2025年12月6日(土)配信
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11月初旬、久々に鳥取県境港市を訪ねる機会を得た。境港と言えば、風光明媚な白砂青松の弓ヶ浜半島を連想するが、この半島は別名、夜見ケ浜とも言う。「夜見」は「黄泉」にも通じ、この半島は「死と神の通い路」といった領域を表すとも言われてきた。
境港は、その弓ヶ浜半島の北端にあり、境線の終点、「境港駅」が中心である。
漫画家・水木しげるさんの出身地であり、代表作「ゲゲゲの鬼太郎」に登場するキャラクター180体ほどの銅像が並ぶ「水木しげるロード」と、その先に古い料亭を改装した水木しげる記念館がある。米子と境港を結ぶJR境線の「鬼太郎列車」も話題である。
水木しげるロードは、コロナ前には年間300万人の観光客が訪れていた。コロナ禍の2020(令和2)年には70万人まで激減したが、水木しげる記念館がリニューアルオープンした24(令和6)年には、再び203万人まで復活した。水木しげるロードという小さな商店街に、これほどの観光客が訪ねること自体、奇跡の商店街とも言われる。
そんな境港だが課題も少なくない。
一つは、地域の滞在時間が短く宿泊客が少ないこと、エリア内の周遊が不足していること、さらにはインバウンド客への対応の遅れなどである。
滞在時間の短さは、来訪客が駅から直線800メートルほどの水木しげるロードだけに留まり回遊性がないこと、宿泊客のほとんどが松江や皆生温泉などに行ってしまうことなどが原因である。実際、夕刻の時間帯には、客の姿が疎らになるという状態も時々見られる。
本来、夜に活躍する妖怪たちである。その魅力を味わってもらおうと、日没以降、妖怪たちの影絵の投射や、妖怪ブロンズ像のライトアップなど、妖怪の気配を感じてもらうナイトタイム施策も行われているが、成果はまだまだ。駅前に大型ホテルを誘致し、まちなかの古民家再生なども徐々には進んでいる。
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境港はもともと全国有数の漁獲高を誇る漁港が有名である。地域内周遊という点では、夢みなとタワーなどの漁港エリアとの連携も大きな課題である。
国際クルーズ客船の本格的な受け入れも開始した。クルーズ客に境港を回遊してもらい、「妖怪」の魅力や漁港としての魅力をどう伝えるかもこれからの大きな課題である。
境港は、水木しげるさんの出身地として、「ゲゲゲの鬼太郎」などの漫画とそのテーマが誘客の原点である。その拠点ともなっている水木しげる記念館は、21(令和3)年に「水木しげる記念館を中核としたさかなと鬼太郎のまち境港市拠点計画」(文化庁)が認定され、新たに記念館を核とした広域観光に着手している。
拠点地域の魅力と滞在性を高めることはもとより重要である。だが、中海や日本海に面したエリア全体の魅力と回遊性を高めることも、これからの大きな課題であろう。
(観光未来プランナー 丁野 朗)




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