5―6日に、岡山市など5市で「第33回北前船寄港地フォーラム」が開催されます。

 大森:北前船は江戸時代から明治20―30年代まで、北海道、東北、北陸、瀬戸内、関西、九州などの地域を重要な物流ネットワークとして立派な経済圏を作っていました。こうして栄えてきた各寄港地を「点」から「面」に、そして、“回廊”としてつなげていこうという「コリドール構想」が、北前船交流拡大機構の根底にあります。
 第1回北前船寄港地フォーラムは2007年11月に山形県酒田市で開かれ、今回で33回目を迎えます。実は20回目となる17年7月に、岡山市は瀬戸内市、倉敷市、玉野市とともに同フォーラムを開催しています。
 そのときのノウハウを生かしながら、国内外を含めた「地域間交流の拡大につながる場」にしたいと考えています。
 テーマは「北前船と吉備の穴海~海と川が織りなした文化・産業~晴れの国・岡山から世界へ」。日本全国、海外からも計700人規模の参加者を予定しています。
 近年は広く活動が評価され、2年前に地域連携研究所が発足しました。寄港地ではない各自治体にも入会を呼び掛けており、北前船寄港地フォーラムと併催というかたちで、第4回地域連携研究所大会も開かれます。岡山市としても、当地で開催できることは名誉なことでありますし、大変意義深いイベントだと感じています。

 ――実行委員会会長を務められる、岡山商工会議所の松田会頭はどのように捉えていますか。

 松田:今回のフォーラムの大きな特徴は、岡山市をはじめ、瀬戸内海に面する倉敷市、玉野市、備前市、瀬戸内市の5市が初の試みとなる「分散型」で分科会を実施することです。
 それぞれの異なる文化や産業を紹介しながら、全国から参加される方々との交流と比較文化を通じて、各地域での観光振興のヒントを得ていただきたいと考えています。
 18年5月の中国・大連に続き、昨年10月には、フランス・パリで「日本の食文化を世界に」をテーマにフォーラムを開き、国際的なアピールに向けて大きく前進しました。
 この成果をさらに高めていこうと、岡山大会ではEU(欧州連合)諸国の大使など約20人の外交官を招待しています。東京だけではなく日本各地の独特の文化を広く知っていただく絶好の機会と捉え、国際的な文化交流を推進していきたいと準備を進めています。

 ――2年前に地域連携研究所が発足し、自治体会員制度の共同会長に大館市の福原市長と岡山市の大森市長が務められています。会員数はどのくらいですか。

 福原:現在40を超える勢いです。自分たちの文化、風土を愛している全国各地の自治体にはぜひ入会していただければと思っています。
 1年半前の22年3月に、秋田市で開催したフォーラムで、地域連携研究所の発足式がありました。そのときに、岡山商工会議所の松田会頭が岡山県・矢掛町の「まちごとホテル」について講演されました。素晴らしい取り組みだと感銘を受け、我が大館市のまちづくりにも「まちごとホテル」の考え方が組み入れられました。こういった出会いやご縁は、北前船寄港地フォーラムがなければできなったことです。

 ――福原市長はパリでのフォーラムにも参加されました。パリでの印象は。

 福原:驚いたのは、パリも舟運でできたまちで、市庁舎もドックの場所に建てられているなど大変勉強になりました。
 「秋田犬と一緒に世界自然遺産白神山地を歩きたい」「北海道北東北の縄文遺跡群を歩いて周遊したい」など現地の生の声を聞くことができたのは大きな収穫でした。また、比内地鶏で作った鶏めしをパリで販売したところ大変好評で、「コース料理で食べたい」という感想も新鮮でした。大館曲げわっぱも「10万円、30万円で欲しい」など、自分たちの何気ない伝統文化や食文化も、フランス人にとってはとても価値を感じていただいていることに、誇りと確かな手ごたえを感じる機会になりました。

 ――北前船交流拡大機構の大きな特徴はJAL、ANA、JRなど大手の輸送機関や民間企業も数多く加盟されていることです。

 大森:大都市部から……

【全文は、本紙1916号または10月5日(木)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】

ホンダが電動推進船の実証実験 島根県松江市の堀川遊覧船と連携

2023年10月2日(月) 配信

電動推進機プロトタイプを搭載した遊覧船

 本田技研工業(三部敏宏社長、東京都港区、以下ホンダ)は、開発を進める小型船舶用の電動推進機プロトタイプ(試作品)を用いた実証実験を島根県松江市で行っている。松江城の堀で堀川遊覧船を運航する同市観光振興公社と連携し、実際の船に取り付けた周回運航を今夏から行い、商品化に向け改良を重ねている。

