NAA 1月、春節好調で旅客数362万人 コロナ影響前の2020年に次ぐ2番目

2025年3月3日(月) 配信

田村明比古社長

 成田国際空港(NAA、田村明比古社長)2月27日(木)に発表した2025年1月の総旅客数は、前年同月比18%増の362万714人と大きく伸長した。新型コロナウイルスの影響が広がる直前の20年に次ぐ2番目。春節期間中における1日当たりの中国と台湾、香港線の出国旅客数が前年比26%増となり、19年と20年も超えたことが主な要因。

 国際線の外国人旅客数は、同16%増の215万1163人と2カ月連続で過去最高だった。19年同月比では1%増。

 国際線の総旅客数は前年同月比23%増の301万8870人。このうち、日本人旅客数は同16%増の32万7073人。19年同月比では64%減。

 また、春節期間中における1日当たりの中国線の出国旅客数は前年比56%増と大幅に伸びた。

 国際線旅客便の発着回数は14%増の1万4425回だった。

 国内線旅客数は前年同月比4%減の60万1844人。19年同月比1%増となった。発着回数は同12%減。田村社長は「国内線はLCC各社が機材や人員繰りで減便しており、搭乗率が高くなった」と説明した。

中国前年比59%増 上海での乗継需要増

 2月1(土)~22日(土)の国際線出国旅客数は前年同期比21%増の106万2000人。19年同期比では同5%増となった。このうち、中国線は同59%増の18万3700人。19年同期比では45%増。韓国線は前年同期比8%の19万400人。19年同期比では52%増だった。

 田村社長は「春節後、中国・上海を経由し、欧州や東南アジアを訪れる旅客が増えている」と中国路線における需要増加の要因を説明した。3月以降については、「桜のシーズンやイースター休暇で、北米からの予約が好調に推移している」と述べた。一方、アウトバウンドは「卒業旅行需要で東南アジアへの予約数が伸びている」と話した。

兵庫県養父市・朝来市の日本遺産「鉱石の道」モデルルートを策定 日本観光振興協会ら

2025年3月3日(月) 配信

「鉱石の道」 日本遺産体験周遊ツーリズムのトップページ

 日本観光振興協会(菰田正信会長、東京都港区)はこのほど、鉱石の道推進協議会(桑田純一郎会長、兵庫県豊岡市)、北近畿広域観光連盟(城﨑雅文会長、京都府福知山市)と協力し、兵庫県養父市・朝来市にまたがる日本遺産「鉱石の道」のストーリーをテーマ別に体感できる新たなモデルルートを策定した。テーマは、何度も訪れてもらえるように、「『錫』が鉱物から鉱石・金属となるまで」や「フランス人技師たちの面影」など、6つ設定した。

 「播但貫く、銀の馬車道 鉱石の道 ~資源大国日本の記憶をたどる73kmの轍~」は2017年に日本遺産に認定された。このうち、養父市・朝来市の「鉱石の道」は、構成文化財が広域に点在することや周遊のための2次交通不足、ストーリーを訴求できていないといった課題があった。

 そこで日観振は当地域で日本財団の助成による「観光地域づくり支援基金事業」の一部として、「日本遺産体験周遊ツーリズム事業」に取り組み、2023年12月に有識者検討会議を設立。日本遺産のストーリーに沿って効率よく文化財を周遊できる仕組みの構築や域内周遊の促進と地域活性化を目的に、当該地域の行政や観光協会、交通事業者などと2年にわたり協議を行ってきた。

 モデルルートはマイカー・レンタカーだけでなく、公共交通機関やレンタサイクルを利用するルートも用意。北近畿広域観光連盟ポータルサイト「まるごと北近畿」内に特設サイトとして「鉱石の道」を開設し、日本遺産の構成文化財やモデルルートの情報を掲載している。異なった行政区にある文化構成財が「点」ではなく、「面」となるようなストーリー訴求を意識しているという。

 また、タビナカで便利なツールとして、西日本旅客鉄道(JR西日本)が運営するアプリ「tabiwa」に「鉱石の道」モデルルートを掲載。構成文化財や観光案内所、宿泊施設、グルメなどを紹介し、紹介先の施設で受けられる特典クーポンも入手できるようにした。

日本旅行、営業利益80%減に(24年度連結) 国内旅行需要が減速

2025年3月3日(月) 配信

 日本旅行(小谷野悦光社長)がこのほど発表した2024年度(24年1~12月)連結決算によると、売上高は前年同期比7・4%減の2118億2900万円、営業利益は同80・3%減の18億6000万円、経常利益は同73・3%減の27億円、当期純利益は同73・8%減の22億円と減収減益なった。

