2025年2月1日(土) 配信

福岡県北九州市(武内和久市長)と、山口県下関市(前田晋太郎市長)は近年、観光や文化、経済、人的交流などさまざまな分野で「関門連携」を深めている。最狭部はわずか650㍍ほどの関門海峡に面する両市は、世界にも類まれな「海峡観光」を発展させる大きな可能性を秘めている。北九州市の武内市長と下関市の前田市長が対談し、それぞれの市が有する観光資源や、両市が強力なタッグを組むことで実現する、魅力的な関門エリアの将来ビジョンなど、熱く夢を語り合った。
【司会=本紙編集長・増田 剛】
◇
――北九州市はどのようなまちですか。
武内:九州の「テッペン」最北端に位置し、九州最大の面積を有する北九州市は多様性に溢れ、「歴史と未来」「都会と自然」など、すべてがそろっています。
なかでも最大の特徴は「大都市なのに人情に厚い」ところです。人の距離が近くて熱量が高い。飲食店では大盛にしてくれたり、一つおまけをしてくれたり、人の体温や熱量を体感できる素敵なまちだと思っています。
北九州市は角打ちやアーケード付き商店街、競輪、焼うどん、焼カレーなどさまざまな発祥の地でもあり、新しいことにチャレンジをして創り出すという懐の深さを備えています。美しい関門海峡に面する門司港レトロなど観光名所も豊富にあります。昨年1年間の人口の社会動態が60年ぶりに転入超過となり、この勢いを強く、大きくしていきたいと考えています。
――下関市の特徴は。
前田:下関市は本州最西端の「海峡と歴史のまち」で、長い日本の歴史の節目に〝劇的な舞台〟として登場します。
古くは、平安から武家社会に変わる「源平合戦」のクライマックス「壇ノ浦の戦い」で、幼い安徳天皇が関門海峡に身を投げられました。女官たちが身を潜めながら毎年供養されていた伝統が今も「先帝祭」として継承されており、歴史をとても大切にしています。
その後も、1612(慶長17)年4月13日には宮本武蔵と佐々木小次郎の「巌流島の戦い」、江戸時代・幕末には、下関戦争、倒幕・維新へ導く功山寺挙兵、明治時代には下関条約締結などドラマチックな歴史舞台として日本史を彩っています。
このほか、「死ぬまでに行きたい! 世界の絶景」3位となった角島大橋なども優れた景観を有し、海外からも数多くの観光客に訪れていただいています。
食では、全国ブランド「フグ」の取扱量日本一、「クジラ」の陸揚げ量日本一、「アンコウ」の水揚げ量日本一など、「水産のまち」として名が知られています。かつては、2隻の船で大きな網を引いて底物の魚を獲って帰ってくる、沖合底引き網漁業・水産業で栄えた歴史があります。
人口減少などの課題もありますが、近年は「観光を中心としたまちづくり」に大きく舵を切って、地域再生や活性化に取り組んでいます。民間企業や市民も呼応するように「自分たちができることをやっていこう」と参加していただいており、元気を取り戻していることを実感しています。
「観光で一目置かれるまち」に育てていくことが目標です。
――北九州市の観光の方向性は。
武内:磨けば輝く地域資源が点としてたくさんあるのですが、これらを戦略的につなぎ、線や面にして魅力を高めていくことが大事です。
例えば、日本新三大夜景都市第1位・北九州市を代表する夜景スポットである皿倉山で夜景を観たあとに、北九州市の美食を楽しんでもらうなど「モデルコースづくり」にも取り組んでいます。
また、「日本一おもしろき城」にしようと、小倉城の天守閣をユニークベニューとして活用しています。ディナーや会合などで貸し切る試みが人気で、2023年には63年ぶりに来場者25万人を突破しました。
加えて、シニア層や海外からの旅行者を中心とする富裕層、ゆとりのある層に対するターゲッティングが重要になってきます。ユネスコ無形文化遺産・戸畑祇園大山笠など魅力ある観光コンテンツを磨き、価値に見合ったプライシングをして、富裕層の方々にも届けていくチャレンジをしています。
観光客だけでなく、市内宿泊客の7割を占めるビジネス客にも、北九州市の多様な魅力を満喫してもらい、市内で「もう1カ所、もう1泊」を楽しんでいただける取り組みを推進しています。26年に外資系メジャーホテルチェーンとして、初めて市内2カ所にマリオットグループがリブランド開業しますが、これをきっかけに世界の方々を呼び込んでいきたいと思います。
――映画のロケ地としても有名ですね。
武内:過去30年間に700本以上の映画やドラマなどを撮影した映画のまち・北九州として、カンヌやベルリンなど世界の映画祭に送り出す作品も出ています。アジアの映画スターが北九州で収録をしているため、聖地巡礼の地にもなってきています。
北九州国際映画祭も24年に2回目を迎え、海外との結びつきを強めながら、エンターテインメントが着実に根付いてきています。ポップカルチャーフェスティバルも延べ約8万3千人集客しました。「エンタメ」と「仕事」の力がまちを大きく成長させます。「エンタメ」の部分を一層強力に推進していきたいと考えています。
