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「観光人文学への遡航(7)」 カント「永遠平和のために」①

2021年1月23日(土) 配信

 
 「純粋理性批判」などの批判哲学を展開したカントは、戦争状態が起こらないようにするための具体的な計画を記している。1795年に出版された「永遠平和のために」がそれである。

 
 本書が執筆された18世紀の終盤とは、まさにフランス革命の衝撃が欧州に広がった時期である。カントの祖国プロイセンは、フランス革命への干渉を目的にフランスに戦争を仕掛けたが、フランス市民の決死の抵抗に遭い、戦争を終結し、バーゼルの和約という講和条約を締結した。欧州諸国はこのような欧州内の戦争だけでなく、その強大な武力を背景に植民地を世界に展開していた。

 
 このような争いの絶えない時期に、カントは永遠平和について考究した。

 
 カントは、本書を2章に分け、第1章では、永遠平和を確立するための予備条項を記し、第2章では、永遠平和を確立するための確定条項を記した。

 
 この手の論考は読んでない人からすると、一見地球市民的な理想論のたぐいに過ぎないのではないかと思われるだろうが、カントは冷静なリアリストとして理想と現実のバランスが取れた平和論を展開している。

 
 これまでの連載でも強調してきた通り、カントは実践哲学において、人間の唯一根源的な権利としての自由を尊重してきたが、本書においても、それぞれの国家が人間と同じ概念としての自由を持つとの立場で論旨が展開されている。第2予備条項において、「独立しているいかなる国家も、 継承、交換、買収、または贈与によって、ほかの国家がこれを取得できるということがあってはならない」としている。すなわち、小国が大国に飲み込まれることを強烈に批判している。

 
 世界連邦、または世界共和国もそれの延長線上として捉えられていて、世界統一国家となった場合には、弱小国の論理は蔑ろにされるのが常であり、常に強大国にとって都合がいい状態が形成されてしまうことの危険性を喝破している。そのうえでカントは、第2確定条項において、諸国家の連合とそれに基づく国際法の必要性を説いている。

 
 さらに、第3確定条項において「世界市民権」が提案されている。ここで興味深いのは、カントが示す世界市民権とは、「外国人が他国に足を踏み入れても、それだけの理由でその国の人間から敵意をもって扱われることはないという権利」すなわち「訪問権」のみであるという点である。

 
 世界市民の権利といったら、もっと多様な人権をイメージしそうなものであるのに、カントは、単に訪問権のみに限定したのは、大きな理由が隠されている。次回以降、カントが何を思って世界市民権を訪問権のみにしたのかを明らかにするが、まさにその考究こそが、ほかでもなく観光が真の意味で平和へのパスポートとなりうる最大のヒントになるのである。

 

コラムニスト紹介 

島川 崇 氏

神奈川大学国際日本学部・教授 島川 崇 氏

1970年愛媛県松山市生まれ。国際基督教大学卒。日本航空株式会社、財団法人松下政経塾、ロンドンメトロポリタン大学院MBA(Tourism & Hospitality)修了。韓国観光公社ソウル本社日本部客員研究員、株式会社日本総合研究所、東北福祉大学総合マネジメント学部、東洋大学国際観光学部国際観光学科長・教授を経て、神奈川大学国際日本学部教授。日本国際観光学会会長。教員の傍ら、PHP総合研究所リサーチフェロー、藤沢市観光アドバイザー等を歴任。東京工業大学大学院情報理工学研究科博士後期課程満期退学。

 

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