 「中期経営計画2022―25」に基づき、発展成長期の2年目として、社会課題解決を基軸とした成長モデルの構築に取り組んだが、物価高騰などにより国内旅行は都市部を中心に需要が大きく減速した影響を受けた。

 ソリューション事業では、近年収益の柱となっていたワクチン接種関連事業が順次終了するなか、新たな受託事業の獲得に向け、国や自治体からのニーズに応えられるメニューの拡充をはかった。この結果、受託事業の売上高は同41・9%減の155億1700万円、売上総利益は同51・6%減の59億4900万円となった。

 ツーリズム事業では、全国旅行支援などの需要喚起策が終了。JR西日本などJR各社と連携し、JRセットプランを中心にウェブ販売の拡大に最大限注力した。

 単体を部門別にみると、国内旅行の売上高は同8・8%減の1350億5600万円、売上総利益は同8・1%減の248億8500万円。

 海外旅行は団体旅行や企業出張の需要が回復し、売上高は同32・7%増の186億8700万円、売上総利益は同30・7%増の32億4000万円と大きく伸びた。

 インバウンド部門の売上高は同14・8%増の232億7500万円、売上総利益は同0・6%減の51億4600万円となった。

【人事】JTB、グループ会社の役員人事(4月1日付)

2025年3月3日(月)配信

正式には各社の株主総会、取締役会などで決定

 JTBグループは4月1日付の人事異動に伴い、役員人事を発表した。正式には各社の株主総会、取締役会などで決定。詳細は次の通り。

 JTB

 取締役兼常務執行役員財務担当(CFO)グローバル統括本部長兼事業企画部長(取締役兼常務執行役員財務担当〈CFO〉兼グローバル統括本部長)武田淳

 専務執行役員ツーリズム事業本部長(執行役員サステナビリティ担当〈CSuO〉)西松千鶴子

 執行役員内部統制担当法務担当(CCO)(法務チームExecutive Director〈法務担当〉)冨樫憲正

 執行役員投資・資金戦略担当(財務企画チーム投資・資金戦略担当部長)小森雄介

 執行役員サステナビリティ担当(CSuO)(ツーリズム事業本部)玉垣知子

 執行役員グローバル統括本部事業戦略推進部長(グローバル統括本部事業戦略推進部長)金子享

 執行役員ガバナンス担当(CGO)(執行役員内部統制担当法務担当〈CCO〉)松岡徹

 執行役員ツーリズム事業本部Web戦略担当顧客戦略担当国内旅行ビジネスモデル改革担当(執行役員ツーリズム事業本部Web戦略担当国内旅行ビジネスモデル改革担当)池口篤志

 JTBグローバルマーケティング&トラベル

 取締役兼常務執行役員総合企画本部長(JTB執行役員グローバル統括本部副本部長兼事業企画部長)福田恭久

 ジェイアイ傷害火災保険

 専務執行役員内部監査担当特命事項担当(JTBグローバルアシスタンス代表取締役兼社長執行役員)大山恵一

奈良県・三郷町に「奈良おもちゃ美術館」 3月20日にグランドオープン

2025年3月3日(月) 配信

平城京をモチーフに、朱雀大路や五重塔が登場。お店やさんごっこも楽しめる

 奈良県・三郷町(木谷慎一郎町長)は3月20日(木・祝)、「奈良おもちゃ美術館」(前田英隆館長、奈良県生駒郡三郷町立野北3-12-7)をオープンする。同町が芸術と遊び創造協会監修のもと設置を進める施設で、関西では初のおもちゃ美術館となる。運営は「社会福祉法人檸檬会」(前田効多郎理事長、和歌山県紀の川市)。

 おもちゃ美術館は全国に12館ある、赤ちゃんからお年寄りまで多世代がいっしょに遊び、学べる「木育」がテーマの体験型施設。13館目となる、奈良おもちゃ美術館は2フロアで構成され、館内は吉野杉を使用している。

 2階のおもちゃ美術館エリアでは、約300種類・約5000点の国内外の木のおもちゃを用意。さまざまな遊びの空間を「通り」で分け、奈良の町並みや文化を表現した「おもちゃの平城京」や、木のたまご約2万個を使って大和川をイメージしたボールプールなど、奈良県の文化的特徴や歴史的な魅力が楽しめるようにした。

