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「街のデッサン(238)」文化観光の地域創発力 光マトリックスに見る佐渡の豊かさ

2021年2月11日(木) 配信

佐渡の観光カテゴリー分類モデル

 昨年11月、新潟県・佐渡で「文化観光フォーラム」と銘打ったシンポジウムが開かれた。5月に「文化観光推進法」が施行され、地域における文化財をどう保存し生かしていくのかという課題や、各自治体が所有している博物館などの文化施設が半ば埋もれているような状況も多々見受けられた。それらの施設活用も視野に入れて、全国的な議論を高めなければならない時期に来ている。

 2015年創設の「日本遺産」認定事業なども、地域固有の「文化遺産」をコアにしているから、「地域文化力」の発見と育成は新たな観光事業の重要な基盤になっていくだろう。そして何よりも文化力を大切にしなければならないのは、科学技術を主軸にした近代社会の発展が経済格差や人間疎外の要因になったりして、それらを恢復させる力が文化に求められるということではないだろうか。

 このフォーラムは本来、「余暇ツーリズム学会」の地域ストーリー研究会が主催するものであった。しかし、研究会長の丁野朗先生が観光庁の後援や、新潟県と佐渡市の協力を得て、これから展開していくであろう「文化観光」の先鞭をつけるかたちで、学会の枠を超える企画を実現させたものであった。そのため佐渡は、フォーラムの主題となった「文化創造」の格好の舞台でもあった。

 私自身は、このフォーラムが3度目の佐渡訪問となる。若かりしころ、旅好きの友人と気ままに訪れ、数年前には新潟市での講演のついでに海を跨いで島を巡るバスツアーに参加して楽しんだ。頭の中には、世阿弥の「風姿花伝」と、歴史家・松本健一の「孤島コンミューン論」の北一輝の残像があった。1日で巡るバスツアーであったから、幾つかの能舞台に案内されたが、世阿弥にも北一輝にも出会えず、金鉱山やその周辺に密着している街々の記憶が残った。しかし、孤島であるはずの佐渡の持つ芸術風土性や、島に襞のように残された人間像の刻印、大陸との交流の残滓など、自然環境資源以外にもどこか隠されている「文化資源」の豊潤さに気付かされていた。

 フォーラムでは、基調講演を任された。与えられた主題は「佐渡における文化観光の可能性」であったから、どんぴしゃりとはいえ佐渡のこれまでの文化観光資本をどう捉えるかが肝になろう。そこで創り上げたのが、島の文化資本のマトリックスであった。これは地域観光資源のカテゴリー発見と、価値関係性のダイアグラムとなるもの。このマトリックスを見ると佐渡の文化資本がいかに固有で潤沢か一目瞭然となろう。

コラムニスト紹介

望月 照彦 氏

エッセイスト 望月 照彦 氏

若き時代、童話創作とコピーライターで糊口を凌ぎ、ベンチャー企業を複数起業した。その数奇な経験を評価され、先達・中村秀一郎先生に多摩大学教授に推薦される。現在、鎌倉極楽寺に、人類の未来を俯瞰する『構想博物館』を創設し運営する。人間と社会を見据える旅を重ね『旅と構想』など複数著す。

 

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