2026年6月6日(土) 配信

兵庫県たつの市といえば、まずは薄口醤油と揖保乃糸で知られる素麺であろうか。海に面したエリアには、播磨国風土記に「風を防ぐこと室のごとし」と称賛された室津がある。奈良時代から1300年続く港町である。
たつの市は、2005年に旧龍野市や室津のある御津町などが合併して誕生した。中心部龍野町には、武家屋敷や醤油蔵の白壁や土蔵が残り、龍野藩5万3000石の城下町の面影が残る。その龍野は、2020年5月に施行された文化観光推進法の拠点計画を申請し認定された。文化観光推進法は、博物館や美術館、社寺、城郭などの文化観光拠点の文化振興と観光振興、地域活性化の好循環を生み出すことを目的としており、今年4月現在、全国で63の計画が認定されている。
龍野の「旧カネヰ醤油工場(醸ス場かねゐ)を中核とした文化観光推進拠点計画」は、2024年度から28年度の5年間の計画として、約3億円の事業費が投入される。
計画区域は揖保川西岸エリアで、旧カネヰ醤油工場がある龍野伝統的建造物群保存地区を中心に、史跡龍野城やその周辺に残る伝統的な地場産業・商業施設、たつの市立龍野歴史文化資料館、うすくち龍野醤油資料館、醤油の郷大正ロマン館などの歴史文化資源を活用した事業である。
申請者は、株式会社ムカシミライという、まちづくり・地域経営を営む会社である。協働申請者として、たつの市、龍野みらい舎、NPO法人ひとまちあーとなどのほか、末廣醤油や地元バス会社、鉄道会社、旅行会社などが名を連ねている。
拠点となる旧カネヰ醤油工場は、1869(明治2)年に飾磨津屋(カネヰ醤油の前身)の2代目・三木彌兵衛氏が龍野藩の御用蔵であった「ゐ蔵」を継承して、醤油醸造のカネヰ醤油を創業。創業後に築造された醤油醸造の「煙突」「西蔵」とともに150年以上守られてきた、龍野のランドマークの1つである。
この醤油工場を改装し、「かもす ぎゃらりー」という展示機能を核に、観光案内拠点、食品・物販、飲食・体験・交流拠点などを整備する。ここを拠点に、生きた城下町博物館都市龍野の「暮らしと観光の共存」エリアを形成しようというものである。

計画をマネジメントするムカシミライは、城下町に数多く存在する空き家・古民家を活用し、これらのリノベーションにより賃貸・販売などを通じて、地域の付加価値を高めるという不動産手法を導入する。伴走する龍野みらい舎には、地元町内会のリーダーたちが参画し、不動産物件の譲渡・売買の信用保証を行うという役割も果たす。
こうした地域再生事業で得られる利益を再び地域の文化資源に再投資するという「循環(エコシステム)」の考え方も明確である。大きな博物館ではないが、地域のシンボル施設を活用する、地域密着型の計画に大いに期待したい。
(観光未来プランナー 丁野 朗)