 また、無料で入場できる1階はライブラリーカフェ「MOKUMOKU Cafe 本のある山のカフェ」を併設し、奈良のコーヒーブランド「ロクメイコーヒー」監修の飲食を楽しみながら、1000冊以上の本が閲覧できる。

 3月20日にはグランドオープンイベントを実施する。美術館がある「FSS35キャンパス」にちなみ、約3万5000個のドミノを倒すイベントをFSS35キャンパス体育館内で開催する。時間は午前11:30から。キャンパスの2号館前では、午後1時と3時にシャボン玉ショーイベントを行う。

 有料エリアは大人(中学生以上)が1300円(町民は800円)、子供(6カ月~小学生)が1000円(同600円)。公式サイトでは3月の入館チケットの販売を開始した。なお、3月19日までの指定日はプレオープン期間として、町民は無料で体験できる。利用には、公式サイトの専用フォームからの予約が必要。

楽天トラベルアワード2024 総合1位はホテル近鉄ユニバーサル・シティ

2025年3月3日(月) 配信

受賞した宿泊施設の代表者など

 楽天トラベルはこのほど、国内の登録宿泊施設を表彰する「楽天トラベルアワード2024」を発表した。「Hotel & Ryokan of the Year」の全国総合1位に、ホテル近鉄ユニバーサル・シティ(大阪府大阪市)が選ばれた。

 楽天トラベルアワードは、全国の楽天トラベル登録宿泊施設を対象に、過去1年間で顕著な実績を上げ、高い評価を得た施設を表彰する制度。今回は、ゴールドアワード110施設、シルバーアワード110施設、ブロンズアワード592施設が選出された。さらに、ゴールドアワ―ド受賞施設の中でとくに高い評価を得た10施設へ、「Hotel & Ryokan of the Year」を贈った。

 また、リゾートホテルや旅館などのレジャーカテゴリに含まれる宿を対象にした「日本の宿アワード」では188施設を選び、各都道府県1位の「日本の宿アワードTOP47」で47施設を表彰した。

「Hotel & Ryokan of the Year」受賞施設

▽1位・ホテル近鉄ユニバーサル・シティ

▽2位・グランドニッコー東京ベイ 舞浜(千葉県浦安市)

▽3位・富士山の見える温泉旅館 大池ホテル(山梨県・富士河口湖温泉)

▽4位・ホテルエミオン東京ベイ(千葉県浦安市)

▽5位・ホテル瑞鳳(宮城県・秋保温泉)

▽6位・ホテル川六 エルステージ高松(香川県高松市)

▽7位・三井ガーデンホテル プラナ東京ベイ(千葉県浦安市)

▽8位・リーベルホテル大阪(大阪府大阪市)

▽9位・ホテルエピナール那須(栃木県・那須温泉)

▽10位・カフーリゾートフチャク コンド・ホテル(沖縄県・恩納村)

「ZOOM JAPON(ズーム・ジャポン)(2月号)」

2025年3月3日(月) 配信

https://zoomjapon.info

特集&主な内容

 本誌2月号では、自然をテーマとした記事を集めました。自然の脅威であった能登半島地震から1年、昨年お話を伺った方々と再会しました。奥能登の米の産地として知られる当目や、1年経ってもまだ地震の痕跡が残る輪島の現状をリポートしています。そして、自然の素晴らしさという点からは、自然と密接につながっている漫画を紹介しました。まずは、日本の次に日本の漫画がよく読まれているフランスでもまだ余り知られていない「釣り漫画」に焦点を当てました。ジブリ作品についても、そのスピリチュアルで日本的な自然観を解説しています。そして、これも日本以外ではまだ余り知られていない“仮面ライダー”の生みの親、石ノ森章太郎の自然観も紹介しています。旅行ページでは、埼玉県のトトロの森を紹介しています。

〈フランスの様子〉ルーヴル美術館の改修計画

エマニュエル・マクロン大統領が新たにグラン・ルーヴルを始動(1月29日付Le-Figaro紙)

 マクロン大統領は1月28日、ルーヴル美術館の大改修を発表した。◆コロナ禍以降の世界的なオーバーツーリズムの前から、ルーヴル美術館入口は長蛇の列で、モナリザがある場所も常に混雑していた。◆現在のメインエントランスであるガラスのピラミッドは、30年以上前、ミッテラン大統領の時に建築されたが、当時の想定は年間400万人の入場者だったが、現在は900万人、さらにこのままでは1200万人を超えるという想定もある。◆大改修のポイントは2つ。完全にモナリザだけの展示スペースを新設し、モナリザだけを見るための入場券も作る。そして美術館の東側にも新しい入口を作ること。◆これらは、大量の入場者による建物の劣化や美術品の保存状態を改善するために、ルーヴル美術館が国に求めていたことだ。◆今回の改修では、新しい入口とモナリザの展示案を公募し、年内に決定、2031年に完成する流れだ。◆パリ市もこの機会に、観光客だけではなく、パリ市民のために美術館周辺の歩道や緑地を拡大することも考えているという。