 ホンダは2050年にすべての製品と企業活動を通じてカーボンニュートラルを目指すという高い目標を掲げ、二輪や四輪のモビリティにとどまらず、水上でのカーボンニュートラルにも挑戦している。

 2021年11月に電動推進機のコンセプトモデルを発表した際、松江市が「堀川遊覧船で使えないか」と手をあげたところ、ホンダ側が反応し今回の実証実験に至った。同市も環境省の脱炭素先行地域に選定され、「カーボンニュートラル観光」を掲げることから、双方の環境への思いは一致している。

 堀川遊覧船は1週約3・7㌔を約50分かけてめぐる。国宝に指定される松江城の天守閣や武家屋敷が並ぶ町並みの風情が味わえる人気観光メニューだ。本紙主催の「プロが選ぶ水上観光船30選」では創設した2018年から6年連続でトップ10入りを果たしている。

 1997年の開業から船外機はホンダ製ガソリンエンジンを採用し、現在保有する42隻もほぼすべて同社の機種を導入している。

 実証実験で使用する電動推進機プロトタイプは、ホンダとトーハツ(日向勇美社長、東京都板橋区)が共同開発した。低騒音・低振動、二酸化炭素排出ゼロ、余裕ある動力性能などが特徴で、バッテリー交換も容易という。仮に堀川遊覧船の全船を電動化した場合、現在のCO2年間総排出量47㌧がゼロになる計算だ。

 報道陣や行政関係者を対象にした試乗会は7月下旬から始め、これまで計9回開いた。10月22日(日)、29日(日)には関係者以外に初めて門戸を広げ、松江市民を対象にした無料試乗会を開く予定だ。

 電動推進機は船体を改修せずに搭載可能だが、使い勝手をよくするために一部改修を施した。最大の特徴は静粛性だ。ガソリンエンジンでは聞こえづらかった川面の波立つ音や虫の鳴き声など、自然の音がクリアに聞こえる。船頭さんは通常、マイクとスピーカーでガイドを行うが、生声でも可能なほど。試乗会ではこれまで見られなかった乗船客と船頭さんの会話やコミュニケーションが活発に行われたという。

 バッテリーは脱着容易なモバイルパワーパックを2本搭載し、満充電の場合、2周は余裕を持って遊覧できるという。ただし、バッテリー1本の重量は約10㌔。脱着自体は容易だが、シニア層が多い船頭さんが船から陸の整備室に引き上げる作業に負荷がかからないようにするのが課題だ。

 堀川遊覧船の担当者は「ホンダさんが製品化したあと実際の運用に向け協議することは多い」としたうえで、「静粛性を生かし、貸切船として会合などで利用してもらったり、『読書船』として運航したりと、これまでにない付加価値が提供できる可能性がある」と話す。

万博キャラ「ミャクミャク」デザイン ラッピング列車運行へ JR西日本

2023年10月2日(月) 配信

ラッピング列車のイメージ

 西日本旅客鉄道(JR西日本、長谷川一明社長、大阪府大阪市)は11月30日(木)から、大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」をデザインしたラッピング列車の運行を始める。

 大阪環状線とJRゆめ咲線を走る323系の8両・1編成を装飾する。白をベースに赤と青のミャクミャクを大胆にデザインした。万博の公式ロゴマークや「2025年日本国際博覧会」の文字も入っている。

 万博の会期終了まで運行する予定だ。

スカイホップバスのデジタルチケット販売開始 JALMaaS

2023年10月2日(月) 配信

スカイホップ バス

 日本航空(JAL)はこのほど、スカイホップバスマーケティングジャパンと連携し、経路検索サービス「JAL MaaS」で「スカイホップ バス」のデジタルチケットの販売を開始した。デジタルチケットは、乗車時に2次元バーコードを乗車時にかざすだけでスムーズに利用できる。

 スカイホップ バスは、東京や京都の観光地を巡る2階建てオープントップバス。訪日外国人にも人気が高く、チケット購入はJAL MaaS英語サイトも利用できるようにした。同サイトは、誰でもウェブサービスを利用できるよう対応したウェブアクセシビリティに準拠しており、今後は中国語や韓国語などの言語対応も進めていくほか、手荷物当日配送サービスなど、周辺サービスを充実させる。