――下関市も唐戸市場のエリアが大きく変わる計画があります。
前田:関門海峡に面した唐戸市場は、全国の行ってみたい漁港・漁場市場ランキングでは常に上位に名を連ねています。25年秋には、星野リゾートが開業を予定しており、エリア一帯の伸び代はとても大きいと思っています。
現在、関門海峡沿いのエリアを「日本一のウォーターフロント」に育てることを目標に、星野リゾートとも将来像を共有しながら滞在時間を延ばすことを目指して、コンテンツの磨き上げに取り組んでいます。
人気の水族館「海響館」も大幅なリニューアル工事を行っています。
新たな魅力あるまちづくりが同時進行で進んでおり、関門海峡での観光を存分に楽しんでいただき、その先に地元経済の発展を見据えています。
26年10―12月には「山口デスティネーションキャンペーン」が展開されるので、照準を合わせて盛り上げていきます。
――両市が連携することによって関門エリアがより魅力的になっていくと思います。構想や夢を語ってください。
武内:国内では「海峡観光」が実現できる稀有なエリアであり、世界に伍していく潜在力を有しています。「海峡観光」は、可能性に満ちた未開の分野なのです。私はトルコのボスポラス海峡に匹敵する魅力があると思います。
関門エリアは歴史の舞台を巡っていく「大人の旅の目的地」としても適しています。現在、北九州市が最も力を入れているのは、「すしの都」。関門海峡はフグやタコなど非常に素晴らしい海産物に恵まれており、両岸でしっかりとグルメエリアであることを積極的にアピールしていきます。
両市は市長会談を定期的に開いています。今年度の大きな成果としては、関門エリアで使える地域通貨「かんもんペイ」を両市初のふるさと納税共通返礼品としました。海峡を跨いでの地域通貨の共通返礼品は全国初で、関門エリアの周遊促進につながるものと大いに期待しています。
今年は門司港レトログランドオープンから30周年を迎えます。唐戸エリアのリニューアルと併せて、25年は記念すべき年でもあり、大きな弾みにして両岸の魅力を味わえるような観光ルートを創っていきたいと思っています。26年には門司港レトロ地区に新たなホテル進出も予定しており、さらなる賑わいの拠点としても期待しています。
インバウンド誘客に向けては、北九州空港―門司港・唐戸市場を船で結ぶ「フライ&クルーズの実証運航」を計画しています。また関門海峡の雄大な眺望を楽しむことができる門司港レトロの和布刈地区に、「九州最北端の記念碑」の設置も実現に向けて動いています。
下関市は毘沙ノ鼻に本州最西端の地として記念碑を有していることから、両市の関門二極踏破証明書を発行すれば、両市の回遊性を高める新たな名物の1つになるのではないでしょうか。
前田:巌流島は全国的にも名前が知られているわりには、まだまだ課題もあります。現状では水道や電気などインフラが通っていないため、イベントを企画しても、その都度大きなお金がかかってしまいます。大規模なイベントが開催できるような環境整備が必要だと強く感じています。
以前に小倉城に行ったときに、宮本武蔵と佐々木小次郎の巌流島の戦いをしっかりとアピールをされているのを見て感心しました。両市間の交流がさまざまな場面で進んでおり、市職員の交流もさらに深めていくことによって、潜在的な能力を引き出していけるのではないかと期待をしています。
関門海峡には1日700―1千隻の船が往来し、潮の流れも速く変わっていく特徴を生かした体験メニューを充実させる潜在能力を持っています。下関港と韓国・釜山港はフェリー航路もつながっており、外国人旅行者にも観光エリアの回遊ができるようなルートづくりや発信力が不可欠です。これまで眠っていた資源を掘り起こしていくなかで、その魅力を地元の人たちに気づいてもらう。そして、地元市民に誇りと自信を持ってほしいと思っています。
拡大している外国人旅行者へのキラーコンテンツには、北九州市が掲げる「すしの都」があります。そこに下関の豊かな「海の幸」を合わせて、相乗効果を高めていけば、日本を代表するグルメエリアになる。これらも、それぞれが単独でアピールするよりも、「関門エリア」として発信していくことで魅力も数倍にパワーアップし、世界中にも届けることができると信じています。
武内市長にも負けない熱量で、関門海峡を両市が盛り上げていこうと思っています。我われトップが先頭を切って頑張っていきましょう。
武内:今こうして下関市の前田市長と私ががっちりと手を握って「連携を強めていこう」と語り合っていること自体が価値のあることです。
世界で一番面白いエンタメに溢れた海峡をキーワードに、両市が強いタッグを組んでいく歴史的であり、奇跡的なタイミングにあると思っています。関門海峡発展の新時代に向かってともに前進していきましょう。
【本紙1950号または2月6日(木)以降日経テレコン21でもお読みいただけます。】