ズーム・ジャポン日本窓口 
樫尾 岳-氏

フランスの日本専門情報誌「ZOOM JAPON」への問い合わせ=電話:03(3834)2718〈旅行新聞 編集部〉

〈観光最前線〉大阪で出張輪島朝市

2025年3月2日(日) 配信

当日は輪島の特産品が勢ぞろい

 大阪・船場の複合施設「船場センタービル」で3月29日、能登半島復興支援を目的とした「出張輪島朝市」が開かれる。同ビルを運営する大阪市開発公社が、1200年以上の歴史を持つ輪島朝市の灯火を絶やしてはいけないと、大阪市の後援、新日本海商事の協力を得て実施するもの。

 当日は、輪島塗の漆器や干物、海産物など、輪島の特産品を扱う各店舗がブースを出店。大阪市による大阪・関西万博PRブースや新日本海商事による北海道物産品販売、防災パネル展も行う。このほか、今年で55周年を迎える船場センタービルのイベント「春のせんびるまつり2025」も同時開催する。

 出張輪島朝市の会場は、船場センタービル2号館1階。時間は午前10時から午後5時まで。お近くの方は、ぜひ。

【塩野 俊誉】

【特集 No.666】加賀屋グループ 26年度冬に「新旅館」開業目指す

2025年3月1日(土) 配信

 「加賀屋グループ」(石川県七尾市)は、旅行新聞新社が取材活動などを通じて見聞きした観光業界の取り組みのなかから、創意工夫の見られるものを独自に選び表彰する「日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー2024」(2024年12月1日号発表)のグランプリを受賞した。24年1月1日に発生した能登半島地震に被災し、和倉温泉にある4ブランドの旅館は休業中だが、26年度冬の新館開業に向けて前進を始めている。グループ全体の「リブランディング」を目指す加賀屋の渡辺崇嗣社長に将来ビジョンなどを聞いた。

【本紙編集長・増田 剛】

和倉を拠点に「大改革」へ 宿のリブランディングに着手

 ――能登半島地震により本業の旅館業が休業するなか、昨年(2024年)1年間はどのような事業の方向性を打ち出されましたか。

 誰も予想ができなかった1月1日の大地震に、スタッフは宿泊客の対応に全力を尽くしました。地域の方々やマスメディア、SNSもスタッフの頑張りを認めていただき、それが私たちへの「応援のメッセージ」として大変励みになりました。
 お客様のお見送りが無事に終わったあと、早い段階で建物の被害状況の確認を建設会社にお願いをしました。
 しかしながら、和倉温泉にある加賀屋グループ4ブランド7棟をしっかり診断するには、掘り起こしの作業なども必要で、想定よりも多くの時間がかかりました。出てきた診断結果も大半がグレーゾーンで、判断が難しい状態でした。
 加賀屋本店については、雪月花、渚亭、客殿、本陣の4棟うち、築年数が比較的浅い雪月花、渚亭を軸にどのように立て直すか、議論をスタートしました。
 既存の建物を残した場合の改修費用と、新館建設に掛かる費用の比較など、夏以降は両睨みで検討を続けました。さらに建設関係の人件費や資材の高騰などの影響もあって工期と費用の見積もりにも時間を要しました。

 ――従業員の雇用維持などは。

 被災により自宅での生活ができない従業員も多く、また、さまざまな申請手続きなどもあり、まずは各家庭の対応に専念してもらいました。
 少し落ち着いた従業員から「旅館の片付けなど協力します」と出社してくれましたが、館内は立ち入り禁止状態だったため、作業を進めることが難しい状況でした。調理スタッフは避難所で率先して炊き出しを行うなど、少しでも地域に貢献できることに専念しました。
 従業員は最初の数カ月は自宅待機してもらい、それから出向というかたちで対応しました。
 1年間延長となった雇用調整助成金をベースとしながら、当社グループ内の宿泊施設「金沢茶屋」や、全国8カ所に出店しているレストランも含め、約1100人の従業員のうち、現在約160人が出向しています。
 ありがたいことに全国の宿泊施設や、食品会社、スーパー、物販事業者など約40社からも当社スタッフの出向受け入れのお声掛けをいただきました。
 一方、当社グループのレストランなどは人手不足により、これまで機会損失を発生させていた店舗もありましたが、従業員を手厚く配置することが可能になりました。
 先日、慣れない地で仕事や生活をしているスタッフの激励に行きました。新しい仕事に挑戦しているスタッフの目は輝き、「今得ている経験やノウハウをいずれ和倉に持ち帰ってチャレンジしたい」と話す言葉がとてもうれしかったですね。
 他社で学んできたかけがえのない経験を、しっかりと発揮できる環境をつくることが経営者の役目だと、改めて認識しました。