 また、さらなる利便性向上に向けてさまざまな交通サービスと連携し、ストレスフリーな移動ができる環境を整えていく。

 なお、今回の連携開始を記念し、2024年3月31日までマイルプレゼントキャンペーンを行っている。

加賀市 開業機運盛り上げ 加賀温泉駅前でイベント

2023年10月2日(月) 配信

いよいよ来年3月16日に開業する加賀温泉駅

 北陸新幹線・加賀温泉駅の開業を来年3月16日に控え、石川県加賀市は11月3日から5日までの3日間、「加賀温泉駅開業記念まつり」を開催する。

 市民参加による各種ステージイベントのほか、加賀市の特命かがやき大使を務める歌手・タレントのグッチ裕三さんらスペシャルゲストによるショーなどを行い、開業機運を盛り上げる。会場は駅前に位置する「アビオシティ加賀」駐車場特設会場と加賀温泉駅周辺となる。

 前夜祭となる3日には、午後5時から6時まで、提灯行列を実施。加賀温泉駅周辺約1㌔を、仮装した人々が提灯を持って、にぎやかにパレードする。6時30分からは同7時までは、LEDのランタンを夜空に上げるスカイランタンイベントも実施する。どちらも参加は自由。スカイランタンは、先着300人限定となる。

 4―5日は「加賀未来市」と題して、山代大田楽や山中節といった地元芸能に加えて、地元のマーチングバンドやダンススクールなどが出演する、ステージイベントを開催する。

 さらに、市内飲食店による出店やキッチンカーが登場してのグルメイベントも行う。

 期間中は、ミニ新幹線やフワフワ遊具などを備えた子供向けの遊び場も設置する。

 実施時間は、4日が午前10時から午後5時まで。5日は午前10時から午後4時までを予定している。

 このほか、11月11日には、第2弾イベントとして地元グルメを集めた「食のマルシェ」の開催も計画する。

〈旬刊旅行新聞10月1日号コラム〉――持続的なまちづくりへ 地域に「働く場」と「教育の場」が必要

2023年10月2日(月) 配信

 10月5~6日に、岡山県岡山市で「第33回北前船寄港地フォーラム」が開催される。「北前船」の歴史を紐解き、新しい時代の地域間交流・連携を探る場となるが、今回は初の試みとして、岡山市に加え、瀬戸内海に面する近隣の倉敷市、玉野市、備前市、瀬戸内市で「分散型」の分科会も実施される。

 

 さらに、EU(欧州連合)諸国の大使ら、約20人の外交官が出席して交流するなど、国内外から700人規模が参加する一大イベントとなる。

 

 1面特集では、同フォーラムに向けて開催市を代表して、大森雅夫岡山市長、実行委員会会長の松田久岡山商工会議所会頭、2年前に発足した地域連携研究所で、大森市長と共に自治体会員制度の共同会長を務める福原淳嗣大館市長(秋田県)の3氏による鼎談を掲載している。

 

 

 江戸から明治20~30年代にかけて日本の交易を担った北前船。北海道から東北、北陸、山陰、瀬戸内、関西、九州を結ぶ物流の主役であったが、明治期になると、汽船の普及や鉄道の開業、日露戦争開戦などにより、次第に北前船は衰退していった。その後も、モータリゼーション化や航空輸送など、時代に合わせて物流の手段は日々変化し、多様化している。

 

 遠く離れた地域なのに、文化や技術、舞踊や方言までも共有し、影響し合うなど、運んでいたのは荷物だけではなく、人や文化の交流にも北前船が大きな貢献をしていたことが分かる。

 

 現代においても、観光やさまざまな分野で地域間連携が求められている。東京一極集中が進み、東京を拠点にハブ化が拡大しているが、かつて北前船を通じて交流していた地域同士が再び結びつきを強めていく、古くて新しい地域間連携が「北前船寄港地フォーラム」を通じて広がっていくことを期待したい。

 

 

 第33回北前船寄港地フォーラムに先立って、9月7日にプレイベントが開かれた。これに合わせて、岡山県・矢掛町の視察ツアーも実施され、同行取材した。矢掛町の「まちごとホテル」の取り組みは耳にしており、訪れてみたいと考えていたので、とても楽しみだった。

 

 古民家を改修し、「まちごとホテル」による再生に取り組むシャンテの安達精治社長に町を案内していただいた。説明を受けながら、安達社長から溢れ出る情熱がひしひしと伝わってきた。その夜、蔵を改修したまちごとホテルの1軒に宿泊。翌日早朝から安達社長にインタビューをお願いした。岡山商工会議所の松田久会頭、観光庁観光資源課の鈴木一寛課長補佐にもご出席いただき、それぞれの立場から「持続可能なまちづくり」についてお話をいただいた。3面で詳しく紹介している。

 

 

 少子高齢化が進む地方において、安達社長は「矢掛町を50年後にも残すにはどうすればいいか」というところからスタートし、その結果として「まちごとホテル」という運営スタイルしか方法はなかったと語る。さまざまな興味深いお話の中で、とりわけ印象に残ったのは、「まちに高校があるかどうか」という部分だ。地域に雇用の場を創出することはとても重要である。だが、それ以上に、地元の高校をまちぐるみでしっかりと残していく。さらに可能であれば、大学や専門学校など高度な教育機関を誘致していくことが、これからの時代のまちづくりには最も大事なのだと考えさせられた。

(編集長・増田 剛)

 

「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(224)」 大山さんのおかげ(鳥取県・大山町、米子市ほか)

2023年10月1日(日) 配信

かつて牛馬市が開かれた博労座跡から大山方面の眺望

 遠くに旅をして故郷にもどると「あ~帰ってきたなぁ」と思う瞬間がある。それはいつもの見慣れた山や川を目にしたときであろう。山陰地方のシンボル・大山は、地域の方々にとって、そんなかけがえのない山である。だから地元の皆さんは、いつも「大山さんのおかげ」と山を敬う。

 しかし、地元の方々の想いには、もう少し歴史的な背景もある。それは大山の山頂に現れ、万物を救うという昔からの地蔵菩薩信仰である。

 日本最古の「神坐す山」と言われた大山の「地蔵信仰」は、「出雲国風土記」の国引き神話に「伯耆国なる火神岳」として登場する。その中腹にある大山寺に祀られる地蔵菩薩は、山頂の池から人々に水を恵み、現世の苦しみから万物を救うと信じられてきた。人々は、延命をもたらす「利生水」と地蔵菩薩の加護を求めて参詣した。

 地蔵菩薩は、生きとし生けるものすべてを救う仏さまであることから、牛馬に対する信仰も生んだ。平安時代、大山寺の高僧、基好上人が牛馬安全を祈願する守り札を配り、山の中腹に広がる牧野で牛馬の放牧も奨励した。

 大山山麓で育った放牧牛は、参詣者の注意をひいた。大山寺の春祭りなどに牛くらべ、馬くらべが開かれたが、やがて鎌倉時代になると、次第に牛馬の交換や売買が盛んになり、市(牛馬市)に発展していった。江戸時代中頃、大山寺境内の下にある「博労座」では大きな牛馬市が開かれるようになった。これが全国唯一の「大山牛馬市」である。

 水の恵みに延命を求める地蔵信仰の「大山信仰」「牛馬信仰」は、西日本各地に大きな信仰圏を形成した。とりわけ大山の裾野に暮らす人々は、「大山さんのおかげ」と日々感謝しつつ大山を仰ぎ見るという、大山信仰の名残が今日まで続いている。

米子市内賀茂川べりに佇む地蔵さんのひとつ

 その一端が、米子市の街中に残る地蔵信仰にも強くみられる。米子市内を貫くように流れる賀茂川沿いや寺町には、26体の地蔵さんが人々の暮らしに溶け込んでいる。今でもお地蔵さんに札を順番に貼って歩く「札打ち」の家族連れの姿をよく目にする。身内に不幸があったとき、浄土に着かれるまでお地蔵さんにお守りいただくよう、7日ごとにお地蔵さんを巡り「南無阿弥陀仏」と書かれた白札を貼る。49日目には赤札を貼って一段落という風習である。四国霊場や観音霊場の札打ちもあるが、ここでは地元庶民の信仰に根差したこの地方独特の風習である。

 こうした暮らしに根付いた大山周辺の地蔵信仰の姿が、まちを訪ねる観光客の心にも響く。これも「大山さんのおかげ」であろう。

 しかし、大山の魅力は、歴史文化だけではない。大山中腹を拠点とする大山観光局は、優れた自然・景観を生かしたアドベンチャーなど、海外誘客にも力を入れている。世界に向けた今後の展開を期待したい。

(日本観光振興協会総合研究所顧問 丁野 朗)