 ――昨年末に新旅館開業の発表がありました。

 雪月花、渚亭を改修する案が困難だと判断した段階で新旅館建設へ思い切って舵を切りました。
 震災から1年近くが経ち、社員も不安になりますから、「年内には方向性を示したい」という想いがありました。開業は26年度冬(27年3月まで)を目指しています。
 「あえの風」「虹と海」「松乃碧」については、……

〈旅行新聞3月1日号コラム〉――お土産 大切な人への「思いやり」の心の表れ

2025年3月1日(土) 配信

 日本交通公社が発行した「旅行年報2024」によると、23年の日本人の旅行平均回数は、「国内宿泊旅行」全体では1人当たり2・26回とのこと。この中には、観光・レクリエーションや、帰省・知人訪問、出張・業務も含まれている。これを見ると私は職業上、旅行回数は平均値を大幅に上回っている。

 旅行回数が増えると、旅行に対する姿勢が多少なりとも日常に近づいていく。「旅慣れている」といえば熟練度が高まったように聞こえるが、「感動の度合いが平板化している」と表現し直すと、寂しく感じる。  

 旅先ではあまりお土産を買わない性質だ。「荷物を増やしたくない」というのが、わりと大きな理由であるが「感動の度合いが平板化している」からなのだろうと思う。旅先で土産物店に入って、あちこち見回すのだが、今一つ熱くなれない。

 先日北九州に行った息子が、明太子や筑紫もち、小倉銘菓「ぎおん太鼓」など、山のようにお土産を買って帰ってきた。北九州には私の実家があり、明太子やぎおん太鼓は慣れ親しんでいるのだが、お土産として手に取ると、やはり美味しい。「荷物も増えて重たかっただろうに、よくこれだけのお土産を買って来たなぁ」と感心した。

 先週は小田原に日帰り旅行をした。「鈴廣かまぼこの里」でかまぼこを買うのが目的の一つだったので、箱根ビール3本セットや、わさび漬けなども買って、家でお酒と一緒にかまぼこを楽しんだ。

 鈴廣で目にしたのが、買い物カゴが山になるほど商品を詰め込む観光客の姿だった。男性よりも女性の方が断然勢いがあった。彼女たちが1年間にどれくらい旅行をしているのか知る由もないのだが、その熱量に圧倒され、清々しい心地よさを感じた。私は他人の豪快な買い物に感動する人間なのだ。

 人はそれぞれ価値観が違う。だから他人と自分の欲しいものは一致しない。「そんなものにそれほどお金を使う?」という場面に出会うたびに、無上な面白さを感じる。

 旅先の飲食店でも、あまり思い切った料理メニューを選ぶことができない。

 新鮮な魚介類の産地であったとしても、「旅先だから豪勢にいこう!」という勢いが足りない。最近は観光地の飲食店も高い。それも意を介さぬように、隣の席でハレの「特上」御膳などを豪快に楽しんでいる観光客を横目に、「並」か「上」の寿司で満足してしまう。「せっかく旅をしているのだから……」と奮発して「特上」を注文する熱量が不足しているのだ。

 「自分は旅に一体何を求めているのだろう」と思うことがある。安宿に泊まり、美味しいものにもそれほど興味を示さず、土産物店も素通りしてしまう。通りすがりの観光客が山ほどお土産を買い込んでいる姿を見ると、身を乗り出すほど感動してしまう、つまらぬ旅の者。

 旅先で自分のために食べる料理メニューなど、この際どうでもいい。しかし、ようやくこの歳になって分かったのは、お土産は大切な人への思いやりの心の表れだということだ。そういえば小学校の修学旅行では、私も純粋な気持ちで家族へのお土産を選んだ。この気持ちは旅への純真さにもつながっている。そうすると、山ほどお土産を買って帰る人が、妙に輝いて見えてくる。心を入れ替えようと思う。

(編集長・増田 剛)